本番直前! 準備がゼロでも‥‥まだ間に合う! 金環日食すべりこみ講座。 安全に楽しむためのポイントを 国立天文台・小野智子さんにうかがいました。


観察するときの注意点は?
── それでは最後に
今回の金環日食を安全に楽しむために
「観察するときの注意点」
あらためて、
お聞かせいただけませんでしょうか。

とても、大事なことだと思いますので。
小野 わかりました。

まず第一に
太陽を直に見ないことですね、やはり。

金環日食に限らず、太陽を観察するときには
かならず日食グラスなど
太陽を観察するための遮光板を使いましょう。
── はい。とても重要なことですね。
小野 また、望遠鏡、双眼鏡で太陽を見ない
ということは
わりと常識として知られていますよね。

でも、意外に盲点なのが
金環日食の写真を撮ろうとして
カメラのファインダーを覗いてしまう
ということ。

カメラの光学ファインダーというのは
「ちっちゃな望遠鏡」ですから、
同じように、目にとっては非常に危険です。
── たしかに、デジタル一眼レフカメラが
身近になってきているし、
気をつけていないと
うっかり、やってしまいそうですね‥‥。
小野 望遠鏡や双眼鏡で太陽を観察するとき、
あるいは
カメラで太陽を撮影するときは、
かならず対物側、つまりレンズの先端
専用の減光フィルターを装着すること。

また、最近のデジカメには
たいがい「ライブビュー機能」がありますから
ファインダーは覗かずに、
カメラ裏の画面で
太陽を確認するようにしてください。
── ちなみに、今回の中継コンテンツでは
読者からの写真投稿
受け付けたいなと思っているのですが、
携帯やスマホ
金環日食の写真を撮るときって‥‥。
小野 携帯やスマホのカメラのレンズの前に
日食グラスをかざせば、撮影できる
と思います。

その際、重要なのは
かならず
太陽は携帯の画面で確認するということ。
── ここでも「太陽を直に見ない」が重要、と。
小野 その他にも「道路上で観察しない」など
安全のために
いろいろお伝えしたいことがあるのですが、
動画にまとめてますので、ご紹介しますね。

トータルで13分くらいのものなので、
本番の前に、ぜひ、見ておいてほしいです。

‥‥というか、今、見ますか?
── 見ましょう。

(というわけで、一同、しばし見る。
 みなさんも、ぜひごらんください)
  (動画、見おわる)
── ありがとうございました。

気をつけるべきポイントが
まとまっていて、わかりやすい動画でした。

でも‥‥あたりが暗くならないんですね、
金環日食って。かなり意外でした。
小野 ええ、太陽が完全に隠れる皆既日食の場合、
日が落ちたように暗くなるのですが
金環日食では
太陽は月の周囲からはみ出していますから。

動画のなかにもあったとおり、
太陽って
1%でも見えていれば明るいんです。
── 太陽って、すごいんですね‥‥。
小野 計算してみたら、太陽のあかるさというのは
満月のあかるさの約46万倍でした。

金環日食のあかるさは、その1割なので、
満月の約4万6000倍です。
── へぇ! そりゃあ、あかるいわけですね!

でも、さっきの動画、見てよかったです。

日食グラスのつけかたで
「下を向いて日食グラスをつけてから
 太陽のほうを見る」

とか、知ってなきゃ、できないですもの。
小野 金環日食の最中の「木漏れ日」
おもしろそうでしょう?
── はい、金環日食そのものの写真だけでなく、
全国の読者のみなさんから
金環日食中の木漏れ日の写真
ぜひ、投稿していただきたいなと思いました。
小野 ピンホールをつくって遊んでもいいし、
金環日食って
いろんな楽しみかたがあるんですよ。
── そう思いました。

本番はあっと言う間なんでしょうけど
思う存分、楽しみたいなと思いました。
小野 はい、私も。
── 本日は「金環日食」とは何か、
そして
日本のどのへんで観測したらよいのか、
さらには
観察するときの注意点にいたるまで、
いろいろ教えていただき
本当に、ありがとうございました。
小野 いえいえ、こちらこそ。
── これで、われわれ「ほぼ日」乗組員もふくめ
金環日食について
今まで、あまり予習や準備をしてこなかった人でも
来週月曜日・5月21日の朝
楽しみに待つことができるのではないかと。
小野 お役に立てましたら、うれしいです。

繰り返しになりますが
まだ日食グラスをお持ちでなければ
ぜひ、はやめに入手しましょう。

そして、この週末のあいだに
観察場所の見当をつけておくことも重要です。
── そうか、本番は僅かな時間ですものね。
小野 はい。あ、そうそう‥‥これ。
── わ、金環日食。

『太陽金環蝕の圖』 所蔵:国立天文台
小野 明治時代の錦絵なんです。

1883年、北関東で
金環日食が観測されているのですが、
そのときに描かれたもの。
── なんか、「月の影」と「金の環」の「色」が
本当の金環日食と、さかさまですね。
小野 そうそう、そうなんです。

というのも、
これは、金環日食が起こるまえに
これから起こる日食を想像して描いた錦絵、
なんですって。

だから、
いろいろあべこべな絵だったようです。
── へぇ、想像図ですか!

でも、みんなで空を指さしたりして
当時の人びとが感じていた「不思議な気分」が
すごく伝わってくる絵ですね‥‥。

いやぁ、ぐっと楽しみになってきました!
小野 はい、みんなで安全に、楽しみましょう。
 
<終わります>


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