主婦と科学。
家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所

研究レポート17
ハーブティ七変化、色の変わる液体の科学。


ほぼにちわ、カソウケンの研究員Aです。

科学少女であった研究員Aの幼少時代。
「学研の科学」や家にあった図鑑を参考にしつつ
せっせと実験に励んでおりました。
どー考えても、研究に専念すべきであった
学生時代よりもよっぽど熱心。
学生時代の自分に
「幼少時代のキミを見習いたまえ」
と説教したいところです。

そんな研究員Aにとって一番ココロ躍る実験は
「カメレオン実験」でした。
そう、色を変える実験です。
例えば、空き地でムラサキツユクサを集めて
レモン汁や重曹を入れる。
紅茶にレモンや蜂蜜を入れてみる。

色がぱあ〜っと変わる様子を見るのが
ちょっとした快感でありました。

あと、理科の教科書にあったカラー口絵のページ。
pHを変化させて紫キャベツの抽出液を
七色に変えたものです。
この口絵、研究員A以外にも思い出深い方
多いのではないでしょうか?
あの虹色のグラデーションを
授業もまともに聞かずうっとり眺めておりました。

そんなカメレオン実験をつい先日
マローブルーというハーブティを使って試してみました。

このマローブルーというハーブティ。
鮮やかな青い色をしたお茶なのですが
レモンを入れるとさっとピンク色に早変わり。

そうです、このマローブルーは
紫キャベツやムラサキツユクサと同じように
酸やアルカリで七色に変化するお茶なのです。

ではでは、実験の様子をレポートしまーす!

まずはマローブルーの濃いめのお茶を作ります。

できたてのマローブルーの色はぱっとした青なのですが
ぐずぐずしていると緑色〜灰色に変化してしまいます。
トロい研究員Aはぐずぐずしていたので
用意している間にグレーになってしまいました。
すみません。。。何事もトロいんです。

次に、家にある色々な種類の酸性・アルカリ性の物質で
調べてみました。
容器にそれぞれ適当量を入れ
(はい、テキトーという意味です)
マローブルーのお茶を入れてみると!
こんな結果になりました。



左から、
トイレ用酸性洗剤・レモン汁・シャンプー
食塩・重曹・酸素系漂白剤
です。

「ほら〜こんなに綺麗に七色になったでしょう〜」
と言いたいところですが
元の色が時間がたってグレーになってしまったので
いまいちですね。重ね重ねすみませんです。

この写真撮影の時、
七色の並んだコップを発見し、
案の定さっと躍りかかろうとした研究員Bです。
慌てて「寄るなあ〜!」とデストロイヤーを制し
所長に捕獲を依頼しながらの写真撮影となりました。

確かにコドモ心にも惹かれるものがあるのはわかります。
実際、オトナであるはずの研究員Aもうっとりです。

ちなみにこのマローブルー、
ハーブティなのにくせがなくて飲みやすいです。
ハーブティなのに、って言い方に
研究員Aの偏見が込められていますが。
でも、言うまでもないことですが実験後のマローブルーは
飲まないでくださいね〜!

もっとお手軽にこんな実験もできます。
マローブルーに炭酸水を入れると、ほら!
ピンク色になります。
前回の「ドライアイスの科学」でご説明したように
炭酸水は酸性だということがわかります。
それこそ、ドライアイスそのものを入れても色が変わるし
楽しめるかもしれません。
元の液 炭酸水を入れた液

。。。と、単なる実験報告だけで
終わってしまってはしょーもないので
続いて「なぜ色が変わるのか?」
ということを科学してみたいと思います。

光は波の性質を持っています。
その波の山から山までの長さのことを
「波長」と言います。

波長が違うと、光の色が変わります。
下に波長による色の変化を図にしてみました。



例えば、
514nmの波長を持った光は緑色。
688nmの波長を持った光は赤色。
という具合です。

というわけで、「好きな色は?」と聞かれたときには
波長で「○○nm」と答えると
より正確に相手に伝わります。
うっとうしさ満開ですけど。

ちなみにnmというのは100万分の1ミリメートル。
我々にとってはとーっても小さい長さです。

いろいろな波長の光を混ぜると白く見えます。
太陽や電気の光が白いのは
さまざまな色が混ざったからなんです。

ではでは、「色がある」ということは
どういうことなんでしょう?

緑色に見える葉っぱは
緑色の光「以外」を吸収しているので
緑色に見えます。

赤く見えるリンゴは
赤色の光「以外」を吸収しているので
赤く見えます。

要するに、光の場合は白く見える光から
引き算をすると、色が付いて見えるというわけです。

さて、ようやくマローブルーの話に入ります。
マローブルーは
アントシアニンという色素が入った植物です。

このアントシアニン
・酸性の状態にあるときは赤
・中性の状態にあるときは紫
・アルカリ性の状態にあるときは青
に変化します。

ここが不思議ですよね。
それはこのアントシアニン、
pH(酸性・アルカリ性の度合い)が変わると
構造も変わってしまうのです。

より正確には、こう言わなくてはいけません。
アントシアニンは4種類のバリエーションがあって
それぞれ違う色の光を吸収します。
そしてpHが変わると
そのバリエーションの各割合も変化するのです。
だから、酸を入れたりアルカリを入れたりすると
色がグラデーションで変化するんですね。

さて、このアントシアニンは
色々なものに含まれています。
教科書の口絵で使われていた紫キャベツも
実はアントシアニンが含まれています。
あとは、シソ。

シソジュースを手作りしたことがある方はご存じでしょう。
シソの葉を煮出しているときは濃い紫色ですが
途中でお酢かクエン酸を加えると
色が赤に変化しますよね。
あれはまさしくアントシアニン効果です。

そして、梅干しが赤いのも
シソのアントシアニンが酸性状態で
赤くなっているから、なんです。

他にも、ブルーベリーやナスにも
アントシアニンが入っています。
身近な色々なものでカメレオン実験ができそうですね。

マローブルーの場合は他の色素も含まれているので
もっと複雑な色の変化を楽しめるのだとか。

そうそう、冒頭に紅茶の色の変化の実験の話をしました。
紅茶にレモンを入れると色が明るくなるのは
テアフラビンという色素のせいです。
この色素、酸性になると色が消えるんです。

でも、蜂蜜を入れると色が黒くなるのは
別のリクツになります。
蜂蜜中の鉄分と、紅茶のタンニンが反応して
黒色のタンニン鉄ができるからです。
この実験を使えば蜂蜜の種類の違いによる
鉄分量を調べられるかも。

カメレオン実験のような見た目にも派手な実験って
オトナもうっとりです。
ドライアイスのお手軽さには負けますが
派手さでは負けません。
もし機会があったらぜひぜひ試してみてください!




参考サイト
キリヤ化学
農林水産消費技術センター

参考文献
ファインマン物理学(2) 岩波書店 R.P.ファインマン著
分析化学2 分光分析 丸善 北森武彦・宮村一夫共著


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2003-09-12-FRI


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