イトイの読んだ本、買った本。
 
イトイの読んだ本
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』
著者:加藤陽子
発行:朝日出版社
価格:¥ 1,785(税込)
ISBN-13:978-4255004853


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イトイはこう言っている。
インターネット書店の、ベストセラーのところで、
ひょいっと上位に入っていた本です。
こういうタイトルと内容で、
ヒットチャートに入るということは、
なにかあったんでしょうかねぇ、とか思いながら、
ぼくも買うことにしました。
読みやすそうで、読みはじめさえすればいいんですが。
 
乗組員が読んでみた。
「普通のよき日本人が、世界最高の頭脳たちが、
 『もう戦争しかない』と思ったのはなぜか? 
 高校生に語る---日本近現代史の最前線。」

というのが、この本の帯のコピーです。
タイトルとこの帯を見たときに
「ヘビーそうだなあ」と、
正直、腰がひけました。
ところが、序章を読み終えるころには、
「はちゃめちゃ、おもしろい!」と、
興奮さえしたのです。

この本は東大の大学院で
日本近代史を教えている教授が、
日清戦争から太平洋戦争までの歴史を、
中高生向けに特別授業したときのようすを
まとめたものです。

授業そのままの話し言葉なので、
読みやすく、わかりやすくもありますが、
興奮するほどおもしろかったところは、
別にありました。

この本では、
そのとき、その人の立場にあったら、
あなたはどう考えるか?
どう行動するか?
このことを、つねに問われます。

作戦立案者だったら?
貧しい村の村長だったら?
家族をかかえた村民だったら?
戦没者の遺族だったら?
兵隊だったら?
首相だったら?

その当時に暮らす、ある人の立場にたつと、
正しいこと、よいことと信じながら、
戦争賛成側につきそうになる自分がいて、
心底、ぎくっとします。
この本は「ぎくっ」の連続です。
ひやひや、ハラハラ、ドキドキです。
これを体験できたことは、
自分にとってだいじだな、と思いました。

さらにおもしろかったのは、
時代を先読みする力がつく思考法を
教えてくれる本だな、と思ったことです。
よく「歴史から学べ」といいますが、
それって、「同じ失敗をするな」
という意味だと思っていました。
でも実は、史実を素材にして、
先読みする力(未来をつくる力)を
つけるトレーニングをしろ、
ということだったんですねえ。

先が見えない状態に陥ったときに、
いろいろな人の立場で
いくつかシミュレーションをして、
なにが起きるか、
どんな状態になるかを予測していく‥‥
この頭の使い方は、ふだんやってないので、
たのしかったですし、
仕事やふだんの生活にも役立つと思いました。

歴史好きの人はもちろん、
将来を見通してみたいなあと思う人の
頭の使い方トレーニング本としてもおすすめです。

2009-12-05-SAT

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