主婦と科学。
家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所

研究レポート62
理系が苦手! というみなさんへ 最終章
熱いメールを一気に紹介させていただきます!


ほぼにちわ、カソウケンの研究員Aです。

長々と3回にわたってお送りした研究レポート
「 理系が苦手! というみなさんへ」ですが
嬉しいことに皆さまからの熱いメールを
たくさん頂きました!
カソウケン一同、お礼を申し上げます〜。

というわけで、今回はその頂いたメールを
もとにまとめレポートをお送りしたいと思います!

それでは、まず
「具体的にどこで苦手or嫌いになったか」ネタを
ご紹介していくことにしましょう〜。

ついていけなくなったのは基礎解析で
シグマが登場したときです。
この記号の表わすものが想像できなくて
出てきただけで思考が停止していました。
さらにn-1とか出てきたら、もうだめ。

次に駄目だったのが回転体の存在です。
X軸やY軸のまわりを関数がぐるぐる回転しはじめ、
回転体の形は? とか別の関数で
それを切ったときの切断面の面積は? とか
言われるようになるとこれまた思考が停止。

(くいなさん)

立体〜わかりすぎるほどにわかる!!
研究員Aも立体がとにかく苦手で
(だって、平面図からなにをイメージしろというの?
 どうみたって平面は平面だあああ。)
「わたしの頭は二次元だから〜」と開き直っていたら
所長に「え?一次元までしかわからないでしょ」と
訂正されちゃいました。むきー。
そんなわけかわかりませんが
研究員Aは極度の方向オンチでもあります。

その歴史は紹介されていた皆さんよりも
はるかに早く、九九で既に挫折。
今考えると理由は、数字の羅列とかに
感情移入できなかった点ですかね?

(感情移入好きな美術系さん)

数字というだけで、全部同じに見える!
その数字が、どういった意味を持つのか、
どう使えば 答えに繋がるのか、
さっぱり見えてこないのです。
いきなりアラビア語を示されて、
「さあ、訳して下さい」と言われるような状態…
と言えばお分かり頂けるでしょうか。

(mihoさん)

「数字がアラビア語に見える」の例えは
なるほどでした!
このお二人のように
「数字を見ただけで拒否反応」って方も
少なくないのでしょうね。

私が理科で絶対に理解できない分野。
それは遺伝の法則です。
”優性と劣性を掛け合わせると優性の子が生まれる”
そこまではまあ許そう。分かってやろう。
”次世代は何が生まれるか”
‥‥知らんっ(怒)そんなものは時の運だ!
人間を見ろ。
”じゃあ今度生まれる子は第2子だからA型が
生まれるな”とか分かるのかっ!

(遺伝は信じてやらないさん)

うはははは。
確かに遺伝はただでさえイメージしにくい上に
「確率」というこれまた奇々怪々な概念
(研究員Aには確率はそう思えた)
が加わるから、さらに理解しにくい分野かも!

化学は一年間習っていましたが理解不能でした。
あの連なる多角形の意味すらわかりません。

(あいみさん)

「亀の甲」なんて蔑称?もあるベンゼン環。
なんとそれを通り越して
「多角形」と切り捨てられてしまいました。
化学系のはしくれだった研究員Aは
涙が出そうであります。よよよ。
でも面白いから座布団一枚!

このような体験談を読んで
「うんうん、わかる〜」と頷いていらっしゃる人も
多いでしょう。

でも、一方で
「そこがきっかけになるとは想像もつかなかった」
と思われる人も少なくないでしょう。
特に「得意」を自認する人はそうかも。

数学とか物理とか抽象的なものは
その「独特な世界」の理解の仕方に大きな差がある!
と思っています。
その独特な世界に近いところの住人は
苦労せずにわかっちゃう。

研究員Aから見て「できるなー」と思う人は
こちらが必要とする理解のプロセスを
数段すっとばしているという感じ。
「理解する」というより「既に知っている」
という表現の方が近いかも!

私は中卒で高校に通うこともしなかった
世間的にはバカといわれる部類の人間ですが、
それでも科学は好きです。
幼い頃から今に至るまでずっとです。
そんな私ですが、理系の知人からも
変と言われるほどの異質な理系です。
何が変かというと
私は教育をろくに受けていないせいもあるのですが、
少しでも複雑な数式とかグラフがまったくダメなのです。

しかし、そこからでる結果を感覚的に知覚できます。
買い物中にバッグが重いと感じれば、
最適なテンションがかかる位置が解りますし、
料理中の物質の変化に関係する原子や分子の移動や、
ガスコンロから出る炎の中の
エネルギーの流れなどが想像できます。
(しかも概ね正しい)

(ヒデさん)

まさにこのヒデさんは「あちらの世界」と会話する言語を
持った方なんだと思います。

この「わかる人と」「わからない人」のギャップを
指摘したメールも頂きました。

「理系科目は好きだったけど苦手だった。
でも理系分野への興味は捨てきれず
現在は科学雑誌などの記事の翻訳をしている」
という英玲さんのからです。
英玲さんは、「生まれつきの完璧な理系人間」である
ご夫君とご子息の会話を聞いて、こう思うのだとか。

こういう完璧な理系人間には、
そうじゃない人に理系分野の面白さを解説することは
むずかしいんだろうなぁ‥‥とつくづく思います。
理系の面白さを直感的に理解できる人と、
そうじゃない人との間に大きな溝ができてしまう。

(英玲さん)

「教わる側のわからない」気持ちが「わからない」人が
モノを教えることはとても難しいと
教える人がキライだとその科目もキライになる?!
でも書きました。

教える側は
基本的に理系科目が好きだったり
得意だったりする人たちです。
このようなキライになる「きっかけポイント」は
想像もつかないことが多い。

実はですね
こんなテーマで皆さんのご意見が欲しいと思ったのは
畑村洋太郎著 『直感でわかる数学』
という本を読んだことが動機の一つです。

この著者の畑村先生は
現在の勤務先の大学の学生さんをつかまえて
足かけ2年にもわたって数学塾をやったそうな。
そして、彼らから出た
「数学に対する鬱憤や文句」から触発されて
「数学の本質をわしづかみにできるもの」
を考えたことがその本に織り込まれているとか。

だから、この本には
「『自然対数』など我々にとってはむしろ不自然である」
「『微分』『積分』なんて異星人のことば」
なーんて「よくぞ言ってくれた!ぱちぱち」
なことが満載!!

そして、この本にはこんなことも書かれています。

誤解を恐れずにあえて言おう。
読者のみなさんのうち、おそらく9割の人は、
学校を卒業したら微分方程式など
金輪際、未来永劫、解かない。
これは大学で30年以上教鞭をとり、
また工学研究者として生きてきた私の、
経験と見聞にもとづく確信である。
(中略)
ならば勉強しなくてよいのかといったら、
そんなことはない。
微分方程式は、解きはしないが、
その考え方は必要なのである。

(畑村洋太郎著 『直感でわかる数学』より)

「こんな科目、何の役に立つんだ」という疑問を
小学生の頃から持っていた人も多いようです。
でも、こんなご意見も。

すごく使うわけじゃないけど
知ってるとちょっと面白いこと

(春巻きさん)

社会に出て、理系の発想が、これほど
必要になるとは思ってもいませんでした。

(mihoさん)

数学が日常生きるのに役に立たないとは思いません。
問題の回答を導く過程で行う思考は
自分の抱えているトラブルを解決したり
物事を捉える上で必要だと思います。

(あいみさん)

「直接は役に立たないかもしれないけど
考え方は役にたつかもよ」
という「ぶっちゃけたところ」
を教えてくれてもいいのよね。うん。

世の中「理科離れをどうするか」
などなどケンケンゴウゴウの議論が
されていますが(そうか?)
それは基本的には「理系科目大好き」だったり
「得意」なひとたちの「閉じたところ」で
されているものです。
ですから!皆さんからいただいた
この意見はとても貴重であり
カソウケンの財産であると考えますっ。

残念ながら今回ご紹介しきれなかった方の
ご意見もありますが本当にありがとうございました〜。
今後の連載に活かしていきたい! と思っています。



参考文献
直感でわかる数学 畑村洋太郎 岩波書店

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2005-06-03
-FRI


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