松本人志まじ頭。

第7回 ビビるよね。朝からいきなり永ちゃんだもの

糸井 芸能は「松本さんが座る席を4つ空けとけよ!」
みたいなところから始まりますよね。
で、あと3つは誰? ってときには、
「松本さんのマネージャーさんの席です」みたいな。
松本 そうですよねえ。
糸井 そうなったときには、
“松本”という人はペコペコしますよね。
松本 します。
糸井 そんな空けといて。
で、最後に、座っていいのかな、という判断するのを
ほんとにもうあきらめて、
「ありがとうございますっ!」ってデカイ声出すとか、
「わしゃ座るでえ!」ってデンと座るか。
松本 あえてそうやってしまうか。
糸井 パターンは2つしかない。
でも、隣にいる人は、その役をやらなくてもいいから、
「ありがとうございます」ってあたり前のように座るよね。
で、「いい席ですね」って言うか、
それを当たり前だと思うか、どっちかですよね。

俺ね、それ、治らないと思うの。
これは「しくみ」だから。
みんながペコペコする会社が、俺は理想なのよ。
「お願いします!」っていうような。
それがどうしたらできるかっていうのを、
今、追求中なのよ。
でありながら「これでタクシー乗ったらパーだよな」
ってわかってる人って、カッコイイと思うんですよ。
永ちゃんとこのTさんという人を見ていると、
電車に乗っている気がするのよ。絶対乗ってる。

あともうひとり、Kさんというスタッフが
こないだウチに来てくれたんだけど、
Kさんはファン上がりなんで、
永ちゃんを知れば知るほどうれしいんだよね。
で、永ちゃんも人間だから、Kさんは永ちゃんの
しょうがねぇなって面を絶対見てるはずなんですよ。
だけど「そこのところがあって、ボスなんだ」
っていうのが、多分わかってるんだろうね。

で、永ちゃんは永ちゃんでね、
松ちゃんこの話好きだと思うけれど、
永ちゃんがスタッフに
「おまえ今家賃いくら?」とか聞くわけよ。
「それ家賃高いだろ。もう家もったほうがいいぞ。
 そのほうが安上がりだから」って。
「はあ……」って言ったら、
「俺が考えとくよ!」って別れたんだって。
これ実話なのよ。

翌日は日曜日。
朝の8時半、ふつう寝てるよ。で、電話がなったわけ。
誰だよ、休みの朝によぉ。まーたセールスかよぉ。
でも万が一ってことがあるからいちおう出るかって、
「はい……」って電話に出たら、
「あのなあ、今日の11時半から、
 不動産屋に会うことになってるから、
 今から言う電話番号控えといて!」って。
永ちゃん本人なの。
松本 (笑)。
糸井 そりゃ、ビビるよね。
朝からいきなり永ちゃんだもの。
「あのな、なんとか不動産の山本さんつう人なんだよ。
 俺がいい物件見つけといたから。
 おまえの名前で電話が行くって言ってあるから。
 俺の電話切ったらすぐ電話かけて」って。
で、なん平米で、バス、トイレつきで、
どこどこの駅から徒歩何分、スーパーが近いらしい、と。
「それ見つけたから。おまえすぐ電話して!」と言って、
ヨロシク! ガチャン、なんだって。
もう、めちゃめちゃ眠いんだけど、
永ちゃんから電話番号メモさせられて、
「もしもし……はい、11時半に伺いますが、
 どこで待ってたらいいですか」って電話したらしい。
つまり、永ちゃんは朝から新聞の不動産情報を読んだり、
チラシで物件さがしたりして、
あの声で不動産屋に電話したってことなんだよね(笑)。
松本 (爆笑)は〜。
糸井 いい話でしょ?
俺らも、そんな気分。
そういうことを永ちゃんはホントにするわけだよ。
ちょっとおかしいのは、
そのスタッフが今お金あるかどうかを
永ちゃん考えてない(笑)。
松本 考えてないですよねえ。
糸井 そのスタッフに給料がどれだけ出てるってとこまでは
たぶん知っているんだよ。
俺らよりは自分とこのスタッフについて知ってると思う。
だから、ちゃんと計算すると住める、って。
で、後から「部屋どーした?」って永ちゃんに言われて、
そのスタッフは、
「あ、いいなあと思ったんだけど、
 僕にはちょっと広すぎるんです」って断ったんだって。
松本 ああ、うまいですねえ。
糸井 永ちゃんは「あ、そうだなーっ!」って言ったんだって。
その関係もいいな、と思わない?
「ボスが言ったとおり部屋借りました」じゃマズイよね。
それ、永ちゃんとこは先にできてるなあって思ったね。
そのかわり、オーストラリアで35億円使い込まれてる。
松本 そんなこともあるんですよね。
糸井 それは昔からいた古株の人が、やっちゃったんですよね。
だから、今いる若い子はそういう問題ないよね。
で、ウチに来たりしても、すごく丁寧ですよね。
「オレ、矢沢んとこから、来たんすけど」
とは、ぜったい言わないですよ。
松本 (笑)。
糸井 なんか、あるんだよ。方法が。
おそらくTさんの功績なんだよ。
永ちゃんと、ほかの人をブリッジする誰かなんだよね。
松本家もね……。
松本 それじゃ、僕のやりかたもべつに……。
糸井 合ってると思う。
松本 大丈夫なんですかねえ。
糸井 ほかのお笑い系のチームは、危ないと思うよ。
危ないと言っても、短期的にはうまくいってるんだから、
これでいいんだ、っていうやり方はもちろんありますよ。
それは選ぶか選ばないかの問題で、
全然かまわないと思うんです。

ただ、そうじゃないチームのほうがカッコイイ。
マイクロソフトの古川会長も、
原田さんというアップルの社長も、
「ほぼ日はギャラ出ないんですよ。
 だけど、ぜひ対談したいんです。
 できたら場所は、ほぼ日でやりたいんです」
という条件でわざわざウチに来てくれるんですよ。
自分でサッとタクシーに乗って。

で、べつにエラいさんどうしで話し合う場じゃないから、
いろいろ話をして、ハンバーガーかじってバイバイします。
お互いにそれができる人じゃないと、
やっぱり一緒になにかをしていくのはむずかしいんですよ。
「わしゃ社長じゃ、わっはっは」って言われてもねぇ。

2000-01-06-THU

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