『さよなら群青』は、無人島で父と暮らしてきた、
16歳の少年グンが主人公。
「人の世に触れるがよい。
お前がこれから向かう世界はな、
人間でできている――」
という父の遺言にしたがって、近くの島にたどり着き、
多くの島民に出会うところから物語がはじまります。
父以外の人に会うのも、
その人たちの言葉を聞くのも、車を見るのも、
なにもかもはじめてのグンは、好奇心いっぱい。
まっさらな気持ちで世界を受けとめます。
グンが新しい発見をするたびに「おー!」と思い、
子どものころ、なにかを見て
「わあっ!」と思った気持ちや、
ふとんのなかで寝付けなかったときのことを
思い出しながら読みました。
さそうあきらさんの作品は、生きることや死ぬこと、
人のすごさやひどさ、しょうもなさ、いとおしさを、
静かに描いたものが多く、
読んだときにわき出た感情が、ずっと後をひいたり、
忘れたころにひょっこり出てくることが多いです。
お気に入りのおすすめの作品は、
小学5年生の女の子が幼なじみの男の子と、
好奇心から「くっつけっこ」遊びをしてるうちに、
子どもができちゃって、
友だちも大人も巻き込んだ大事件に発展していく
『コドモのコドモ』と、
家族や好きな人に先立たれた人々の
手のほどこしようのない気持ちと、
なまなましい生き死にを描いた短編集『富士山』です。
いずれも、さそうあきらさんの世界に巻き込まれ、
「ひゃー!」と思いながら味わったのですが、
『さよなら群青』は、いままでの作品の中でも、
純度が高いのではなかろうか、と
この先をたのしみにしています。
読書して主人公グンのまなざしになった後、
自分の身のまわりをながめると、
くもった窓をきれいに掃除した後のように
クリアに見えました。
この本は連載が終了してから全巻いっき読みするよりも、
新刊が出るたびに、1冊ずつ味わって、
そのたびに、グンのまなざしを思い出すのが
よいなあと思ってます。 |