主婦と科学。 家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所 |
研究レポート70
ほぼにちわ、カソウケンの研究員Aです。 5回にわたっておおくりしている「電磁波の科学」。 今回は第4回です。 多くの家庭の台所にあると思われる「電子レンジ」。 これについて科学してみます。 電子レンジも「電磁波」を利用した製品ですので。 はじめに、これまでのおさらいを少しだけ。 前回までに「電磁波といってもいろいろある」 そして「波長によって性質も呼び名も違う」 ということを書いてきました。 第2回に載せた表をもういちど載せますね。
今回のお題である電子レンジは、この一番下にある マイクロ波を利用したものです。 「あっ」という間に食品を温める機械ですから もっとエネルギーが大きいかと思いきや、 「可視光」に比べてもずいぶん小さいもの。 では、なぜこのマイクロ波が 便利に食品を温めることができるのでしょうか? そのあたりを探ってみましょう〜。 そこで、オーブンと電子レンジを比較してみます。 オーブンは、ヒーターがまず庫内の空気を あたためますよね。 その熱くなった空気を通じて 熱が食品に伝わり、食品を外側から加熱します。 つまり、熱源と食品の間にある「空気」が 「熱の運び屋さん」になっているというわけ。 一方で、電子レンジは食品を 「直接」温めることができます。 マイクロ波の発生源から食品の間に 「空気」があったとしても関係なし。 電子レンジの場合は空気が 熱の運び屋さんではないのです。 なぜかというと マイクロ波はいきなり! 食品の中の 「水分」に働きかけるから。 電子レンジに使われるマイクロ波の振動数は 2450MHzになります。 この領域の電磁波は「特に」水によく吸収され 水分子を1秒間に24.5億回振動させます。 それはもう大変な話です。 それだけ振動させられるのですから 大きな摩擦熱が発生します。 これによって発熱する原理を使ったのが 電子レンジなのです! 食品の中の水分にダイレクトに効くから 電子レンジはスピード加熱ができる! というわけ。 オーブンのように、 「空気」にエネルギーを奪われる、 というムダがないのです。
さて、このマイクロ波ですが、 食品に直接届くといっても 「表面だけ」に届くのではありません。 このときの浸透の距離は約3センチほど。 中心部の方が先に加熱されることもあります ‥‥なんと書かれても、まるで実感がありません。 というわけで、実験してみました! じゃがいもを「普通の鍋」と「電子レンジ」という 2通りの方法で茹でてみて その熱の通り方を比較しました。 じゃがいもは生の状態だと不透明な色をしていますが 火が通ると半透明になるから一目瞭然!のはず。
ちなみに、今回の実験で使ったジャガイモは いずれも長径(と呼んで良いのか?) 6cm前後のものです。 まずは【実験1】の普通に茹でたときの結果です。 左下から時計回りに、5分・10分・15分加熱したもの となっております。 見事に周りから半透明になっていきますね。 写真がいまいちなのでわかりにくいですが 15分では全体が茹で上がっています。 そしてこちらが【実験2】電子レンジの結果になります。 普通に茹でたときと明らかに結果が違う〜。 逆に、中心から加熱されていることがわかります。 確かに、マイクロ波は表面だけ加熱するのではなく 食品の深いところまで届くことがわかりました。 この実験結果に、すごーい!おもしろーい! とはしゃいでいた研究員Aでしたが この後、6個のジャガイモの行方に 頭を悩ませる羽目になるのでした。 しかも生煮え状態のものがほとんどだし!
さて、電子レンジでは 「生卵を入れてはいけない」 という鉄則があることを 多くの皆さんがご存じかと思われます。 卵には、殻の内側&黄身の周りに「膜」があります。 それらの膜の内側にある水分が水蒸気になると 体積は急に大きくなり (水→水蒸気になると、1,700倍に!) 膜を破って破裂してしまうのです。 そんな電子レンジと相性の悪い卵のはずですが 「一工夫」して電子レンジで ゆで卵を作るレシピを見つけました。 調子に乗って、これも実験してみました。 その方法が載っていた 「電子レンジ『こつ』の科学」によると 実験の「レシピ」は次の通り。
はい、実験です。
さて! 卵をアルミホイルから出して 水に入れて冷やして、殻をむいてみると ‥‥あああ〜っ!まだ白身が固まりきっていない!
食べてみた。 もぐもぐ‥‥まあ、普通においしい。 でもねえ‥‥なんといいますか、 普通に鍋で半熟卵作った方がラクなのでは‥‥。 自由研究のネタとしては面白いかもしれないけど 普段のお料理には向かないレシピかも、と さすがの研究員Aも思うのでした。
とはいえ、このゆで卵実験は電磁波の 大事な特徴を教えてくれる実験であることは確かです。 それは金属は電磁波を通さない、ということ。 金属の周りの電子たちと、電磁波を作っている電子たちが 電気的に反発し合って寄せ付けないからなのです。 この実験で「アルミホイルに包んだ卵」には 直接マイクロ波が届かず、破裂することはありません。 でも、普通にコップに入った水を 沸騰させることはできます。 だから、この実験での卵は 「沸騰したお湯の中で茹でている」 という状態になるわけです。 だから、鍋で卵を茹でているのと同じことですね。
さて、実験の副産物である6個の生煮えジャガイモ。 3個はポテトサラダに、3個はフライドポテトにと 変身しました。 ムダにならなくてよかったよかった。 ‥‥と考えているあたりがカソウケンの スケールの小ささを物語っています。 (つづきます!) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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2005-12-09-FRI
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