糸井 |
俺は松ちゃんってビデオの人だと思ってるんですよ。
だけどビデオって本当には商売にならないですよね。
ならないんでしょ? |
松本 |
ならないです。 |
糸井 |
やっぱりそーかー。聞いてみたかったんだ(笑)。 |
松本 |
(笑)いや、ぜんぜんなってないんじゃないですかね。
だから、1980円とか、そんなくらいでやると、
もうけにはなるかもしれないですけど、
セットとかに凝れなくなりますしね。
ぜんぜん商売になってないですよね。 |
糸井 |
ホント! じゃあ「頭頭(とうず)」なんかも
ぜんぜんダメなの?
あれは見るからにいちばん危なっかしいけどね。 |
松本 |
あれはいちばん危なっかしいですねぇ。
あれも商売にはなってないでしょう。
僕、あの、「寸止め海峡」のビデオはもうちょっと
売れると思ったんですけどね。
あんまり売れてないんじゃないですかね。 |
糸井 |
どれくらい? |
松本 |
たぶん、10万本は売れてないと思いますよ。
ただあれはね、高かったのは高かったんですよ。
「寸止め海峡」って1万円ライブのライブを
ビデオにして、1万円以下で売っては、
ライヴに来てくれたお客さんに失礼やと僕は
思ったので、えー、たぶん、なんぼやろ?
「寸止め海峡」は
1万4、5千円はしたんじゃないですか。 |
糸井 |
じゃあ「ビジュアルバム」は? |
松本 |
ビジュアルバムは値段は7千なんぼか……。
どんなもんやろ、2、3万本売れたのかな? |
糸井 |
単行本より売れないんだ。 |
松本 |
そうですね、そんなもんじゃないですかね。
で、1本つくるのに1億円ちかくかかってますからね。 |
糸井 |
あと、それに使ってた時間をほかで稼いでたとしたら、
なんて計算した日には、どえらいことになるよね。
ものすごい時間かかってるよね。 |
松本 |
だから、僕が今いちばん簡単に稼げるのは、
対談とかしゃべったことを活字にして本にしてもらうのが、
いちばん楽で、なぜか、そこそこ売れる(笑)。うん。 |
糸井 |
俺はビデオが本命だと思ってたけど、
ビデオは本命だけど本家にはならないんだな。飯の。 |
松本 |
うーん、そうですねぇ。
ただ、どうやろ、けっこうな赤字、でもない。
だから、赤字じゃないから……。 |
糸井 |
そりゃダメよね、社長としてはダメよね(笑)。 |
松本 |
(笑)ダメですね。
だから、テレビで稼いで、ビデオで、みたいな
ことになるのかもしれないですね。 |
糸井 |
ビデオがちゃんと売れる時代がくると信じたいね。 |
松本 |
うーん、信じたいですねぇ。 |
糸井 |
もしかしたら、それが俺らのいちばん大きい動機かもなぁ。
「こっちのほうがおもしろいんだ」って言いたいじゃない。 |
松本 |
今はテレビであおらないと売れない時代じゃないですか。
CDでもなんでも、できる過程をテレビでずーっと見せて
「さあ発売!」。
それこそ、何位までに入らなかったらバツ、
みたいなことをやるとね、ファーっとついてきますけどね、
勝手にこっちでコントのビデオつくって出しても、
それは……(笑)。 |
糸井 |
勝手に出してるよね。 |
松本 |
出してることすら気づいてない人も
いっぱいいるでしょうし。 |
糸井 |
それはだけど意外だなぁ。
やっぱりそうかって気もちょっとはするんだけどねぇ。 |
松本 |
だから、ねらいをすましてドーンといくと、
だいたい当たらないんですよ、僕はね。
で、本とかは、そんなもん本にしておもろいかぁ?
って思うようなのでも、なんか知らないけど、
えらい売れてる、みたいなことになって。 |
糸井 |
それはねぇ、無理に解説すればできるんだけど、
「古い物のフリをして新しいモノを入れる」ってのが、
売るときには非常に大事なんですよ。
たとえば、ツタヤっていう店があるけれども、
その社長が書いてる本を読んでみると、
「あ、やっぱりそうか」って思うんだけど、
最初は貸しレコード屋からスタートしてて、
ビデオも置くようになって、
で、“ビデオショップ”“レンタルショップ”って
言っても、通じないだろうと思ったから、
“本屋”っていう店を出して、
そこにビデオを置いたんですよ。
すると、本屋なら行ったことがあるから、
敷居がないんですよ。 |
松本 |
(笑)なるほどねぇ〜。 |
糸井 |
で、「この本屋ってこんないいものもあったのか!」
って思ったら、ヤじゃないわけ。
で、松本人志のビデオって、
「オマエらが今まで思ってたビデオとはちゃうで!」
って言いながら出してるから、
「じゃあアタシ縁がないかも……」って思っちゃう。
通行人が入らない仕組みをつくってるわけよ。
だから、単に売れるってことを考えたら、
もうちょっと入り口を古くして、
で、入ってみたらヘンなところへ連れていかれちゃった
という形をとるのが……。
だって、小室さんのヒットにしても、
ダンスミュージックというフロアがあるじゃないですか。
そこから入ってきて、レイブだなんだって言って、
誰でも入れる場所を作ったあげくに、
そこでおなじみのっていうのにニュースをくわえていく。
だから、入り口が新しいものって、
作る本人はそうしたいんですよ。 |
松本 |
なるほどねぇ〜、そうかぁ。
だから、それは、僕が気づくんやなくて、
僕の周りのブレーンの人たちが、
それを気づかなあかんのや(笑)。 |
糸井 |
でもね、それ難しいよ。
永ちゃんなんか、それを本人がやってるわけよ。
「今オマエちがうんだよ」って言って、
「なんかわからないけど、あとで説明する」
みたいにしてチェンジしていく。
だから、あの人はいつも間口が広いじゃないですか、
あれは学ぶところ大きいですよねぇ。 |
松本 |
あの人、本能で動いてから、
後で理屈つけていってる人ですよね。 |
糸井 |
だと思う。
あと、「もし自分が客なら」という立場を
いつももってるよね。
つまり、自分がお客として永ちゃん自身を観たときに、
「カッコイイ!」って言ってくれてる人は
ありがたいと思ってるけど、
「最近、矢沢ちがうんじゃない」って言ってる
お客さんの気持ちになれるんじゃないかなぁ。
「たいへんだ! 曲かな」って思うときは曲つくるし、
コンサートの数かな、と思ったら、数ガツンとぶつけるし。
あと、小さい子が矢沢を知らないと思ったら、
テレビドラマの仕事もやるじゃないですか。
間口がひろい。 |
松本 |
そうですよ。
もうひとり自分がいて、冷静に見てるんですよねぇ。
僕もそうなんですけどね。
だから、こんなこと言うダウンタウンの松ちゃんを
見てるんですよ僕、テレビの前で。
「うわ、そんな言うてほしないな」と思うから、
「もういい、じゃ、やめよう」ってこと、ありますよね。
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