主婦と科学。 家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所 |
研究レポート71
ほぼにちわ、カソウケンの研究員Aです。 以前、仙台に住んでいたときのこと。 東北の恒例行事でもある「芋煮会」というのに 参加したことがあります。 芋煮会というのは秋に河原に集まって 鍋料理を作って食べる、というもの。 そのとき一緒に、炭火で秋刀魚を焼いたのですが これがすごーーくおいしかった! 外で、大勢と一緒に食べたからでしょうか。 もちろん、それも大きな理由でしょう。 でも、炭火焼きにはそれ以外にも おいしくなる秘密があるようです。 今回のキーワードは「赤外線」! 炭火焼きにまで電磁波が関わっているのです。 それでは、「電磁波の科学」シリーズの 最終回である今回は この赤外線を科学してみることにしましょう!
「料理」と「熱」は切っても切れない関係です。 実は、この熱の伝わり方には3種類あります。 少しだけとっつきにくい内容かもしれませんが 軽く読み進めてくださいませ。 その3種類とは‥‥
身の回りにある「温まる現象」を見つけたら 「これは放射、それとも対流?」などと考えてみるのも 面白い‥‥かもしれません。 例えば、太陽の熱が私たちの身体まで届いているのは 「放射」によるもの、なんて具合に。 さてさて、今回のお題である赤外線は どんな電磁波かといいますと‥‥ 私たちの目に見える「光」、つまり可視光ですが そのお隣にある電磁波になります。 可視光は波長の短い方(上の図では左)から順に 赤・橙・黄・緑・青・藍・紫 ‥‥というように並んでいますね。 赤の波長が一番長いのですが それよりも波長が長くなると 私たちの目には見えなくなります。 これが、赤外線です! 100μm(ミクロン)くらいまでの波長の電磁波を 赤外線といいますが そのうち、2.5μm以下を近赤外線、 25μm以上を遠赤外線と呼ぶことがあります。 この赤外線、エネルギーは小さいのですが ちょうど物体の熱運動を起こすことができる 波長の電磁波です。 だから赤外線にあたるとモノが温かくなるので 赤外線は「熱線」なんて別名があります。
赤外線のことがとりあえずわかったので 次は炭火とガスの火の違いを 考えてみることにしましょう。 赤外線の量を比べてみると、 炭火からはガスの火の数倍の 赤外線が放出されています。 赤外線には、高い加熱効果に加えて 食品表面に焦げ目をつくる という性質があるので、さっと熱を通して 旨味を閉じこめることができるのです。 だから、炭火で焼いたものは美味しい! また、ガスの炎が水分を含むのに対し 木炭は水分を含まない。 だからカラッとした焼き上がりに! ちなみに‥‥ 赤外線はどんな物体からも放出されていて そして「絶対温度」の4乗に比例します。 絶対温度というのは「摂氏温度+273℃」という数字。 単位はK(ケルビン)です。 だから、絶対零度(-273℃)でない限り どんな物体からも赤外線は出ているわけです。 その物体の温度が高ければ高いほど 大きなエネルギー量の赤外線を放出している! 上でも例にあげた太陽ですが 太陽の表面温度は5,800K(ケルビン)。 さすがに高温だ!(当たり前だ!) だからこそ、大量の赤外線を放出して 地球や私たちを温めているのです。 例えば、高熱を出している人のそばでも 熱っぽさが伝わりますが、これも赤外線が 出ているから、なのです。 炭火焼きに使う炭は、うちわで扇いで空気を入れたときは 1000℃にもなるとか。これもなかなかの高温っぷり。 そんな炭からは赤外線が多く放出される、というわけ。 「なんとか炭」を水に入れておくと 遠赤外線効果で水がおいしくなる! ‥‥なんて触れ込みで売られている商品がありますが これは「?」な話です。 常温でしたら、炭から出る赤外線はわずかな量なはず。 注)炭による吸着効果で 水の不純物が取り除かれて 水が美味しくなっている場合はある。 という具合に、赤外線まわりにはちょっと首をひねりたくなる 「科学的?」なフレーズが溢れています。 健康グッズも、生活用品も、衣料品にも‥‥。 これの正誤を判断するのは難しいのですが、上に書いた ・どんなものからも赤外線は出る。 ・赤外線のエネルギー量は温度の4乗に比例。 ってことを思い出してみれば 判断の助けになる‥‥かもしれません。 赤外線は、なにも「なんとか石」やら 「なんとか炭」だけから 「特別に」出ている 「不思議な」光線ではないのですから。 5回にわたっておおくりしてきた電磁波シリーズも 今回が最終回。 意外と身の回りで大活躍ですよね、電磁波って。 電磁波に対して「お近づきになりたくない感」を 抱いていた方のココロに 少しでも違ったイメージを植え付けることができたら 研究員Aとしてはとても嬉しいなーと思っております。
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2005-12-23-FRI
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