黒柳 | 加藤清史郎くん、 すごくかわいかったし、天才だと思います。 ああいうように、世間から評価されてる子どもが 「徹子の部屋」に来てくださったときは、 その子が、 「やっぱりほんとにかわいいんだ」 「ほんとにすごいんだ」 ということをみなさまに わかっていただかなきゃいけない。 さりとて、あれだけの40分ほどの長い時間を 一緒に途切れなく 会話しなくてはいけないのです。 |
糸井 | そうですよねぇ。 |
黒柳 | でね、加藤清史郎くんは ちょっと‥‥フッ(笑)、 前歯が抜けてたんですね。 「歯、どうなさいました?」 「抜けました。 おとなの歯がまだ生えてこないんです」 |
糸井 | うん(笑)。 |
黒柳 | あの子の、大河ドラマの 「こんなとこ、来とうはなかった」 という有名な台詞があるでしょう。 「徹子の部屋」の中で、わりと軽い気持ちで、 「あれ、やっていただいていいですか?」 と、わたし、言いました。 「はい」って、1秒か2秒、 ちょっと間があったんですよ。 |
糸井 | うん。 |
黒柳 | そしたら、突然あの役の子になって、 「こんなとこ、来とうはなかったぁーー」 と、本気でやってくださいました。 それはほんとうにすばらしくて 胸がいっぱいになってしまいました。 立派な俳優さんに、こどもだからって そんなこと、軽く頼んでしまって、 「ごめんなさい」って謝りました。 話してすぐわかったんですけど、 あの子は、あんなにちっちゃくても、 ただ言わされてたりなんか してるんじゃないんです。 |
糸井 | パンダのウェイウェイと同じ。 |
黒柳 | そう。言われたからやってるんじゃない。 「その台詞を言うとき、 気持ちはどんな感じですか」 と訊いたら、 「ぼくがお父さんとかお母さんとか 兄弟と別れて、 知らない人のところに行くんだと思ったら、 すごくイヤだと思った」 だから 「来とうはなかった」 と言うわけです。 |
糸井 | うん、うん。 |
黒柳 | 俳優としてすごいです。 「あなたこれから、 俳優をおつづけになるんですか?」 と訊いたら 「わかりません」 だって。 「なんで?」 「野球選手にもなりたいと思います」 「あなた野球やってるんですか?」 「まだです」 年齢的に小さいから、 野球部にはまだ入れないのね。 |
糸井 | はい、はい。 |
黒柳 | 「じゃあ子役はずっとこれから やっていこうと思うんですか?」 「そうは思っていません」 わたし、びっくりしちゃいました。 こんなにはっきりお利口に、 自分のことをわかっていて、 お話しするんですよ。 ちゃんとした思いで、番組に出ているんです。 |
糸井 | うーん、そうだよなぁ。 |
黒柳 | わたしが小学2年生のときなんか、 ぜーんぜんわけわかんなかったですからね。 大人の前で話をするとか、 まとまった考えなんか、なんにも持ってないで、 ただ飛び跳ねてるだけでしたよ。 ですから、小学校を退学になったというのも いまならよくわかります。 そこからすると、ああいう子たちはすごいです。 |
糸井 | 全体的に、若くして何かを 成している子たちって 「とてつもなく」なってますね。 石川遼くんを見ていても 「どうしてその歳でそんなに」と 思います。 |
黒柳 | うん、うん。 |
糸井 | しかも、いやみがないの。 |
黒柳 | そうそう、ぜんぜんないの。 |
糸井 | 昔だったらああいうこと言うやつって ちょっとイヤな感じがしたでしょう。 |
黒柳 | 「小生意気」とかね。 いまの人たちには、それがない。 どうしてかというと、 彼らはみんな、本心で 発言してるからなんでしょう。 誰のまねでもないから。 |
糸井 | うん。一所懸命やるとああなるんでしょうね。 |
黒柳 | きっとそうだと思います。 |
糸井 | 不良化させたいと思う人だって 周りにはいるでしょうね。 |
黒柳 | たまにはねぇ‥‥だけどまぁ、 「人の上に立つ人は、この世の客に来たと思え」 という言葉があるそうですから。 頑張っていただいて。 アメリカのあの、ゴルフなさる方は‥‥。 |
糸井 | ああ、はいはい。 So many 愛人‥‥がいて。 |
黒柳 | でもまぁ、あれで あの方も人間だということがわかって よかったって、おっしゃる方も多いのね。 |
糸井 | そうですね。 だから、そういうことはきっと、 自然に何かなったときには、 何かなるんでしょうね。 |
黒柳 | うん。 ‥‥すごい会話ね、 「自然に何かなる」って。 |
観客 | (笑) |
黒柳 | いや、すごくわかるんですよ、 そのことをわたしは。 |
糸井 | 何かなったときには、 何かなるんでしょうね。 |
黒柳 | ええ、何かなるんでしょうね。 |
観客 | (笑) |
黒柳 | 人生ってそうでしょう。 漠然としてね。 |
糸井 | 望んで悪いことをしたり、 危ないほうに行ったりしても、 それはそれでつづかないですし。 |
黒柳 | そう、そう。 |
糸井 | 望まないでやったことに 対処することで 自分が何かになっていくこと、 多いですもんね。 |
黒柳 | そうですよ。 いろんな、思いがけない偶然にも ぶつかったりしてね。 |