主婦と科学。 家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所 |
研究レポート61 科学者はモテるために研究しているのか?! あるいは科学的ひらめきの年齢分布の謎。 ほぼにちわ、カソウケンの研究員Aです。 前回までの研究レポート 「理系が苦手! というみなさんへ。」に 皆さまから多数の体験談を頂きました。 本当にありがとうございました! 一つ一つ唸らせられる貴重なご意見、 次回、改めて取り上げてレポートにさせて頂きたいと 思っております! ところでその第一回にあたる 「研究レポート58 なぜアナタは理系科目が苦手になったんですか?!」 で、ワタクシ 「理系はモテないと相場が決まっている」 と書きました。 すると、その暴言に対してフォローの メールをいくつか頂戴しました。 「理系のひと、好きですよ」 「かっこいいと思う」 などなど! 理系の男性の方、ウケ狙い(?)のために ネタにしてたいっっへん申し訳ありませんでした! でも上のような支持の声がありますから どうかご安心下さい。 (「理系女」に対する フォローはなかった‥‥しくしく。) という具合に「理系」と「モテ」に関しては かのフェルマーの最終定理に並ぶ 難問であるわけですが(それは初耳だ) その核心に迫るかもしれない研究結果が 昨年発表されました。 科学者はモテるために研究をする? ‥‥という心理学の研究です。 それでは、今回はこのナゾについて迫ってみましょう! (えー、あらかじめお断りしておきますが テーマがテーマですので、いつもにも増して 「たのしんで」お読み頂けると幸いであります!)
さて、この「科学者はモテるために研究?」というのは ロンドン大学・経済政治学院の Satoshi Kanazawa氏による研究結果です。 Kanazawa, S. Why productivity fades with age: the crime-genius connection. Journal of Research in Personality 37, 257-272 (2003). ピエール・キュリー(キュリー夫人のダンナさん)や アインシュタインら有名な280人の科学者を対象にして 「彼らが優れた論文を提出したのは何歳のころ?」 ということを調べました。 その結果の概要は次の通り。 ・男性研究者の生産性は30歳でピークをむかえる ・これは犯罪者の傾向と似ている ・独身の科学者は結婚した科学者よりも ピークとなる時期が遅い ‥‥というわけで、犯罪者が金庫破りをするのも 科学者が論文を発表するのも目的は同じ! 「女性の目を惹きつけるため」だというのです。 んなことあるかいっ!! と、えー、あまりにもユニークな結果ですので これを読んでいる皆さまも にわかには納得しがたいものがあるかと思います。 というわけで、もう少し詳しく 探ってみることにしましょう〜。 上の研究では 「アインシュタインら有名な280人の科学者」 を対象にしたとありますが おそらく、ノーベル賞受賞者が その受賞のきっかけとなった研究が含まれているに 違いありません。 そのデータがうまい具合に 「平成13年版 科学技術白書」 に掲載されています。 ずばり「ノーベル賞受賞者の業績を上げた 年齢の分布」です。 上でご紹介した研究によると 「ピークは30代」となっていましたが これは30代後半に集中していますね〜。ふむふむ。 その業績を上げたあと、かなり時間を経てから 受賞されることも多いので 「意外と若い」と思われる方も いらっしゃるかもしれません。 例えば、この表の中には入っていませんが (1981年〜2000年の受賞者が対象なので) 以前のレポートで紹介した 超・機械と相性が悪いことで有名な大天才パウリは 25歳の時の成果に対して受賞されています。 すごい話なのだ! 研究員Aの25歳なんて‥‥ って、そもそも比べる方が間違っていますが。 そしてトリビアをひとつ。 最年少の受賞者はローレンス・ブラッグです。 なんと「受賞時」で25歳! しかもパパと一緒に親子受賞なのだ〜。 そもそも、上記の 「ノーベル賞受賞者の業績を上げた年齢の分布」 を出した科学技術白書の趣旨は 「だから、若手にこそ潤沢な研究費を!」というもの。 まさかこんな「科学者とモテ」なんてテーマに 流用されるとは予想だにしなかったでしょう。 ごめんなさいね。ほほほほほ。
一方で、科学者たちの「主観」による こんな統計もあります。 研究成果に関してではありませんが それに関連が深そうな「創造的能力」について 科学者本人たちにアンケートをとった結果があります。 文部科学省 科学技術政策研究所の 調査研究になります(こちら)。 創造的能力の限界があるとしたら、そのピークはいつ頃? という質問に対して 「40歳くらい」と答えたひとの割合が 一番多かったみたいです。ふむふむ。 カソウケンにとって、もっとも身近な「科学者」である 所長(40歳)にインタビューしてみました。 「うーん、確かに妄想に近いような 突拍子もないアイディアを思いつくのは 30代前半までかな? それ以降は経験という知恵がつくからか 実現可能なアイディアしか思いつかなくなる。 妄想に近いものを『創造性』と呼ぶなら 確かにその通りかもしれないけど」 なるほどー。研究に限らず、他の分野でもありそうな。 ちなみにこの所長、最後に 「まー僕はアイディアの枯渇とは 無縁だろうけどね、はっはっは」 と締めていました。 おめでたいひとです。長生きしそうです。 研究の生産性にしろ、創造的能力にしろ 30〜40歳あたりという答えに落ち着くのは どうしてでしょうか? やはり「モテ」と関わりが? 最初に紹介したKanazawa氏の研究や この科学者たちにインタビューした結果でも 指摘されていますが おそらく 「教授などの管理職になると『前線』を離れる」 ってことが一番の原因じゃないかなーと思います。 モテとの関係は‥‥うーん、どうなんだろう? 独身の方がピークが遅い、というのも 「モテる必要がなくなった」というよりは 結婚したことで 何日も研究室で寝泊まりする‥‥なんていう 研究だけに没頭する生活が できなくなるからかもしれません。 というわけで、モテと研究業績の関係、 その科学者にとって「代表作」とも言える 業績を残すのは、若い時期であるパターンが 多いかもしれません。 でも、これが「女性の目を惹きつけるため」 かどうかは‥‥?? とはいえ、以前darlingが ダーリンコラム<ろくでもなさを許せる世界>で 好きになれるほどギターを知る、サッカーを知る、 というだけのことでも、 けっこうやりこまなきゃ見えてこないものなのだ。 やりこませるまでの動機のところに、 「もてたい」だの「儲けたい」だのという いわゆる不純な気持ちが必要になるわけだ。 と、書いています。 ミュージシャンやサッカー選手のように 科学者にもそんな不純な動機があっても おかしくはないはず! あの大科学者の業績のウラに 素敵なラブストーリーがあったりして‥‥な〜んて 勝手な妄想を抱いてしまう 研究員Aなのでありました。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 参考サイト nature BioNews 平成13年版科学技術白書 科学技術政策研究所 |
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2005-05-20-FRI
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