第4回 面接では、ちゃんとすべてがばれますから。

糸井
就職してない人って、
まだ世の中で失敗も成功もないじゃないですか。
そのときって、本当にわかんないですよね。
その不安をどうにかしてくれ!
ってみんな思ってるけど、
「不安を持つな」っていう一言ですよね。
塚越
うん。
持っててもいいけど、
何も意味ないかも知れないですよ。
不安でいてください。
だって不安にならないでくれって言っても、
無理だと思うんですよね。
自分の気持ちのおもむくままやってることとか、
やりたいこととか、そういうの大事にすると、
たぶんその辺から芽が出るんじゃないですかね。
ぼくの場合そうだったのかなと、今思いました。
糸井
それがうまくいったのは、
ラッキーなことなんでしょうか。
それとも、本当は普遍化できる話なんでしょうか。
今、自分の会社に自分を入れるかどうかですよね。
簡単に言えば。
塚越
ぼくは入れますね。
会場:(ざわざわ)
糸井
笑われてたよ、今。
塚越
ぼく、思いって大事だと思うんですよ。
自分でも選んでると思うんですよ、
誰と付き合いたいかとか。
自然にそれができてるような気がするんですよね。
ぼくがもし、自分で自分を雇う、と思ったときに、
何もできないと思っても、
この人だったら何かやってくれるかもしれない
可能性を感じると思うんですよね。
そこが大事だと思うんです。
糸井
若いときの塚越さんって何を思ってたんだろう。
今の塚越さんが持ってるものは、
ぼくはわかりますよ、なんとなく。
だけど、この子が22歳のときに
何があったんでしょうね。
塚越
この20数年の間に、いろんな経験をしたから、
そこでぼくは付加価値が付いたと思うんです。
でもそれは、ノウハウの部分なんだけど、
そうじゃないものも、入ってるでしょうね。
糸井
その部分。
何もなかったよって言うけど、
何かしらあったんでしょうね。
それは、なんなんでしょう。
塚越
わかんないですね。
なんかその人なりの特徴を現す
コンセプトがあると思うんですよ。
それじゃないですかね。
──ぼくが好きだと思って、
今のオフィスの後ろに掲げてる標語があるんです。
それって関係あるわからないですけど、
「誠実」なんです。
糸井
ほぉ。
塚越
それって「まごころ」とも言えるんだけれど。
自分に対してもそうですし、
仕事に対して相手に対しても
そうだと思うんですけど、
その姿勢が突破口になってる気はしますね。
それを自分で裏切るようなことをすると、
きっとうまくいかないんですよ。
糸井
誠実って、難しいとも言えるし、
簡単とも言えるし、ぼくはあえて
「誠実を守るのって簡単だよ」って
言ってみたいんです。
つまり、揺らがないですむじゃないですか。
誠実って言葉に関しては。
その都度、答えがちがうわけじゃないから、
守り通せますよね。
塚越
でもね、誘惑はありますよ。
今の会社でもいろんな誘惑はありました。
そのときに、誠実という言葉──、
いろんな解釈があるかもしれないですけど、
“半誠実”みたいなことだって、
選ぼうと思えば選べたことが
たくさんあるんですよ。
でも、それはしなかったんですね。
糸井
誠実の“ふり”はできますよね。
塚越
ふりはできる。だけどばれるんです。
糸井
ばれますよね。
「ほぼ日」で連載した「面接試験の本当の対策」の中で
人材紹介会社を経営している河野晴樹さんが
「何を大切にして生きてきたかを聞きたい」
という話がありました。
塚越さんが若いとき、若い人なりに、
「誠実を大切にしてきたつもりです」
という答えをしたんですよね、言わばね。
塚越
そうですね。たぶんそれは、
人によってちがうんでしょう。
面接って、何言おうと、ばれますよ。
答えとしては、完璧な答えのつもりでも、
絶対こいつ入れてやるもんかと思うこと、
ありますもん。
糸井
おお、すごい、激しい。
塚越
どう考えてもりっぱな答えであっても、
本当のこと言ってないっていうのは、
それはわかりますよ。
(明日に、つづきます)



面接で緊張して喋れなくなってしまいます。

質問者4(男性):
今、就職活動してまして、
今日ここに行けば、
就職活動についての話が聞けるかなと、
思って来たんです。
自分は、面接中に結構緊張しちゃうんですけど、
向こうが怖そうな人だと、結構緊張しちゃって
なかなかしゃべれないでいるんです。
そういうときの対処法などを
教えていただけますか。



糸井
今、しゃべれてるんだから、
大丈夫ですよ。
塚越
あんまり深く考えないほうがいいです。
人事の人も、
やっぱり人間ですよ。
糸井
緊張して、思ってることを
うまくしゃべれませんっていうことを、
若い人はよく言うんです。
それから、逆もあるんですね。
ドラマとか見てると、
就職活動中のお姉さんと妹の会話とかで、
「どうだったお姉ちゃん」とか言うと、
「うん、わたし思ったことは
 全部言えたから、よかった」
って言うんですよ。
それ、ダメじゃん。
そんなのよくないじゃん。
思ったこと3くらいで、向こうが6くらいで、
間に1隙間があったようだね、
また会いましょう、それくらいがいいんです。
つまりね、もっとすごいことで、言うと、
ぼくらの年齢になると、いろんな人が亡くなったり、
病気になったりしますけど、
どういう人だったかという話をしたときに、
役職名だとか、やった仕事の偉大さで
語られることなんてないんです。
どういう人でしたかって言ったら、
社員旅行行ったときにさぁ、
ものすごく酔っ払ってゲロはいてさぁとか、
あるいは、たけのこ好きだったあの人は、とか、
みんな語る、一番その人らしい思い出って、
日米なんとか交渉をうまくやった、
とかいう話じゃないんだよ。
愛情のない人の間では、そういうことが大事だけど、
「あのときに、傘をパッとさしてくれて、
 自分はかけて行っちゃって、
 また戻ってきて、
 やっぱり入れてくれって言ったんだよ」みたいな。
塚越
「人」の話ですよね。
糸井
つまり、通夜の席で笑われるような話が、
その人なんだよ。
となると、そういうときに、
話題になるおもしろいやつと、
一緒にいたいんですよ。
塚越
面接ってね、「人」を見てるんですよ。
素材の方を見てるんですよ。
何をやってきたかよりも、
こういう人だったら、
一緒にやってておもしろいなあとか。
だから自然にやった方がいいんですよ。
ダメだったら、ダメだったでいいじゃないですか。
縁ってありますもんね。
自然にやってて、伝わったことが、本当ですよ。
向こうもそういう見方で見てて、
で、ちがうなと思ったんだったら、
そんなの行かないほうがいいですよ。

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2007-05-02-WED

 (C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN