糸井 |
でもね、ダウンタウンとしてどうなっていくか
わからないけども、何やってもいい松本人志っていう
ブランドができるのがいちばんカッコイイじゃないですか。
で、個人なんだけど、組織もうごいてる感じがするし、
今までだと芸人さんとして……、
ま、横山やすしという単独で生きてた人はいるんだけど、
あの人は単独じゃなかったら
もっといろんなことできたのに(笑)。 |
松本 |
ニホンオオカミですからね(笑)。 |
糸井 |
(笑)そう、そう、そのとおり!
だって、あきらかにすごい才能あったし、
努力もしてたし、間口もひろかったですよ。
でも、あの人、組織がひとつもないんですよね。
あの人、たぶんシナジーがないってゆーか、
つかまる力がない(笑)。
(※シナジー→共同作業、相乗作用。経営戦略で、
販売、操業、投資管理などの機能を重層的に活用し、
利益を生みだす効果。)
で、結局どこにシナジーがあったかというと、
ボートレースの人たちとつながったりとかさ。 |
松本 |
あー、そうですよねぇ、うーん……。 |
糸井 |
きっと、俺が釣りの人とだけつき合ってるという
状態になってるのと同じだよね。
でもね、松本はできるよ。ぜったいできるよ。
ちょっとここが下手なんだよなぁって部分は
俺なんかには見えるんだけど、
でもね、ちょうど永ちゃん見てるときと同じでね、
「それもまたいいんだよなぁ」って思っちゃうから、
困っちゃうんですよね(笑)。 |
松本 |
(笑)あの、そうなんですよ。
永ちゃんがあんだけね、あの、なんでしょう……、
綿密な計算もたてつつ、あれだけのコンサートやって
最後パシーッとキメなあかんとこで、
タオル背中かけて終わらなあかん、
スポットライトがスーッと消えていくとこで、
タオルがいかんせん逆さまやったりするんですよ(笑)。 |
糸井 |
(笑)いや、そうなのよ。 |
松本 |
でも僕は、それが好きなんですよ。 |
糸井 |
俺もそうなの。困っちゃうんだよね。 |
松本 |
「あーっ、もぉー」って思いながら、
なーんか「このオッサン!」ってなりますよね。 |
糸井 |
(笑)いちばんすごかったのが、
横浜かどっかでコンサートやったときに、
タオルを腰に巻いちゃったんだよねー。
歌いながら。 |
松本 |
(爆笑)。 |
糸井 |
客としてはさ、
「そ、それはちがう……」って思うんだけど、
もうオッケーなんだよぉ。 |
松本 |
オッケーですよ。 |
糸井 |
それは、松本のお笑いで、
「それは笑えへんで!」ってとこに行っちゃったときに、
オッケーだしちゃうんだよねぇ。 |
松本 |
そうですね。 |
糸井 |
腰にタオル巻くのはだれもマネしなかったよ。
お客さんも、さすがに。 |
松本 |
ああ、僕、それ知りませんでしたからね。
たぶん、矢沢さんも「腰はないな」と思ったんでしょうね。
1回やってみて。
ま、いろいろやってみてるんでしょうね。 |
糸井 |
ついやっちゃったんだろうね(笑)。
ごきげんでやっちゃっただけなんだろうね。
だから、同じように、松本のお笑いで……
ただ松本人志がすごいのは、
ダメってわかったときの逃げ方知ってるよね(笑)。
クリンチとか(笑)。
ゴング鳴るまで待つとか。
それは“ガキの使い”のときのコントが
すっごいじゃないですか。
名クリンチ。 |
松本 |
(笑)うん。うん。そうですね。 |
糸井 |
あれ、芸だよね。 |
松本 |
あれ、芸なんですよ。
ところがそれをわからない人たちがいてねぇ。
「松本は、こたえに困って逃げてるだけや〜」
っていうことを言う、心ない人がいるんですよ。
そーじゃないんですよね。
いかに逃げるか、っていう、いろんな逃げ方を
僕はいろいろ考えてやってるんですけどねぇ。 |
糸井 |
あのクリンチワークはやっぱりさぁ、
サラゴサ選手を見るようなさぁ(笑)。 |
松本 |
そうなんですよぉ。
もちろん絶妙なこたえがあったらそれでいきますけど、
まあ、ないときもあるから、じゃあどう逃げるか
っていうとこでね、遊んでるんですけどねぇ。 |
糸井 |
場そのものがぜんぶお笑いなんだって思ったら、
あんなに計算しつくされた芝居はないと思うんだけど、
わかられないんだよねぇ。
うち、カミさんはあれがいちばん好きみたいだよ。
役者やってる人とかは、失敗する可能性をいつも
もってるじゃないですか。
だから、ごまかすときの笑いとか好きみたいねぇ。
きれいにキマったときとかじゃなくてね。 |
松本 |
そうなんですよね。
僕なんかもそうなんですけどねぇ。
ま、きれいにキマるなら、よっぽどきれいにキマるとね、
それはそれで美しいものなんですけど。 |
糸井 |
でも、あの場からはもう出ないからね。 |
松本 |
そうですねー、そうです。 |
糸井 |
空飛ぶわけじゃないから。 |
松本 |
うーん、そう思いますねぇ。 |
糸井 |
あの小さい小さい舞台できれいにキマったって、
それだけのことだから。
だから、あのクリンチはすごいよなぁ。
あと、それを振りほどく浜ちゃんも、
あれはあれですごい芸だと思うけどねぇ。 |
松本 |
そうですねぇ。 |
糸井 |
ときどき組みつかせたりさぁ、
ときどきほどいたり……、わかってんだろうなぁ。 |
松本 |
そこ、もうちょっと笑って楽しんでほしいんですけどね。 |
糸井 |
もしそれを楽しめって言うと、
時間帯を深夜に連れていかれちゃうんだろうねぇ。 |
松本 |
だから、僕らの世界でいう“すかし”っていうねぇ。
こうもっていって、パシッと落とすと見せておいて、
こっちに逃げるというか、アラッ? といことで、
僕らは笑えるんですけど、一般の人はねぇ、
損したような気になるんですよね。 |
糸井 |
はー、そっかー。
たとえばさぁ、よくスーパーにさぁ、
クワガタムシのプラモデルのついたお菓子とか
売ってるじゃない。
たてまえはお菓子って書いてあるけど、
欲しいのはクワガタムシのプラモデルじゃない? |
松本 |
はいはい、そうですねぇ(笑)。 |
糸井 |
認めろぉ!(笑)
そういうことだよね。
ただね、俺がなんで希望があるって言ってるかというと、
全員がつくる立場にまわる時代になると思うんですよ。
ただサボってる人ってのは、
いなくならざるを得なくなって。
で、時間給で働く人はこっちにいます、と。
一方では、つくる苦労を知ってる人が
どんどん増えてくると思うんですよ。
僕がインターネットやっててなにがおもしろいかというと、
たとえば、シャンプーについてアンケートとると、
ネットでつながってる人たちが、
タダなんだけど一生懸命答えてくれるんですよ。
その人たちは、シャンプーはつくってないけど、
仕事でお菓子つくってたり、コンピュータつくってたり、
車つくってたり、本つくってたりしてるんです。
つまり、自分もお客さん相手に苦労してる人たちが、
シャンプーについて語ってくれるわけ。
使う立場で文句言ってるだけじゃなくて、
「このへんはきっと難しいところだけど……」って
作り手のことをわかってる人たちが、
アンケート寄せてくれるのよ。
その意見はね、ぜんぶ将来の参考になるんですよ。
で、彼らはそういうものを見つけたくて、
物を買ってるんですよね。
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