糸井 |
でもねえ、おもしろくないこと言っている時間が
ものすごく多い。
あ、でもなあ、舞台以外では松本人志もそうだよねえ。 |
松本 |
そうですよ。
なんにもおもしろいこと言ってないし。 |
糸井 |
そっか。
黙ってるか、まじめなこと言ってるか。
そうね、温泉3日は無理だけれど、
1回ちゃんと訊いてみたいなあ……。 |
松本 |
とことんねえ。 |
糸井 |
松ちゃんさえよければ、俺はなんとかするから、教えて。
教えてっていうか、学生になってみたいの、そのことで。
大学院の研究テーマに「お笑い」っていうのがあって、
もう教授にもわからない。
で、学生同士で集まって、この微生物について
もっと話し合いたい、みたいな感じで……。
俺、この問題についてはね、
ほかに話せる人がいないんですよ。
これ、おそらく、たけしさんじゃないんですよ。
たけしさん、もう、違うところに行ったから。 |
松本 |
そうですね。 |
糸井 |
タモリさんはもっとわかってるんですよね。
だけど、タモリさんは
「それはないことにしたほうがいい」
って言う気がするんです。
「そっち行くのはわかってるんだけど俺は違うんだよ。
趣味として2時間だけ参加させてよ」って言うと思う。
「温泉3日間」って言いたくなる気分の人は、
ほかにいないよね……。 |
松本 |
だって僕、ひとりでも
ずっとそんなこと考えますからね。 |
糸井 |
僕もねえ、その問題とポルノの問題、
この2本立ては考えなかった日がないんですよ。
つまり“スケベ”のことと“笑い”のこと。
もしかしたら“泣く”こともかなあ……。
泣くっていうのは笑いにつながってるんだけど、
感情が動くということと、スケベなことっていうのは、
考えることを休んだことがないね。
ずぅっと考えてる。
やはり、あなたも。 |
松本 |
そうですねえ。 |
糸井 |
人には言っちゃったんで、
土産話的に言うのはなんなんだけど、
インターネットを始めてから何がわかったかと言うと、
いちばん面白かったのは、
自分がふつうのスケベだってことがわかったこと。
要するにいろんな映像がいくらでも見られるんですよ。
馬とやってようが、お婆さんのヌードだろうが、
あらゆるものが全部あるのに、自分が集める画像は
結局「誰々さん」だったの。答えが。
「知らなかった、俺はそういうスケベだったんだ」って。
そういう材料があったからわかったんですよ。
足りないときにはわからなかった。
ある程度お金にゆとりができると、
自分の好きなものがわかるじゃないですか。
買えないときは、マスクメロンが好きだって言うんですよ。
でもマスクメロンが実はあんまり好きじゃなかったって、
お金もったらわかるじゃない。
あんなことが、インターネットで、
エロでわかったんですよ。
そういうことがお笑いでも
わかるのかなあと思うんだけれど、
メニューは大衆食堂のメニューしかないから、
「トゥール・ダルジャンで何10年修業して」
みたいなのは、飯を食ったときに、
これが好きだって言いきれないんですよね。
「俺にはつくれない」って言ってもしょうがないわけで。
「なにそれ?」って言いたいのよ。 |
松本 |
イトイさん、あれやりましたか?
「お話ゲームどこでもいっしょ」。 |
糸井 |
やってない。
けっこうはまっている人多いね。 |
松本 |
やっぱりはまりますか。 |
糸井 |
うん。
だけど、本当には信じてないんだ、
そのハマりようを。 |
松本 |
あれね、いわゆるオモチャなんですよ。
こっちが単語いっぱい覚えさせて、
向こうが勝手に入れていきよるんですね。
その微妙なズレで笑わそうとするんですね。
僕は一瞬面白いんかなあ、と思ったらね、
もう僕の中では、ないんですよ。
でも一般人は、ハマるかもしれないかなあ、
と思いましたね。 |
糸井 |
それは松っちゃん僕と構造がいっしょで、
仕組みがわかっちゃったわけでしょう。 |
松本 |
そう、仕組みがわかったんですよ。 |
糸井 |
僕は作り手だから、仕組みがわかりたくて
やっちゃうんですよ。
するとゲームやる気、なくなるんですよ。 |
松本 |
コイツは笑い取りに来てる、ていうのが
バレてしまったんですよね。
故意にコイツ、ワザとやっとるな!
というのが、けっこう早めにピーンと来てもうたんで、
最初は僕ね「ながぶち」とか入れたんですよね。
そしたら
「昨日の夜障子を開けてたら
向こうからながぶちが覗いてた」と言うんですよ。
「コワイよねえ」って言い出したんです。
なるほどなあ、と思ったんです。
「ながぶち」は「歌手」ということで僕は設定したし、
ちゃんとやったのに、
そこで「ながぶち」出してくるってことは、
コイツ完全に、計画的にやっとるな、というのが見えて。 |
糸井 |
ネタが見えちゃった。 |
松本 |
冷めてしまったんですよね。
でも一般人はそれを面白いと思うんでしょうね。 |
糸井 |
うーん、そうねえ……それわかっててもやってる、
暇つぶしな人の人口がけっこうあるかもね。
その人たちに、俺はもっと仕事を与えたいんですよね。
そんなことやってるヒマない、ってやったほうが、
面白くなると思うんですよ。 |
松本 |
そうなんですよ。 |
糸井 |
それ、おんなじよ、俺も。だから今ゲームしてない。
つくってて、ネタ割れないゲームつくりたいんですよね。 |
松本 |
あれね、シモの言葉を入れることありきで
考えてるんですよ。 |
糸井 |
ああ、そうかそうか。 |
松本 |
だから「おまんこ」とか「オナニー」とか、
そういう言葉を入れたら、
世間的にはそこそこおもろいような
文体になるように仕組まれているんですよ。
「何でも好きな言葉入れたらええで」って、
僕はそんなの入れたくないんですよ。
だから、面白くないんですよ。 |
糸井 |
ようするに「うんこちんちん」ものですよね。
うんこちんちんだったらうんこちんちんで、
追及してほしいよね。 |
松本 |
してほしいんですよ。
浅いんですよ。 |
糸井 |
「うんこちんちん」の魅力も、捨てられないからねえ。 |
松本 |
非常に大事なものとしてあるんですけどね。
だからこそもっと奥深く行ってもらわんとね。
「うんこちんちんを、なめんなよ」ってね(笑)。 |
糸井 |
そうなのよ。
楽しそうだなあ、その話したいなあ、俺も。
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