Jホラー初期の傑作、みたいなのある?

こんにちは。オリタです。
この夏限定のこの連載も、そろそろ終盤です。
今日も、ぼくが観たJホラーの中から
おすすめの作品をご紹介いたしますね。

さて、今回のテーマは、いわば、
「Jホラーのクラシック」です。

この連載の第1回に取り上げた
『リング』(1998)は
Jホラーブーム最初のピークを
代表する作品になりましたが、
それより前に『リング』へと続く、
Jホラーのスタイルを確立させる
役割を果たしてきた作品の存在がありました。
今回はそういった、
1990年代に同時多発的に制作された
Jホラー黎明期の作品をご紹介いたします。



『霊がうごめく家』(1991年)
「ほんとにあった怖い話〜第二夜」より
「ほんとにあった怖い話 完全版」に収録

監督:鶴田法男
脚本:小中千昭
原作:「ほんとにあった怖い話」
メディア:DVD
販売元:ジェネオン エンタテインメント
現在もフジテレビ系列で不定期にテレビ放映されている、
オムニバスホラー「ほん怖」シリーズの最初期作品です。
最初の3タイトルはオリジナルビデオで制作され、
全話、鶴田監督+小中脚本コンビが手がけています。
オムニバスということで、それぞれバラエティに富んだ
演出スタイルが実践されているのですが、
この作品では、普通の日本家屋における怪異が
派手なショッカーに頼ることなく、
ドキュメントタッチでリアルに描かれています。
この「何かよくないことが起きている」演出は
のちのJホラー作品に大きな影響を与えています。
怖さ :★★★★☆
古典:★★★★★



『夏の体育館』(1991年)
「ほんとにあった怖い話〜第二夜」より
「ほんとにあった怖い話 完全版」に収録
監督:鶴田法男
脚本:小中千昭
原作:「ほんとにあった怖い話」
メディア:DVD
販売元:ジェネオン エンタテインメント
先の『霊がうごめく家』と同じタイトルに
おさめられた作品ですが、
ここでは長い髪で顔を半分隠し、
ゆらゆらと不自然な体勢で
近づいてくる幽霊を登場させ、
Jホラー的幽霊の造形と動きを
早くも確立しています。
怖さ:★★★★☆
幽霊:★★★★☆



『幽霊の棲む旅館』(1992年)
「本当にあった怖い話 呪死霊」より
監督:中田秀夫
脚本:高橋洋
メディア:VHS
販売元:日活
まぎらわしいタイトルですが、
こちらはテレビ朝日系列で放映されていた
「ホラー版・世にも奇妙な物語」的な
オムニバスTVドラマ「本当にあった怖い話」
(「ほんと」ではなく「本当」)から
中田秀夫演出作品を3話コンパイルした
パッケージ(未DVD化)におさめられています。
のちに『女優霊』『リング』を手がけることになる
中田+高橋コンビによる初作品で
人間ドラマの描き方、幽霊の出現方法に
原点を見ることが出来ます。
怖さ:★★★★☆
原点:★★★★☆



『心霊ビデオ』(1996年)
「悪霊怪談 呪われた美女たち」より
監督:鶴田法男
脚本:小中千昭
メディア:DVD
販売元:ジェネオン エンタテインメント
当初は90年代に活躍したアイドルグループ出演の
5巻組ビデオとして発売され
(原題は『GiriGiri GIRLS in 超・恐怖体験』)、
のちに改題、1パッケージにまとめられた
オムニバスホラーの中の1話です。
映像制作会社の編集室で、
編集中のビデオ素材に写り込んだ人影が
見返すたびに大きくなり、ついにはモニタを抜け出し
こちらにあらわれてしまうという、
『リング』の貞子出現シーンのヒントになったと思しき、
エポックメイキングな作品です。
怖さ :★★★★☆
ビデオ:★★★★☆



Jホラーの定義
Jホラーという呼称は
日本製のホラー映画=ジャパニーズ・ホラーを
単に略したもので、
オフィシャルな定義はありませんが、
この連載では、
前々回ご紹介した『邪願霊』(1988)と
今回ご紹介した『ほんとにあった怖い話』(1991)の
2作品を起点とした実話テイストの
心霊現象や恐怖を描いた作品を対象としています。

『呪怨』シリーズのヒット以降
Jホラーは定着し、ブームは落ち着きつつあるのですが、
オリジネイターである監督、脚本家たちは
いまも個性的な制作を続け、
またオリジナルビデオ・ホラーの作り手や
映画専門学校からの新しい才能が長編作品に進出し、
Jホラーの新たな流れが作られようとしています。

イラスト:藤本和也
2007-08-24-FRI





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