坂本 一番好きな話はさ、
彼女がさ、字を書き出す前、
3歳くらいとか?
まだ字が書けない時に、
その日あったことを、
ピアノと歌で歌ってたって言うわけ。
両親に。
── えっ!
糸井 (笑)ほんとなんだよね。
ほんとなんだよ。うん。
坂本 それがたぶん、原点だと思いますよ。
矢野さんの。ほんとに天才なんだよ。
糸井 トーキングドラムみたいな人生だね。
坂本 まあ、そうね。
── 教授は、最初会った時に、
ぴゅっと感じたものですか、
天才的なものっていうのは。
坂本 うんうん。最初に会ったっていうか、
レコード聴いた時にね。すごいなと思って。
で、ティン・パン・アレーの関係で会ったら、
会った時にさ、当然音楽から
僕が想像してたのは、
ものすごく色んなこと知ってるだろうと。
ジャズとかロックとかだけじゃなくて、
印象派とか現代音楽とか
わかった上でやってるのかと思ってたら、
全然わかってないんだね。
糸井 うん。
坂本 それにびっくりしてさ。
わかってんだったら、
まだ理解のしようがあるけど、
全然知らないでやってて、
それがそういうもんだからさ、
これは天才なんだと思って(笑)、
びっくりしましたね。
糸井 その(天才の)道にいる人っていうのは、
何人かはいるんですか。
自分の知ってる中で。
坂本 や、あんまりいないでしょう。
糸井 いないよね。
あほなふりして、
影でインプットしてる人っていうのは、
俺はけっこういると思うんですよ。
坂本 それはいるでしょう。
糸井 何やかんや言って、
おまえ知ってるな? っていうのは(笑)、
見えちゃうんですよ。
だから、どう言ったらいいんでしょう、
音楽、僕は詳しいわけじゃないけど、
やっぱり表現だから、
系統樹みたいなものがあって、
坂本 あるある。
糸井 これを何%吸い込んで、
これは消化したから50%みたいな。
で、坂本くんのような人は、
とにかく早い時期から
全部一回知っちゃって、
どう捨てるかみたいな話ですよね。
アッコちゃんはね、手が見えない。
でも、何にもインプットしない
はずがないんでね。
謎ですよね。
坂本 その系統樹が書けないし、
系統立てて何か勉強したこともないし。
糸井 (笑)。
坂本 ただ勘でね、それこそさっきの
耳がいいって話で、
勘でピックアップしてきて
蓄積してきたものが、
ちゃんと系統に、まぁ、
かなり近いっていうかさ、
系統になってるっていうのがさ、すごい。
それ耳だけでやってる。全然頭使ってない。
糸井 うん。
── 教授はそれは憧れるものですか?
坂本 憧れはしないです。
糸井 無闇に歌のうまい
美空ひばりみたいな人がいるじゃないですか。
あの人もなんか、
アメリカ語の歌をものすごい上手に歌うって。
坂本 歌いますね。
糸井 言いますよね。
それ憧れてもしょうがないもんね。
坂本 ただ、できるかできないかなんですよ。
それは。まねしてもできないですよ(笑)。
2006-11-20-MON
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