主婦と科学。
家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所

研究レポートその1
花粉症対策にはお腹の中に寄生虫を飼うとよい?

ほぼにちは、初めまして。
カソウケン(家庭科学総合研究所)の
研究員Aと申します。

カソウケンと言ってもあの「科捜研」ではありません。
主婦であるわたくし、研究員Aが
家庭生活を科学する研究所なのです。

研究所の他のメンバーは

所長(夫)
研究員B(長男:2歳4か月)
研究員C(次男:5か月)

となっております。

要するに家内工業的な弱小研究所なんです。
しかも、実質的な実行部員が研究員Aのみというありさま。

そんなダメ研究所が、なんと。
このほぼ日に出張所を設立するはこびとなりました。
なんと分不相応なことでしょう。

ほぼ日読者のみなさま、
これから、「カソウケンほぼ日出張所」を
よろしくお願いします。
もしこちらで、お?と気にとめて下さったら、
カソウケン本部にも遊びに来て下さいね。

こちらでは、家庭生活などに関わるような
身近な科学をお話ししたいと思っています。
「カガク?」と身構えず
きがる〜に読めるはなしにできたらなあと。

ただ、悲しいことに研究員A、
科学は好きですが頭は悪いときています。とほほ。
勘違いや間違いなど多いかもしれません。
いえ、多いはずです。
そんなときはやさしく教えて下さいませ。
よろしくお願いします。

ではでは、第1回目の話題は

「花粉症」。

スギ花粉のピークは終わりつつあるので
少々季節外れかもしれません。

でも、スギの他にもヒノキ、ブタクサ、イネなど
症状を引き起こす花粉は多いんです。
人によっては1年の半分以上が花粉症状態という
カワイソウな方もいるとか。

当カソウケンの所長もスギ花粉症のようで、
今も点鼻薬が手放せません。
でも、ラッキーなことに研究員Aはその気配なし。

そんな研究員Aは所長に
「いいよなー、原始人は。僕は繊細な現代人だから」
と意地の悪いことを言われてしまうのでした。
きーっ。
確かに、研究員Aは賞味期限切れのものを食べたって
お腹を壊すこともないですけどー。ぶつぶつ。

でもでも、所長のこのイヤミな悪口、
あながち的外れでもないみたい。

「現代人に花粉症が多いのは
 体内に寄生虫がいないから?」


というユニークな説があるんです。

この「寄生虫説」を提唱しているのは
東京医科歯科大学の藤田紘一郎教授。
著書『笑うカイチュウ』などでおなじみの
カイチュウ(回虫)博士。
なんと、自らのお腹にサナダムシを飼い
「体を張って」研究なさっています。
今お腹にいるサナダムシは3代目の「キヨミちゃん」。
なんともマッドでステキ。

それでは、まず花粉症のメカニズムからはじめますね。
ヒトの体には「免疫システム」があって、
風邪のウィルスや細菌などの侵入に対して
排除すべく戦ってくれる
ありがたーい存在です。

でも、この免疫システムは誤作動して
本来「敵」ではないモノも排除してしまうことがあります。
これが「アレルギー症状」です。

花粉が体内に侵入すると
「IgE抗体」
というものが作られます。
このIgE抗体とは、
体内を守る「防衛軍」の役目をします。

花粉は本来人体に無害なものですが、
一度この「vs花粉防衛軍」が作られてしまうと、
次に花粉が侵入したときに
このIgE抗体が出動して「敵だ敵だ」と排除するのです。

このIgE抗体は「肥満細胞」にくっついています。
花粉が体内に侵入すると
肥満細胞が破れて
ヒスタミンという物質が分泌されます。
このヒスタミンが
くしゃみ・鼻水の症状を起こして
花粉を追い出そうとするわけです。

花粉症は、免疫システムの「過剰防衛」と言えるのです。

ではなぜ寄生虫がお腹にいると
花粉症になりにくいのでしょうか?
寄生虫が体内にいると、免疫システムは寄生虫に反応して
IgE抗体を作ります。
寄生虫が体内に居座っているので、
ずーっとずーっとIgE抗体を作り続けます。

このたくさん作られた寄生虫のIgE抗体、
これが肥満細胞を覆ってしまうのです。
満席になってしまった肥満細胞。
花粉のIgE抗体は肥満細胞にくっつくことができません。

花粉症のIgE抗体が肥満細胞にくっつかなければ
ヒスタミンは分泌されません。
ですから、くしゃみ・鼻水などの症状が
生まれることがないというわけになります。

花粉症に悩むアナタ!
藤田先生のようにお腹に寄生虫を飼ってみませんか?
って、飼いませんよね、普通。

ちなみに所長に提案したら
「丁重にお断りします」
とのこと。

でも、考えてみたら。。。
既に花粉のIgE抗体を持っているヒト(花粉症のヒト)より
まだ花粉症になっていない研究員Aの方が
実験台としてはふさわしいはず。

うーむ。

ワタシも丁重にお断りさせてくださいませ。

寄生虫はちょっと、という方はどうしたら良いのでしょう?
(まあ、ほとんどの方がそうでしょうね)

藤田先生は
ここ数十年日本人のアレルギー疾患が増えているのは
「超清潔志向」も原因ではと言います。
清潔志向が行き過ぎて、寄生虫に限らず
これまで人間を守ってくれた大事な菌まで
排除してしまった。
そのために、花粉やダニなどと戦えないカラダに
なってしまったのでは、とのこと。

「大事な菌」には腸内細菌も含まれます。
そうです、腸内細菌を増やすには

納豆・漬け物・ヨーグルト

これらの発酵食品が「大事な菌」を
増やしてくれることになるのです。
食物繊維の多い食べ物も有効らしいです。

そういえば、「あるある大辞典」でも
花粉症にヨーグルトが効く!と言っていましたね。
リクツは違いますが。
たしかに、腸内細菌を増やすことって
体に悪いことはなさそうです。

研究員Aの母親は賞味期限切れの食品に対して無頓着なヒト。
賞味期限が10日くらい過ぎた
ヨーグルトなんてへーきへーき。
彼女に言わせると、
「もともと腐っているものだし」。
いやいや、発酵と腐敗はちょっと違うのでは?

でも、腐りかけのヨーグルトには
新たな菌が生まれている可能性も??
(ちなみに、彼女の母(すなわち研究員Aの祖母)曰く
納豆は粘りがなくなるまでは食べてもOKらしい。)

そんな母親に育てられた研究員Aは
いろいろな腸内細菌と共生しているのかも。
そのおかげでお腹も強いし花粉症とも無縁???

お母さん、ありがとう!
ワタシも息子たちを丈夫な子に育てるべく
オオザッパになります。



参考サイト
日立ハイテクノロジーズ「サピエンス」第16回パラサイトの科学
発掘!あるある大辞典

参考文献
・体にいい寄生虫―ダイエットから花粉症まで
 藤田紘一郎著 講談社文庫
・笑うカイチュウ―寄生虫博士奮闘記
 藤田紘一郎著 講談社文庫

2003-04-19-FRI


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