クマちゃんからの便り

オレの球体


すでに強いヒカリが降っているJR高知駅前は、
出勤時間が終わって疎らだった。
ボンヤリとタバコをのみながら、
高松から迎えに来る石工のヨシの車を待っていたが、
約束までまだ少し時間があった。
ベンチでパソコンを開く。
スパム警告が付いた
ロクでもないメール群を削除していると、
長い英文の重要なメールを、
もう少しで消すところだった。
NYのMorganからで、
<OPEN2003>のカタログに載せる彼の文章である。
英語なぞ読めないが、液晶画面を睨んでいると、
オレのゲージツを正確に理解していることが伝わってきた。
地球上にオレのゲージツを解読するヒトがいることは
少しは嬉しいじゃないか。
いくつかを抜粋すれば

The ability to express fantastic forms
and ideas suggests a kind of Surrealist venture
into time and space,
an extravagant gesture
that seduces the viewer into believing
that art is larger than life.
・・・・
Kuma's mission is to rediscover
what has been lost to art.
・・・・
According to Kuma:
"Life is a battle between flooding imagination
and drying up time."
For the artist, life is a perpetual process of discovery,
of exploration, of developing new imagery,
that opens us to new revelation
about the nature of our universe.
・・・・
This is Kuma's moment,
his revelation, his apotheosis.
In this strange, but enlightened work
that Kuma presents on the Lido
during the occasion of the Venice Film Festival,
we may become aware
not only of the process of cinema,
recent special effects,
and science fiction in film,
but we may also see the positive resonance
that these forms possess.
Kuma's metal sphere is a sign
of vigilance for humanity - to think,
to reason, and ultimately
to feel who we really are.

Robert C. Morgan
Chief Curator, OPEN 2003

ということだ。
<まだ未熟なるピリオド>が走っている海に
想いを馳せていた固いベンチのオレには、
スローライフなぞ無用だ。
香川県の石の町に移動して、
石を削る四国浮遊はまだ少し続く。



『蔓草のコクピット』
(つるくさのこくぴっと)
篠原勝之著
文芸春秋刊
定価 本体1619円+税
ISBN4-16-320130-0
クマさんの書き下ろし小説集です。
表題作「蔓草のコクピット」ほか
「セントー的ヨクジョー絵画」
「トタンの又三郎」など8編収録。
カバー絵は、クマさん画の
状況劇場ポスターの原画「唐十郎版・風の又三郎」です。

クマさんへの激励や感想などを、
メールの表題に「クマさんへ」と書いて
postman@1101.comに送ろう。

2003-07-20-SUN

KUMA
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