イトイの読んだ本、買った本。
 
イトイの読んだ本
『売り方は類人猿が知っている』
著者:ルディー 和子
発行:日本経済新聞出版社(日経プレミアシリーズ新書)
価格:¥ 893(税込)
ISBN-13:978-4532260651

Amazonで購入する
 
イトイはこう言っている。山っ気のある本がいっぱいある、経営の分野の本の中で最近、とても本気になって読めた1冊です。
人間の根幹のところは、
人類の発生以来、そんなに変わっちゃいない。
そういう視点は、ぼくもずっと持っていました。
これは、実はわりと少数意見なのです。
逆にいうと、人間の行動は、
ちょっとした環境や時代の変化でどんどん変わる、
ということを言いたい人が、とても多いのです。
かつて吉本隆明さんは、
「そんなに変化してない証拠として、
 人間の基本的なかたちが変わってないでしょう」
ということを言っていました。
これは、かなりの説得力があると、
ぼくなんかは思うのですが、
反対の立場の人には、
あまり受け入れられないみたいです。

で、この「類人猿が知っている」は、
もう、タイトル一発で、買おう読もうと思いました。
もともとマーケティング研究の人らしいですが、
ルディー和子さんという方、文章の思い切りもよくて、
読んでてたのしいんです。
書いてある内容は、それこそ文字通り、
タイトルのまんまなのですが、
最新の脳科学の知識などをかなり練り込んでいますので、
「なるほど」と思わせる力は、かなり強いはずです。
でもね、こういう「おもしろい」と
言わせるような「ビジネス書」って、
「おもしろい分だけ、信用されにくい」
というところもあって、たぶん、
もっとつまらなく書かないと
受け入れられにくいのかもしれません。
ぼくにとっては、ベストセラーに見えるようなこの本が、
あまり評判になってないのは、残念無念です。

この機会に「ルディー和子」さんの他の本や、
ブログなども読み出したのですが、
ちょっと剣豪のような切れのよさがあって、
とても魅力的です。
 
単なる「音楽を聴く道具」にとどまらないヘッドホンの世界
「マーケティングの本」というと
すこしむずかしそうな気がしますが、
この本は生物学的な視点から、
人間も動物のひとつで、
進化したとはいっても、本能(脳)の部分では
類人猿だったころとほとんどおんなじなんだと
言いきってくれます。
「わからないことはご先祖さまに聞いてみる。」
このシンプルな切り口が
わたしには、とってもわかりやすくて
おもしろかったです。

とりあげられているのは
思わず気になるトピックスばかり。
不安なホモサピエンスはモノを買わない、
人間もサルも「得る」より「失う」を重く考える、
金持ち父さんは貧乏父さんがとても気になる、
などなど、ほかにもたくさんありますが、
新発見ができるというよりは、
なるほどなぁって納得できる感じでたのしめました。

人間も類人猿だったときと、
そんなに変わっていないなんて、
正直びっくりしましたが、
逆にそうなんだって分かったら、
あんまりむずかしく考えすぎることがなくて、
なんか楽になりました。
わからないことは、根っこのところから考えると、
すっきりした答えがみつかるのかもしれませんね。

ひとつひとつのトピックスが、
わりと短めにまとめられているので
ちょっとした空き時間で、気軽に読めますよ。
2010-04-03-SAT
ほぼ日ホームへ