荒俣 |
今はもう、
ほんとうの完成品を発売する必要が
あまりなくなってきたとも言えますよね。 |
糸井 |
うん。 |
荒俣 |
ぼくたちもそうでしたけども、
若い頃には、人を驚かしたくて
ガチガチにがんばった装丁とか
400ページくらい書いたりいろいろしていて・・・
よく考えたら、1行ですむのにね。
あれはやっぱり無駄だったのかなあ(笑)。 |
糸井 |
ふふふ。
まあ、その時はその時で、
恋愛がなければ結婚がないのと同じように
センスにも「青春」が
必要だったんじゃないかなあ。
自分をふりかえっても、
ガチガチにやっていた時のことは
それはそれでほんとによかったと思うし、
今の若い人も、それに似たようなことを
やっていると思うんです。
だけど、そいつらも、どっかで気づくというか。 |
荒俣 |
なるほど。 |
糸井 |
だから完全を目指したい人は
それでいいと思うし。
だいたい、インターネットに関しても、
ぼくはすべての人にはオススメしてないです。
ただ「使えるよ」と言っているだけで・・・。
要するに、ぜんぶの時間をムダなく
使えてしまうのだから、全員には薦めないです。
「やんないならそれで構わないと思うけど、
やっていいこともいっぱいあるよ。
・・・でも、いっそがしいよ〜〜っ」
いう感じで。 |
荒俣 |
確かに忙しいですすよね。
ただ、24時間体制でやっているところの
ほとんどが、ただ忙しがっているだけという
気もするんですよ。 |
糸井 |
ネットにずっとつながることは、
自分ではコントロールできない
妙なおもしろさがあるから、
思いきってその濁流のような中に
ふみこんでいくんだけども、
濁流には濁流なりの
力の抜き方があるんでしょうね。 |
荒俣 |
それも微妙で、
下手に流れに逆らうと死んじゃうけど、
流れに則してずっと動いていけばけっこう楽しくて
それなりのおもしろさがあると思います。
パーツを使うってことは、
そういうことじゃないですかね。
24時間体制で人格で勝負するのは、無理だから。 |
糸井 |
異性にたとえると、
誠心誠意の恋愛をしようとしたら、
ひとりに1日でさえ、できやしない。
だけども、パーツをつなげれば
愛情が成りたつというか・・・。 |
荒俣 |
それ、大きいですね。ぼくは、
女性にしても男性にしても、
「おともだち」という形態が非常に好きで。 |
糸井 |
ぼくも「おともだち」好きですね。 |
荒俣 |
恋人という関係を持つと、
忠誠を誓わなきゃいけないじゃないですか。
ともだちの場合なら、いいかげんにでも
顔をあわせればああ友達って言える。
おともだちって何十人も作れますから。 |
糸井 |
お友達って、じゃあ「リンク」ですね。 |
荒俣 |
まさに、そうですよ。 |
糸井 |
別の世界を持っていて、
おたがいが王様どうしでいられて。 |
荒俣 |
恋人っていうと、そこで終わりなんですよね。
つまり、人格を所有しなきゃいけないですから。
・・・これは重いですよ。
一方で、おともだちだと
リンクが次々とできていく。
お友達は10人持てるけれども、
愛人を10人持っていたら大変ですよ、そりゃ。 |
糸井 |
大変ですし、破産します。 |
荒俣 |
今までの知の形体って、よく考えると、
愛人を10人持とうとしていたところがあって。
20世紀に脱構築の動きなどの起きてきたのは、
それの大きな象徴だと思いますね。 |
糸井 |
そうですよね。
だけど、商売になるのは、
脱構築の前の段階しかないんです。
ぼくは、できればそこに、
自分の後半の人生をかけてみたいなあというか。
つまり商品の形が変わってきていて、
半端な製品や、単なるホラでしかないものが、
実は次の時代の商品だと証明してみたいんです。 |
荒俣 |
なるほど。
情報化時代だとかいうのは、
商品としてはまさに今言ったような、
実態がなくてウソかホントかわからない、
お腹がふくれるわけではない商品を
売るということですからね。
それをどう売るかが課題ですから。
やっぱり一番大事だとぼくが思うのは、、
そういう中途半端な製品や、
うそかほんとかわからない商品というのは
高級品ではないというところです。
圧倒的に「量」があるから、
10万個でもストックできるんですよ。
虚業と言われていたようなものが
21世紀からの実業になるかもしれないですね。
|
糸井 |
それはほんとにそうですよー。
7、8年前の年賀状で、ぼくは
「夜空の満天の星をつなぎあわせて
ヒシャクだの熊だのを見出した古人達の仕事が
我々の仕事である」と言っていて。。
あれは商品ですからね。
動物占いとかも、あれを考えたことで
それが無数に配られて、
しかも商品でも通ったわけですよね。
そういうものが流通される可能性が
これからはどんどん出ますよね。
・・・あ、ぼくはよく聞かれるけど、
荒俣さんも、インパクを、
どうして引き受けたのって、言われるでしょう? |
荒俣 |
言われますね。
何て説明しています? |
糸井 |
税金を払うようなものだ、と。 |
荒俣 |
ぼくもおなじで、
これはもうしょうがない。
ひとつの運命だと思って
あきらめるしかないなあというか。
ただ、糸井さんも
実はそう感じていると思いますが、
誰かが1回、先に飛び降りないとだめなんですよ。
これ。ええ。お国がやってるからなんか嫌だし、
結局、実際に飛ぶのは我々になるのですけど、
それをまずは見せないと、たぶん
誰も飛びこんでこないような気がしたんです。
だからぼくは、捨石というか。
だから、動機は税金払いですよ。完全に。 |
糸井 |
税金ですよね。 |
荒俣 |
だって、我々は、やっていて
何のメリットもないですもん・・・。 |
糸井 |
敢えて言えば、インパクがあるから
荒俣さんとこういう話ができて、
その時間は漠然とおもしろくすごせるというか。 |
荒俣 |
(笑)うん。
(次回に、つづきます)
|