主婦と科学。
家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所

研究レポート84 女グセが悪い暴言家
その3 アインシュタインの奇跡の年。



kasoken アインシュタインの人生から消えた娘。

とりあえず大学を卒業したアインシュタイン。
彼は母校の助手のポストを狙っていたのですが
同期がみな助手として採用されたのにも関わらず
アインシュタインだけがはじかれてしまいます。
これはアインシュタインが
教師に敬意を払わないなどの素行の悪さが
主な原因だったとか。
無職のまま放り出されてしまった彼は
その後2年間定職に就くことができませんでした。
その間、先の見えないまま家庭教師などをして
厳しい経済状況で食いつなぐことになります。

このような状態では
ミレヴァと結婚することも叶いません。
相変わらず、アインシュタインの両親
(特に母親)は大反対していますし。
そんな状況を見かねて
大学時代の友人グロスマンが奔走してくれ
アインシュタインはようやくスイスの特許局に
職を得られる見込みができたのですが‥‥。

この若い恋人同士にとって
ある決定的な変化が起こります。
それはミレヴァの妊娠です。
まだ結婚していないふたり。
しかも、当時の保守的なスイスでは
非嫡出子の存在は公的な職業に就くのに
不利だったのです。
そこで、アインシュタインたちは
リーザルと名づけられた
生まれたばかりの女の子を
養女に出すことに‥‥。
その後、リーザルは行方知らずとなり
数ヶ月もするとアインシュタインの人生から
抹殺されてしまいます。
ミレヴァの精神的負担は深く
このことは彼女のトラウマとなりました。

kasoken 1905年、奇跡の年。

最初の娘を手放すという代償もあり
彼はスイスの特許局の三級審査官という職を
得ることができました。
研究者ではなかったので
アインシュタインはこの職に不満を抱いていた、
という書き方がされることがありますが
当時の手紙などを見ていると
大いに喜んでいたという様子が伺えます。

まず、彼にとって都合の良いことに
この仕事は忙しい職場ではなく
研究の時間がふんだんにありました。
そして、特許審査という仕事は
しばしば興味深いアイディアに出会うことも。
そんな環境のもと、アインシュタインは
「物理学界の革命となる」3報の論文を
次々と世に送り出しました。
その内容は「光電効果」「ブラウン運動」
「特殊相対性理論」と、どれひとつとっても
単独でノーベル賞に値するくらい!
このときアインシュタインはまだ26歳。
そして、1905年の春から夏にかけて
たった4ヵ月の間の偉業です。
この年はアイシュタインの
「奇跡の年」と呼ばれています。
これを発表したのが、特許局の審査官という
「学界に属していない」
アマチュアだったということが
周囲にとってまず驚きだったようです。

ちなみに、E=mc2という
アインシュタインの有名な式があります。
これは、このとき発表された
特殊相対性理論の中で導出された式です。
別名「質量とエネルギーの等価性」。
簡単に言ってしまえば
「ある質量が消失すると
 それに相当するだけのエネルギーが生まれる」
という意味。
この式が、原子爆弾に発展するのですね。
核分裂の反応のとき
反応後にある程度の質量が消失します。
その消失した質量分のエネルギーが
莫大なものとなり
爆弾として利用される、というわけ。
ある科学の大発見が軍事利用に使われてしまう
‥‥という悲しい例は、歴史上いくつかありますが
この式こそ、その最たるものかもしれません。

kasoken 結婚5年で、女性トラブルが!

この「奇跡の年」の2年前
アインシュタインの父は死の間際に
ミレヴァとの結婚を許し
ようやくふたりは結婚することになりました。
結婚生活の当初は順調だったようで
新婚夫婦はお互いに満足していたようです。
そして、間もなく長男である
ハンス・アルベルトが生まれます。
アインシュタイン夫妻の結婚生活は
5年ほどの間は良好だったようです。
でも、ここで夫婦間にトラブル発生!
「奇跡の年」の論文で
ようやく注目を浴び始めたアインシュタインは
ようやくチューリヒ大学の准教授に
任命されることになったのです。
そのニュースが地元の新聞に掲載されたのですが
それを見たアネリーという女性から
手紙が届きます。
アネリーとは大学の休暇中の浮気相手だった美女。
アネリーは既に人妻だったのですが
想い出に浸った二人の間で
甘い言葉の手紙がやりとりされます。
その手紙がミレヴァに見つかって一騒動!
だってねー、そりゃねー、
自らの学者としての夢を投げ捨ててまで
献身的に尽くしている夫が
かつての浮気相手と
いちゃいちゃしているんですもの。
それはミレヴァが怒っても仕方ないって話でしょ。

この「騒動」は夫婦間で尾を引くことに。
いえ、むしろ破綻しかけていた結婚生活が
浮き彫りとなった
ひとつの出来事だったといえるかも。
ふたりの生活は当初はうまくいっていましたが
アインシュタインが学界で
認められるようになるに従い
「研究の右腕」だったミレヴァの存在は
不要になっていきます。
すると、アインシュタインは
「糟糠の妻」の存在にうんざりし始めるように。
身勝手な話のような気がしますが‥‥。
それに、ミレヴァも
夫は憧れの科学の世界へと
どんどん旅立っていくのに
自分は取り残されていく一方。
精神的に満たされない彼女は
陰気な女性になっていくのです。

このような不和があったにも関わらず
(例の「騒動」の仲直りのため、という説もあり)
続いて次男のエデュアルドが産まれます。
ミレヴァは、二人の子供の育児に没頭し
そしてアインシュタインはそれをいいことに
家庭から目をそらし
ますます仕事へ専念していきます。

(つづきます!)




book
参考文献
  『裸のアインシュタイン』
 R.ハイフィールドら著 徳間書店

『アインシュタインの恋』
 D.オーヴァーバイ著 青土社

『アインシュタイン150の言葉』
 J.メイヤーら編 ディスカバートウェンティーワン


2007-12-19-WED


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