主婦と科学。
家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所

研究レポート43
こどもたちよ、親たちよ、
アインシュタインもダ・ヴィンチもこうだった!
「学習障害」のはなし 後編(全3回)


ほぼにちわ、カソウケンの研究員Aです。

前回まで、アインシュタインとダ・ヴィンチという
ふたりの天才が、じつは脳の頭頂葉に障害をもち、
記憶に問題があったというお話をしました。
実はこのアインシュタインや
ダ・ヴィンチのような障害って、
珍しいものではありません。
最近話題になり始めた「学習障害」。
文部科学省の定義によると
「基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが
 聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの
 特定の能力の習得と使用に著しい困難を示す、
 様々な障害をさす」とのことです。
学習障害は増えた、というよりも単に
「認識されるようになった」
ということなのでしょうね。

ここまでわかった「学習障害」のなぞ。

「能力があるのに、テストや勉強ができない子」
「読み書きが苦手な子」「落ち着きがない子」
「注意力が低い子」などをがあてはまるそう。
本人の努力不足や怠けの問題ではなく(ここ大事!)
もちろん親の育て方の問題ではなく(ここも大事!)
中枢神経系に何らかの問題があると考えられています。

そして、学習障害の症例のうちほとんどが
アインシュタインやダ・ヴィンチのように
音韻ループに障害があるケースだと考えられています。

例えば、ダ・ヴィンチのように
視覚の情報の上下左右を正しく認識できないと
「読字障害」というものになります。
文字が逆さに見えたり、裏返しにも見えたりするので
文章を読むことがとても難しいものになってしまうのです。
そして、いくら教えても
鏡文字を書いてしまう子どももいます。
まさにダ・ヴィンチと同じ症状ですね。
また、暗記ができない・暗算ができないってことも
この音韻ループの問題となります。

学習障害児は決して怠けているわけではなく
脳の機能に問題があるから
頑張ったとしても「できない」のです。
脳の機能に問題がある、というと聞こえが悪いですが
一方でワーキングメモリーの「視空間メモ」など
別の部位が発達している可能性が極めて高いのです。

「勉強ができない」ことの裏側には
ものすごい才能がかくれているのかも。

学校教育では言語的思考の能力を判断する
モノサシに偏っています。
だから、学習障害児は自分にとって苦手なことで
点数が付けられるので
「できない」と自信をなくしがちです。
学校の勉強ができない、即知能が低い、
ってことにはなりません。

わざわざ言うまでもないですが、
友人付きあいが上手、という子は
もちろん知能が発達していると言えますが
学校の成績には反映されません。残念なことに。
友人づきあいの他にも
いろいろな「モノサシ」が存在し得るのですが
残念ながらこれらもまた成績には反映されないものが殆ど。

「発達遅滞」「学習障害」と指摘されて
親として何が辛いかというと、
その事実を受け入れることなんですよね。
「普通じゃない?」「落ちこぼれ?」「劣ってる?」
などなど‥‥。
もちろん、そんなわけはありません!
ただ「大多数と違う」だけなのです。
そして実際彼らのような子は
「大多数と違うアプローチ法」を必要としているわけで、
それにはまず認めないと始まらないのです。
アメリカなんかでは日本に比べると
軽い受け止め方をされて
しかもそのサポートが充実しているとか。
多様な個性を受け入れるお国柄でしょうか。

学習障害児がすべてアインシュタインや
ダ・ヴィンチのように天才なれるとは言いません。
ただ、不得意なところだけにモノサシを当てられて
「できない」と思われたり
本人も自信をなくしていくのって
ほんとーに、ほんとーに勿体ないことだと思うのです。

だって、勉強ができないことって
裏を返せば実はすごい能力があることの
証明かもしれないんですから。

ってことは、ですよ。
笑っちゃうくらいの方向音痴ぶりを見せる研究員A。
「音痴」「運動音痴」「方向音痴」と三拍子
いや違った、三重苦を抱えているのです。
「たぶん、こっち」と選んだ方向が
ことごとく間違っています。笑うしかありません。
あまりにもあまりなので、
これほどの方向音痴は脳に「何か」あるとしか思えない!
と前々から思っておりました。
だとすると、この極度の方向音痴を補償すべく
研究員Aには別の才能が開花するかもしれない〜
なんて期待もできるわけです。
できれば死ぬまでに開花して欲しいものですが。




参考文献
「天才はなぜ生まれるのか」
 ‥‥正高信男著 ちくま新書
「アスペルガー症候群と学習障害
 ──ここまでわかった子どもの心と脳」

 ‥‥榊原洋一 講談社+α新書

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2004-08-27
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