研究レポートその5
重曹の法則。
ほぼにちわ、カソウケンの研究員Aです。
ずぼらな研究員Aはお掃除が天敵です。
できることなら全部を全部!
夫である所長に押し付けたいところです。
でも、主婦なのでそうも言っていられません。
そんなとき知ったのが、
「キッチンの材料でおそうじする
ナチュラルクリーニング」
という本。
なんでも、重曹・お酢(クエン酸)など口に入れても
(それほど)問題のない材料でお掃除をするとか。
酸性の汚れ→アルカリ性の重曹で
アルカリ性の汚れ→酸性のお酢(クエン酸)で
というように、
カンタンな化学反応で落とすというもの。
面白そうですよね?
これで我が家も美しくなるはず!
と妄想を抱いて飛びついた研究員Aでありました。
というわけで、今回の研究レポートは
「重曹」について。
お掃除以外にもマルチな活躍をしてくれる
重曹を科学してみましょう。
重曹とは、炭酸水素ナトリウムのことです。
化学式はNaHCO3。
弱いアルカリ性を示す物質です。
胃薬から料理、掃除まで幅広く活躍する物質として
昔からよく使われているものです。
さて、その重曹でのお掃除を実践してみて
研究員Aが一番面白かったのが
ガスレンジの油汚れを落とすこと。
油汚れに重曹を振りかけて、しばらくおいておきます。
そして、布でこすると。。。
なーんとがんこな油汚れがするっと落ちてしまうのです。
でも、研究員Aは疑り深いのです。
「小麦粉だって同じじゃないの?」と思って
試してみました。
確かに、小麦粉は油汚れを吸いとりました。
でも、こすり落とすときに、重曹のときのような
「するする感」はありません。
では、重曹はなぜ「するする」と
油汚れを落としてくれるのでしょうか。
ここで登場するのが「重曹の法則:その1」です。
油は酸性の物質です。
重曹は、油を中和して別の物質にしてしまうので
汚れを落としやすくするのです。
しかも!この油と重曹のくみあわせの場合
面白いことが起きているのです。
「別の物質」としてなんと!
セッケンができているのです。
今オクサマ界で流行中の手作り石鹸。
これを作ったことのある方なら
ピンとくると思います。
石鹸は
「アルカリ性の水酸化ナトリウム」と「油」
を反応させて作ります。
(詳しくはカソウケン本部内の
「洗剤の科学」にて)
このガスレンジの油汚れを落とす場合も
アルカリ性の重曹と油が反応しています。
というわけで、
その場で石鹸を合成している
ことになるんです。
重曹は水酸化ナトリウムなどに比べると
ごくごく弱いアルカリ性です。
それに、本当の石鹸作りの場合は加熱したりしますが
この場合はただ振りかけてこするだけ。
だから、できる石鹸の量としては
ほんのわずかですけどね。
その場で石鹸を作りながら汚れを落とす。
だから、重曹は油汚れに効くんですね。
「重曹の法則:その1」を利用したものとして
忘れてはならないのは「消臭」。
アルカリ性の重曹は、酸性の臭いを中和して
消臭してくれるのです。
例えば、生ゴミの臭いの元は
「酪酸」「イソ吉草酸」など
酸性の臭いです。
生ゴミのゴミ箱に重曹を振りかけると、
重曹が臭いを中和してくれるとか。
研究員Aも試してみたところ
確かに!臭いが軽減されました(当社比)。
これからの季節、役に立ちそうなウラワザです。
でも、魚の生臭いニオイやトイレのアンモニア臭は
アルカリ性です。
重曹では効果がないので、クエン酸などを使って下さいね。
重曹の古典的な利用法として
「お鍋の焦げ付きを落とす」
というものがありますよね。
皆さん、試したことありますか?
研究員Aは以前
ル・クルーゼという、おフランスのホウロウ鍋を
うっかり焦げ付かせてしまったことがあります。
最初は焦げ付きを落とそうと汗だくになって
たわしやお玉でがりがりやっていたのですが
らちがあきません。
で、ふと思い出したのが重曹を使う方法。
お鍋に水を張って、重曹を入れて煮立たせてから
洗ってみたところ。。。
おおお、何の苦労もなしに
焦げ付きが落ちたではありませんか。
でも!!
焦げ付きを落とした後に現れたのは、
がりがりやってしまった時の傷跡。。。
ひいいいい。我が家の一張羅ナベだったのに!
落ち着いて対処すべきでした。
それにしても、重曹はびっくりするくらい上手に
焦げ付きを落とします。
お鍋の中では一体ナニが起きているのでしょうか?
それを知るためには
重曹のもう一つの法則を知る必要があります。
重曹の法則:その2
加熱すると炭酸ガスと炭酸ナトリウムが発生する |
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炭酸ガスは二酸化炭素、CO2のこと。
炭酸ナトリウムはNa2CO3という化学式で
重曹よりも少し強いアルカリ性の物質です。
鍋に水を張って重曹を入れて煮立たせると、
炭酸ガスがしゅわしゅわと発生して
汚れを浮かび上がらせます。
それだけではありません。
発生した炭酸ナトリウムと、汚れの油分が反応して
石鹸を作ります。
上のガスレンジの油汚れを落とす場合と同じですね。
でも、炭酸ナトリウムは重曹よりも強いアルカリ性です。
先ほどの例よりは効果的に
石鹸を作っていると考えられます。
とはいえ、やはりほんの少量でしょうけどね。
そして、できた石鹸の界面活性剤としてのはたらきにより
詳しくは「洗剤の科学」にて。
焦げ付きと鍋との間に水が入り込みやすくなるために
焦げ付きを落としやすくなるのです。
重曹のはたらきをフル活用した昔ながらの知恵です。
実験としてはとっても面白いので
お鍋を焦げ付かせてしまったときは
「しめしめ〜」と楽しんでしまいましょう。
「重曹の法則:その2」をストレートに楽しむ?方法は
やはり「膨らし粉」としての性質ですよね。
お菓子の生地などに入れると炭酸ガスが発生するので、
膨らませることができるのです。
すっかり重曹の信奉者になりつつある研究員Aは
つい先日、たらの芽の天ぷらを作ったときに
重曹を衣に入れてみました。
うろ覚えの記憶によると
「揚げたときに衣が膨張するので、
花が咲いたような形になり
からっと仕上げることができる」
とあった気がしたので。
確かに、それなりにからっと仕上がったのですが
衣の色が黄色い!美しくなーい!
この、黄色くなってしまったのは
「炭酸ナトリウム」のしわざ!
炭酸ナトリウムはアルカリ性の物質。
小麦粉のフラボノイドという色素はアルカリ性になると
黄色くなってしまうからなのです。
重曹のこの「欠点」を改良したのが
ベーキングパウダー。
熱を加えて分解した後に
アルカリ性の物質が残らないように
助剤を入れたものなのです。
見た目を気にするケーキなどには
ベーキングパウダーの方が都合が良いことになります。
色の濃いお菓子ならば重曹でも構わないようです。
というわけで、天ぷらの衣に入れるのは
ベーキングパウダーの方が黄色くならないので
良かったかもしれませんね。
お鍋を焦げ付かせてしまったときもそうですが、
研究員Aは行動する前に少しは
頭を使った方が良いみたい。
ここにご紹介した以外にも
野菜のアク抜き、研磨剤としてなど
用途の広い重曹。
魔法の粉、なんて呼ばれたりもします。
でも!
アルカリ性の化学物質であることには
変わりありません。
シャンプーや体を洗う石鹸代わりに使うことは
やはり「?」のようです。
口に入れても無害だから!と
安全性を過信しないようにしましょうね。
さて、ナチュラルクリーニングとやらを実践して
カソウケンはキレイになったのでしょうか?
昔、ベストセラーの「超整理法」に飛びついて
A4封筒を大量に買い込んだ前科のある研究員A。
それでも片付いていないということは、
ナチュラルクリーニングの効用も推して知るべし?
何よりもまず、研究員Aを「マメな体質」に
矯正するしかないってことでしょうか?
はああ、それこそ不可能な話!
追伸
前回の研究レポートが
男の脳・女の脳(1)
だったので、今回はその続編かな?
と期待していた方、申し訳ありません!
男の脳・女の脳(2)は近日公開予定です。
しばらくお待ち下さいませ。
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参考サイト
化学の質問、ありまへんか。
石けん百科
参考文献
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