「とっくに知ってるよー!」って人も、 たくさんいるとは思うんですが。 いま、ひろく「デザイン」の分野で注目を浴びる KIGI(キギ)のふたりを、紹介します。 「ほぼ日」からデビューする 洋服ブランド「CACUMA」を手がけていたり、 気仙沼の日本酒の リニューアルプロジェクトに関わっていたり。 今後、ちょくちょく「ほぼ日」に ご登場いただくことに、なっているのです。 そこで、はじめての人には「はじめまして」の、 おなじみの人には「あらためまして」のご紹介を兼ねて 糸井重里と対談していただきました。 商品企画で鍛えられたこと、 広告とデザインの関係性、「はたらくこと」とは。 濃くて密な内容なのに、どこか、 仲のいい「きょうだい」と話してるみたいになりました。 おもしろいです。ぜひ、お読みください。
第1回 お客さんに見てもらう、ということ。
第2回 しゃべりかけてくるモノ。
第3回 広告「も」デザインの中に。
第4回 あー、終わった。じゃ、次。
第5回 「NAMI」と「UMI」
第6回 「CACUMA」
第7回 きょうだいみたいな、いいコンビ。



糸井 今日、ドラフト代表の
宮田(識)さんのことを書いた本を
たまたま見つけて買ったんです。

『デザインするな』っていうんですけど
もう、タイトルそのものが
おふたりが在籍していたデザイン会社の
「ドラフト」的ですよね。
渡邉 そうですね。
糸井 キギでは言わないでしょ、そんなこと。
植原 いや、言いますよ。
渡邊 言う?
糸井 両方で「キギ」なのに、疑問形なんだ(笑)。
植原 「デザインしすぎ」という意味で。
渡邊 ああ、それはあるかな。
糸井 おふたりが、ドラフトにいながら
自分たちのデザインを続けてこられたのって
宮田さんがそうさせてたわけですよね。

「やめろ」って言わずに。
植原 そうですね。

もう、勝手にクライアントを見つけてきて
仕事にしてたこともあったので。
糸井 それを「放っといた」というか、
わかってて「見逃してた」んだ、宮田さんは。
渡邊 はい。
糸井 そのありがたさというかな、
むつかしさというか、
のちのち、もっとわかってくると思うよ。

だってさ、経営者としたら
なかなかできないことですから、それは。
植原 いや、本当にそうだと思います。
渡邊 ドラフトでは、
1995年に「D-BROS」というブランドを
つくったんですね。

はじめわたしは、
そこに関わる予定じゃなかったんですけど
宮田さんに、
「やらない?」って言われたんです。
糸井 うん。
渡邉 でも「売れないと困るから、いいです」って
言ってみたりして。
糸井 ほんとは、やりたかったんでしょ?
渡邊 いや、わたしのなかの「プロダクト」って
もっと「椅子」とか‥‥
そういうイメージだったんです。
植原 つまり「D-BROS」でつくっている
カレンダーとか、コップとか
フラワーベースとかというよりもね。
糸井 もっと「不自由なもの」というイメージだった?
渡邊 たとえば、こういう「テーブル」とかを
つくれって言われても
わたしたちとは、すこし遠く感じていて。

有名な椅子とか、いろんなものを見ていても
くわしい知識も持ってなかったし。
植原 紙で時計をつくる‥‥みたいな発想は
当時はまだ、なかったですよね。
渡邊 でも、カレンダーづくりをきっかけに
少しづつ、
関わるようになっていったんですけど、
いまにして思うと
「D-BROS」をやらせていただいたことが
すごく、私には良かった。

たぶん、植原にも良かったと思います。
植原 うん。
糸井 商品企画というのは
あたまのトレーニングからちがうでしょう。
渡邊 ぜんぜん、ちがいますね。
糸井 クライアントがいるわけじゃないし。
植原 そう、デザインの考え方としては
ベクトルが「内側」に入っていきますよね。
糸井 まずは「自分のやりたいこと」を
探せないとダメで。
植原 そうそう、そうなんです。
糸井 そこは「ほぼ日」と一緒なんですけど
「タレント」とか
「写真家」に頼れないじゃないですか。
渡邊 はい。
糸井 その仕事は、どれくらいやってるんですか?
渡邊 1997年から、です。
植原 僕は、1999年から。
糸井 その「長さ」も「ほぼ日」と同じだ。

でも、デザイン会社のなかに
そういう商品企画の事業をつくるっていうのは
当時、すごいことでしたよね。
渡邊 そうなんです、すごかったんです。
糸井 率直に表現しちゃいますけど
「黒字」にするのだって、苦労するはずだから。
植原 はい、黒字になる商品もあれば、
ならない商品も、当然あって。
糸井 おそらく、ドラフトの他の広告仕事にくらべたら
「儲け」としては比べようもないと思うんだけど。
植原 ええ。
糸井 でも‥‥やって良かったんですよね、きっと。
渡邊 はい、良かったです。
植原 デザイン業界でも、話題になったんですね。

良重さんの作品がADC賞をとったり、
次の年は、ぼくのガムテープが受賞したり。
糸井 ああ、そうなんですか。
植原 だから、もし話題にもならなかったら
辞めていたかもしれないです。

でも逆に言えば、話題になったからこそ
続けざるを得なかったというか‥‥。
渡邉 うん。
糸井 とにかく、
お客さんに「見てもらう」っていうのは、
すごいことなんですよね。
渡邉 本当に、そう思いました。
<つづきます>
2013-06-20-THU