糸井 |
芸能は「松本さんが座る席を4つ空けとけよ!」
みたいなところから始まりますよね。
で、あと3つは誰? ってときには、
「松本さんのマネージャーさんの席です」みたいな。 |
松本 |
そうですよねえ。 |
糸井 |
そうなったときには、
“松本”という人はペコペコしますよね。 |
松本 |
します。 |
糸井 |
そんな空けといて。
で、最後に、座っていいのかな、という判断するのを
ほんとにもうあきらめて、
「ありがとうございますっ!」ってデカイ声出すとか、
「わしゃ座るでえ!」ってデンと座るか。 |
松本 |
あえてそうやってしまうか。 |
糸井 |
パターンは2つしかない。
でも、隣にいる人は、その役をやらなくてもいいから、
「ありがとうございます」ってあたり前のように座るよね。
で、「いい席ですね」って言うか、
それを当たり前だと思うか、どっちかですよね。
俺ね、それ、治らないと思うの。
これは「しくみ」だから。
みんながペコペコする会社が、俺は理想なのよ。
「お願いします!」っていうような。
それがどうしたらできるかっていうのを、
今、追求中なのよ。
でありながら「これでタクシー乗ったらパーだよな」
ってわかってる人って、カッコイイと思うんですよ。
永ちゃんとこのTさんという人を見ていると、
電車に乗っている気がするのよ。絶対乗ってる。
あともうひとり、Kさんというスタッフが
こないだウチに来てくれたんだけど、
Kさんはファン上がりなんで、
永ちゃんを知れば知るほどうれしいんだよね。
で、永ちゃんも人間だから、Kさんは永ちゃんの
しょうがねぇなって面を絶対見てるはずなんですよ。
だけど「そこのところがあって、ボスなんだ」
っていうのが、多分わかってるんだろうね。
で、永ちゃんは永ちゃんでね、
松ちゃんこの話好きだと思うけれど、
永ちゃんがスタッフに
「おまえ今家賃いくら?」とか聞くわけよ。
「それ家賃高いだろ。もう家もったほうがいいぞ。
そのほうが安上がりだから」って。
「はあ……」って言ったら、
「俺が考えとくよ!」って別れたんだって。
これ実話なのよ。
翌日は日曜日。
朝の8時半、ふつう寝てるよ。で、電話がなったわけ。
誰だよ、休みの朝によぉ。まーたセールスかよぉ。
でも万が一ってことがあるからいちおう出るかって、
「はい……」って電話に出たら、
「あのなあ、今日の11時半から、
不動産屋に会うことになってるから、
今から言う電話番号控えといて!」って。
永ちゃん本人なの。 |
松本 |
(笑)。 |
糸井 |
そりゃ、ビビるよね。
朝からいきなり永ちゃんだもの。
「あのな、なんとか不動産の山本さんつう人なんだよ。
俺がいい物件見つけといたから。
おまえの名前で電話が行くって言ってあるから。
俺の電話切ったらすぐ電話かけて」って。
で、なん平米で、バス、トイレつきで、
どこどこの駅から徒歩何分、スーパーが近いらしい、と。
「それ見つけたから。おまえすぐ電話して!」と言って、
ヨロシク! ガチャン、なんだって。
もう、めちゃめちゃ眠いんだけど、
永ちゃんから電話番号メモさせられて、
「もしもし……はい、11時半に伺いますが、
どこで待ってたらいいですか」って電話したらしい。
つまり、永ちゃんは朝から新聞の不動産情報を読んだり、
チラシで物件さがしたりして、
あの声で不動産屋に電話したってことなんだよね(笑)。 |
松本 |
(爆笑)は〜。 |
糸井 |
いい話でしょ?
俺らも、そんな気分。
そういうことを永ちゃんはホントにするわけだよ。
ちょっとおかしいのは、
そのスタッフが今お金あるかどうかを
永ちゃん考えてない(笑)。 |
松本 |
考えてないですよねえ。 |
糸井 |
そのスタッフに給料がどれだけ出てるってとこまでは
たぶん知っているんだよ。
俺らよりは自分とこのスタッフについて知ってると思う。
だから、ちゃんと計算すると住める、って。
で、後から「部屋どーした?」って永ちゃんに言われて、
そのスタッフは、
「あ、いいなあと思ったんだけど、
僕にはちょっと広すぎるんです」って断ったんだって。 |
松本 |
ああ、うまいですねえ。 |
糸井 |
永ちゃんは「あ、そうだなーっ!」って言ったんだって。
その関係もいいな、と思わない?
「ボスが言ったとおり部屋借りました」じゃマズイよね。
それ、永ちゃんとこは先にできてるなあって思ったね。
そのかわり、オーストラリアで35億円使い込まれてる。 |
松本 |
そんなこともあるんですよね。 |
糸井 |
それは昔からいた古株の人が、やっちゃったんですよね。
だから、今いる若い子はそういう問題ないよね。
で、ウチに来たりしても、すごく丁寧ですよね。
「オレ、矢沢んとこから、来たんすけど」
とは、ぜったい言わないですよ。 |
松本 |
(笑)。 |
糸井 |
なんか、あるんだよ。方法が。
おそらくTさんの功績なんだよ。
永ちゃんと、ほかの人をブリッジする誰かなんだよね。
松本家もね……。 |
松本 |
それじゃ、僕のやりかたもべつに……。 |
糸井 |
合ってると思う。 |
松本 |
大丈夫なんですかねえ。 |
糸井 |
ほかのお笑い系のチームは、危ないと思うよ。
危ないと言っても、短期的にはうまくいってるんだから、
これでいいんだ、っていうやり方はもちろんありますよ。
それは選ぶか選ばないかの問題で、
全然かまわないと思うんです。
ただ、そうじゃないチームのほうがカッコイイ。
マイクロソフトの古川会長も、
原田さんというアップルの社長も、
「ほぼ日はギャラ出ないんですよ。
だけど、ぜひ対談したいんです。
できたら場所は、ほぼ日でやりたいんです」
という条件でわざわざウチに来てくれるんですよ。
自分でサッとタクシーに乗って。
で、べつにエラいさんどうしで話し合う場じゃないから、
いろいろ話をして、ハンバーガーかじってバイバイします。
お互いにそれができる人じゃないと、
やっぱり一緒になにかをしていくのはむずかしいんですよ。
「わしゃ社長じゃ、わっはっは」って言われてもねぇ。
|