この本の主人公、佐々井秀嶺さんは、現在74歳。
インド仏教界のリーダーになるような人なんだから
よっぽど有名なお寺に生まれたのかと思いきや、
お寺どころか一般家庭の生まれ。
じゃあ、とってもよくできる子だったのかと思いきや、
自分のことを「女好き」と称し、
「初体験は小学生のとき」だとか
「小6のときに先生と関係を持とうとした」とかいう
なんとも豪快な人です。
そんな人がなぜお坊さんになったのかというと、
若くして始めた商売が頓挫し、
うちひしがれて国内を放浪して、
行き倒れ寸前になったところを
お寺に拾われたことがきっかけ。
そんな人が七転八倒しながらインド仏教界のリーダーに
なっていく過程もとってもおもしろいんですが、
読んでいて目からうろこだったのは
インドのカースト制と宗教の関係です。
ブッダが生まれた国であるはずなのに
インドにいる多くの人々はヒンドゥー教徒。
そのヒンドゥー教の思想に支えられて存在する
きびしい身分制度「カースト制」は有名ですが、
じつはこのカーストに入ることすら許されない
「不可触民」と呼ばれる家畜以下の身分があったんです。
その人たちを解放しようと活動していた
アンベードカルという人がヒンドゥー教を棄て、
仏教に改宗したことにより、
不可触民の人たちの間に急速に仏教が広まっていく。
そこにちょうど日本から佐々井秀嶺さんがやってきて
無償でお経を唱えたり、葬儀の手伝いをするうちに
だんだんと人々に信頼され、
アンベードカルの後継者として
インド仏教復興の、そして不可触民解放のリーダーに
なっていく。
文化の違いにぶつかりつつも
一人の日本人と何千万人ものインドの人々が
共感しあっていく様子はすごいです。 |