ザ・グレート・フリー 自由業、着地点は不明です。



第7回 このままではいられない日が来るから。

天久 中期、長期プランというのは、
社会的に、ということですか?
── 自分と社会と両方、
ということではないでしょうか。
天久 自分では
「もうちょっと技術磨いて」とか、
「いいものを作っていきたいな」
という気持ちはあります。
だけど、社会的に、となると、どうだろうなあ。
フリーだから役職もないし
相撲取りじゃないから番付表もないし。

── (笑)イラストレーター界の横綱とか。
「サブカル漫画の小結こと」(笑)。
天久 「サブカル小結」っていいですね、
温かい感じがして。
芸人さんは、すごく
階級があるでしょう。
板尾 舞台で言えば、
「何番目」とか「トリ」とか、あります。
テレビやと、自分の番組を持ったりとか、
そういうことなんかなあ。
天久 そういう意味では板尾さんは、
立ち位置がわりと違いますもんね。
板尾 うん、そうですね。
劇場の出番でもね、
舞台ってだいたい昼と夜の2回
興行があるんですけど、
昼間は遅いめで夜はトップで出てはよ帰る、
というのが、僕はいい。
一同 (笑)
板尾 だから、いつも会社には、
「2回目はトップでええで」
と言うんです(笑)。
別に、そこにこだわりはない。
早く帰れるほうがいい。
テレビも、自分の番組というよりは
人の番組に出てるほうが好きなとこもあるから、
そうやなあ‥‥
このままでいいっちゃいいんですけど、
でも多分、
このままというわけには
いかないじゃないですか。


天久 そうですね。
板尾 このままをキープするのが
たぶん、いちばん難しいでしょ。
うん。
板尾 いまの自分は、キープしていくために
ちょっと頑張ったり、
わざと気を抜いたりして、という感じがします。
でも、わかりませんよ、
5年後どうなってるかは、わかりません。
また変わるかもわからない。きっと変わるでしょう。
中途半端というところが、実は
いちばん難しそうな気がします。
うん、うん、つかず離れずみたいなところが。
板尾 ねえ? そのへんが、いまは
いちばんおもしろかったりするんです。
あまり行き過ぎると
「もうここではちょっとでけへんようになったな」
なんてこともあったりして、
そうすると、ガラッと変わってしまう。
いい感じでフワッと浮いてるぐらいが
いまはいいんとちゃうかな、自分は。

── 瀧さんは?
中長期的な計画ねえ(笑)。
なんだかほんとうに、
流れに乗っかってたらこうなっちゃったからな。
なろうと思ってなったわけじゃないけども、
別に悪くないと思うんですよ、今の自分。
そう考えると、あまり計画を立てないほうが
いいのかな、という気がします。
そうしてきたからいまがあるわけだから。
── 逆に、短期計画というか、
軌道の修正や反省のようなことは
みなさん、なさいますか?
浜野 あ、します。
板尾 うん、するやろなあ。
ああしとけばよかった、
ということはあります。
昔作った作品を見ても、
「ああ、すごい直したい。
 でも、どうしようもない!」
と思ったりします。
でも、それはほんとにしょうがない。
未来の自分がどんどん
こっちを振り返って
そう思う。

ずっとそれはあって、終わらないんです。
板尾 あまり正解があることでもないんでしょうね。
それはそれでよかったんかもわからん、
ということもありますから、
そんなに「明らかに失敗」と呼べることは、
たぶん、ないです。
「いい」って言ってくれる人もおりゃあね、
「悪い」って言ってくれる人もある。

漫画だって、一方は
手塚治虫まであるわけだからね。
天久 うん(笑)。
手塚治虫になれなかったから、
じゃあ失敗かっていうと、
そうでもない。
天久 正解はなくて、
どちらかというと、
いかにオリジナルの間違えをするか、
という感じすらあります。
── それは「自信」とかいう話とは、
また別のものなんでしょうか。
板尾 自信はあっても、
いまいち受け入れられへんかったり
することもあります。
そうですね。
天久 基本的に、
間違ってても言ってくれないですよ、
フリーの人には。
そんな優しい人、いないですね。
次に仕事を
頼まれないだけ。
一同 (笑)
板尾 そうですね、それぐらいのもんですね。
頼まれた企画意図と明らかに外れたりすると、
多分もうだめでしょう。
でも、それで別に仕事がなくなるわけでもない。
逆にそれをおもしろいと
言ってくれる人がいたりして。
板尾 捨てる神あれば
拾う神あり
で、
あれがあったからこの仕事が来た
みたいなこともあるんです。


(明日につづきます)

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2007-05-10-THU

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