主婦と科学。 家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所 |
研究レポート81 レーザー脱毛の科学。 ほぼにちわ、カソウケンの研究員Aです。 先日、思い切って 前々からやりたい! と思っていた 医療レーザー脱毛に行ってきました。 かなり前から所長(夫)に 「やりたいー」と言ってたんですが 「レーザー? うちの研究室にあるから 僕がやってあげようか? あはははは」と。 そんなのぜーったいヤダっ。 「レーザー脱毛ってどれだけの痛いの?」と ちょっと臆病者になってしまった研究員Aですが 肝心の痛みはよく言われるように 「輪ゴムでぱちんとはじく」程度。 陣痛や出産の痛みに比べたら なんでもないですって、おくさま! それに歯医者の方がよっぽど怖い〜。 「な、なに? この音は? 次はどんなのがくるの? きゃー」 という恐怖がない。 レーザー脱毛の痛みはひたすら同じだもの。 先が読めないということが恐怖に繋がる‥‥ という真理を学んだ研究員Aでありました。 レーザー脱毛と歯医者から(かなり単純)。 ここで話が終わってしまったら 単なる「レーザー脱毛体験記」になってしまうので 少し科学らしい話に移りましょう。 レーザーってよく耳にするし お医者さんや歯医者さんでもとかでも使うけど 太陽光や蛍光灯など「ふつうの光」と何が違うのでしょう?
まずはレーザーの「ふつうの光と違うところ」から お話ししてみたいと思います。 (1)まっすぐ進む 専門用語では「指向性」といいます。 普通の光だったら、光が光源から 離れるにつれて広がります。 懐中電灯の光を暗闇で照らすと そのことはよくわかりますよね。 でも、レーザーから出る光は その光方向だけに進むビームになるのです。 (2)コヒーレント性 おっと、聞き慣れない言葉が出てきました。 でもこれこそ「レーザー」がレーザーたるゆえんであり 面白い話なのでちょっと研究員Aも頑張ってみます。 光は波の性質を示します。 光は電磁波の一種なのですが そのところをもう少し詳しく知りたい方は 「主婦と科学」 研究レポート67 「電磁波って、そもそも、なーに?!」 に目を通していただければ幸いです。
光の波の幅(波長といいます)によって 光の色が決まります。 レーザー光はこの波長の同じ光が 「足並みを揃えて」出てくるのです。 足並みが揃っていることを 「位相が揃っている」といいます。
普通の光、例えば太陽光などは いろんな波長(いろんな色)の光が 足並みを揃えずに好き勝手に光を放出しています。
そして、レーザー光のように 足並みを揃えて出てくる光は 「コヒーレントな光」と呼ばれます。 (詳しくは「時間的コヒーレンス」と 「空間的コヒーレンス」という話があるのですが、 今回は「空間的」のほうに話を絞ります) (3)エネルギー大 普通の光よりエネルギーが集中しているのは (1)のまっすぐ進む、からもわかりますよね。 紙に黒い点を描いて そこに虫めがねで光を集中させて 焦がす‥‥という実験(遊び?)をした 記憶のある方は多いかも。 その虫めがねなんて使わずに 広がらずまっすぐ進む光が出てくるレーザーは エネルギーが集中して大きい ってことはよくわかりますよね。
では、レーザーがコヒーレントであることは どんないいことがあるのでしょうか? ふたつの光を重ね合わせると 「干渉」ということが起こります。 つまり光の波の足し算ですね。 ふつうのコヒーレントでない光と コヒーレントなレーザー光を足し算してみましょう。
光は波の性質があるので そのパワーはプラスになったり マイナスになったりと変化します。 ただ足しただけではエネルギーがばらばらで 図3のようになってしまいます。 波長も位相もばらばらな光を足し算すると結果的に 全体としては光の位相もパワー(振幅といいます)も 不規則に変化します。 でも、位相が揃ったコヒーレントな光である レーザー光であればばどうでしょう? 足したら効率よくパワーが増して こんなにエネルギーの強い光になるのです (ちなみに、光の上下の幅=振幅が 光のエネルギーの大きさを表わします)。 そしてレーザー光は人工的に制御して操ることができる! レーザーはトランジスタと並んで 20世紀最大の発明ともいわれています。 医療の分野だけではなく CDやDVDの読み取りにも使われていますし バーコードスキャナにも。 プレゼンテーション用のレーザーポインタを お持ちの方も少なくないかも。 ちなみに、所長(夫)と研究員Aの結婚式の時 私のいた大学の研究室から頂いた電報に 「ふたりの愛はコヒーレント」 なーんて書かれていて、新郎新婦は大爆笑でした。 ふたりともレーザーに関係する研究をしていたもので。 でも‥‥ですよ。いくら「波長のあったふたり」でも コヒーレントでなくなってしまったら どうなってしまうでしょう? 例えば位相がこんな関係になってしまったら パワーを強め合うどころかゼロになってしまうのです。
だから、波長が合っていたとしても 位相を合わせるのは努力が必要。 恋人同士でも、夫婦間でも位相を合わせるよう工夫して 「コヒーレントなふたり」になれるように 努力を怠っちゃいけない、ってことですね‥‥ と殊勝に反省をしてみる研究員Aなのでありました。
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2007-01-26-FRI
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