食毒不明。疑わしきは食せず。
バライロウラベニイロガワリ
毒
写真と文章/新井文彦

ぼくは森へ行くと、きのこばかり探しているので、
「きのこ目」がどんどん強化されていき、
きのこというきのこに、つい反応してしまいます。

一概に、きのこと言っても、
形も、大きさも、色も、本当にさまざまです。
あまりに頻繁に見つかるきのこに対しては、
慣れちゃうというか、感動に欠けるというか、
またきみか!べつのきのこを紹介してくれたまえ!
という気になったりもするのですが(笑)、
しかし、そこは、他にはない大自然を誇る阿寒の森。
前後に、上下に、視線を1m移動しただけでも、
森の雰囲気が思いの外がらっと変わって見えるので、
写真撮影的には、常に新鮮な気持ちで臨めます。

ぐるっと見渡すと、360度、針葉樹の原生林。
加えて、足元には、コケや高山植物。
そんな、緑、緑、緑、緑の森を歩いていて、
この鮮やかな赤いきのこを見つけたときの喜び……。
にやにやするな、という方が無理な話です。
その名も、バライロウラベニイロガワリ。
美しいような、くどいような、
何とも言えない名前がつけられておりますな。

バライロウラベニイロガワリは、夏から秋にかけて、
主に針葉樹林の地上から発生する中型~大型のきのこ。
傘は鮮やかな赤、柄も同じく赤、傘の裏側も赤、
と言いたいところですが、正確に言うと、
柄は黄色の地に赤の点々が付いている感じ、
(網目があるタイプ、ないタイプがあるとか)
傘裏の管孔は、黄色で孔口が赤色。
これがどうして、なかなか複雑な色合いです。
触るとあっという間に青く変色します。

昔は、イグチの仲間には毒きのこはない、
なんてことが言われていたみたいですけど、大間違い!
猛毒とは言わないものの、強い毒を持ったきのこです。

かつて、北海道では、少し(4分の1本)食べた人が、
3時間後に、発汗、嘔吐、下痢などの症状を訴え、
担ぎ込まれた病院で意識を失い、
臨死を体験して三途の川を見た、という例があるとか。
(1週間後にほぼ完治したそうですが)
ひいい……。

食べる食べないを別にしたら、
森でこんなに美しいきのこにお目にかかれたら、
ほんと、ラッキーだと思います。
食べずに、見るだけなら、
人生バライロウラベニイロガワリ。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
感想をおくる とじる ツイートする