変なJホラーって、ある?

こんにちは。オリタです。
この短期連載も、いよいよ終盤です。
今日もいくつかのJホラーを紹介しますね。

さて、テーマは「変なJホラー」ですね。
ありますよ。そういうの。

どんなジャンルでも、
その表現が成熟に近づくと、
ジャンルの名のもとに
カウンターやパロディ精神、作家性が
入り混じった作品が生まれてくるものですが、
今回はそういった、表向きは
Jホラーにパッケージされながらも
一言ではカテゴライズできない内容の
ちょっと変わった作品をご紹介いたします。



『発狂する唇』(2000年)

監督:佐々木浩久
脚本:高橋洋
メディア:DVD
販売元:アップリンク
『リング』の高橋洋脚本、という
宣伝文句と怪奇なオープニングから
期待されるホラーテイストは序盤のみで、
そのあとはあちこちにぶつかりながら
坂道を転げるような、
まさにクレイジーな作品です。
『リング2』でもかいま見ることが出来る
高橋洋氏のアザー(メイン?)サイドを
存分に堪能することができます。
怖さ :★★★☆☆
狂気:★★★★★



『ドッペルゲンガー』(2003年)
監督:黒沢清
脚本:黒沢清・古澤健
メディア:DVD
販売元:アミューズソフトエンタテインメント
ホラー作品においては
シリアスな作風に徹していた黒沢清監督が、
Vシネマ時代の作風を思わせるアクション、
オフビートなユーモアを
ホラーにもミックスしはじめた頃の作品です。
「ドッペルゲンガー」を題材にしている
だけあって普通の映画ではないのですが、
物語もその設定を上回る破天荒さで、
爽快感の残る内容となっています。
怖さ:★★★☆☆
アクション:★★★★☆



『こっくりさん日本版』(2005年)
監督:坂本一雪
脚本:古澤健・谷川誠司
メディア:DVD
販売元:クロックワークス
同時期に公開された韓国ホラー映画と
同じタイトルのためなのか、
「日本版」とついているおかげで
パッケージからはB級のアイドル映画では?
という先入観を持ってしまうのですが、
中身はしっかりとしたホラー作品です。
しかし、心霊ホラーとしては佳作どまりで、
隠された裏テーマを発見できたときに
あらためて恐怖するという、
結果的に二重構造になってしまった
希有な作品です。
怖さ:★★★★☆
侵略:★★★★☆



『「超」怖い話』TVシリーズ(2006年)
監督:亀井亨
脚本:加藤淳也
原作:平山夢明
メディア:DVD
販売元:竹書房
ローカル局とはいえ、
地上波で連続ドラマとして放映されていたことに
違和感を覚えてしまうほど
悲しく陰鬱な作品です。
心霊現象を扱いながらも、
「新耳袋」のように不思議な話では終わらせず、
そこから人間の狂気や恨み、
憎しみをひきずりだしてしまう
同名原作の世界観が映像化されています。
体調の良いときに鑑賞されることを
おすすめいたします。
怖さ :★★★★☆
狂気:★★★★☆



幽霊のつくりかた
JホラーをJホラーたらしめている
重要なポイントのひとつに、
幽霊表現の新しさがあります。
それまでの幽霊は青いライトに照らされていたり、
二重露光で背景が透けていたり、
血まみれで恨み言をつぶやきながら
こちらに襲いかかってくる‥‥
というスタイルが王道でしたが、
リアルさを追求したJホラーにおいては
よく見ると不自然な位置に人影がある‥‥
といった、心霊写真や実話怪談にヒントを得た
演出方法が基本になっています。
初期作品に画質の荒いビデオ映像や劇中映画が
アイテムとしてよく登場するのは
その、ぼうっとしたあいまいさを
表現するためだと思われます。

その後、ポーズや服の色だけで
生身の人間(俳優)を幽霊に見せることに成功し、
それが動いたり言葉を発したりしても
恐怖を損なわずに表現できるようになり、
Jホラー幽霊の手法自体は
成熟の域に達してきましたが、
どうやら真に怖ろしい映像を撮るには
先天的な才が必要なようで、
全体の底上げはされても、
次々と傑作が生まれるという状況は
残念ながらいまだ訪れていません。

イラスト:藤本和也

2007-08-28-TUE





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