松本人志まじ頭。

第12回 そのウンコの出し具合をね

松本 こないだ赤塚不二夫さんと対談させてもらって、
赤塚さんもようわかってる人で、「シュール」とか、
ああいうのに逃げるな、っていう話をしました。
今の若い子は、ルールがないから。
それがね、ちょっと、クヤシイなあって。
糸井 俺が今興味あるのは、そのうんこちんちん型なんだけど、
人間を動物にまで持ってっちゃった発想で考えないと、
わかんないこと多すぎるなあって。
それやっと最近解ってきたんだけど、
それこそ解剖学とか、そういうレベルまで行っちゃって、
最初にやったように「最初に好きになるの、顔でしょ」
っていうのを認めない社会が長かったじゃないですか。
人類文明史みたいのって。
でもその前の100万年っていうのを、
ちゃんと整理しないと。
だって、西暦2000年ったって、たったの2000年だけど、
その前に人間は100万年生きてたわけじゃないの。
100万年もってきたんだから、
そこのほうが、すごいんだよね。
そこに俺は、うんこちんちんが本当はあるんだと思う。
松本 あるんですよ。
糸井 そこをね、ちゃんと学べない限りは、
痙攣的笑いで終わっちゃうんですよ。
「それ古い!」とかそういうのイヤだよねえ。
松本 漫才でちょっとウンコっていう言葉が出てきただけで
「下ネタやってる!」って。
待て!、と。
「ウンコ」って言葉が出ただけで、
なぜお前は下ネタだと決めつけるんや。
このウンコの使い方は今までなかったウンコの使い方やぞ。
ウンコをなめんな!ってね。
それを僕はずっと謳ってきたんですけどね。
なかなか理解してもらえないんですよね。
糸井 だから不用意に全然使わないでいるよね。
松本 必要があれば出す、そのウンコの出し具合をね、
全然わかってくれないんですよね。
糸井 わかられないね。それはね。
文明以後のウンコの使い方しかしていないのよ。
言っちゃいけない言葉だから言ってウレシイってところで。
それは笑いじゃなくて、タブーに触れただけの笑いなんで。
松本人志は気持ち良くしたいわけでしょう?
松本 それをね、言葉で説明するのは時間がかかるんですよ。
糸井 難しいね。
今度さ、赤塚さんじゃないけど、
吉本隆明さんと対談してみない?
松本 はいはいはい。
糸井 僕、セッティングしますよ。
2週間にいっぺん、吉本さんのところに行って、
人生相談つくってるんですよ。……面白い。
おんなじこと何度も言うような「老人」は入ってるの。
それから「この話、こういう向きに行っちゃうと困るな」
っていうようなじれったいところもあるの。
でも必ず最後に自分で原稿をまとめなけりゃ
いけないんだけど、2時間分を、
ほんの2、3ページにまとめると、シンクってんのよ。

この4月からあらためて通うようになって、
前からずっとつきあいは会ったんだけど、
友達としてしか付き合ってなかったんで、
ちゃんと話なんかしてなかったの。
で、いま、テープ持ってって、ずっと聞いてるけど、
俺、半年で、学んじゃったなぁ。
で、松本人志って話も、去年の秋、出て、
「あの人、僕が思うに」って彼が言うには、
「本の中に全部出てる」。確かにそうなの。
だけど、もったいないと思ったんで、
もうちょっと違うんですよってことを言って、
で、ビデオ送ったりしてたんだけど、
「わかりました」って言ってたから、
今度話、できると思うんですよ。
松っちゃんからしたら話遠いなあってところに
連れていかれると思うんだけど、
俺、立ち会うし、大丈夫だと思うんだ。
「この方向だよね」って言うと「ああそうかそうか」って
戻ってくれると思うんですよ。
もしスケジュール組めるんだったら、
とんちんかんになっても、会うべきだと思う。
本当に、すごい。
俺、あの人が死んだら……家出するね。
松本 (笑)。
糸井 家出するっていう言い方ヘンなんだけど、
俺、支えがいったん、なくなるね。
俺、松本さんが「さすがわかってらっしゃる」的なことを
言われたときのセリフがあるとすれば、
全部吉本さんですね。原点は。
それを自分なりに解釈して、吉本さんは言ってないけど
俺はこうだと思うっていう言い方を
しているだけだと思うんで。会おうよ!
松本 そうですか……。
糸井 メディアかまわないんですよね?
あとで本にしてもいいじゃないですか。ぜひ。
あと、たとえばさ、生きものの原点って
パイプ状なんですよ。食物を取り入れて排泄して、
パイプがもういっこパイプをつくるっていうのが生殖活動。
そこまでさかのぼっちゃうと、
わかることがものすごく多いわけ。
たとえば解剖でいうと、舌と腕の発生って同じなんですよ。
笑っちゃうけど、ベロって、食べ物を取り入れて
飲む仕事をしてるのよ。これって手も同じじゃない。
松本 あ、そうか。
糸井 発生的には同じなんです。
さらに、舌もセンサーですよね。熱いか熱くないか調べる。
手もそうだし、舌も、苦い甘いしょっぱいで、
危険か安全かどうかためすセンサーなんです。
全く同じ役割をして、精子と卵子が結合してから
だんだん分割して、発生していくには、
おんなじ場所にいたものなんですよ。
そうやって考えてみると、大脳って単なる連絡係にしか
見えないんですよ。
そうすると、脳で考えられることって、
ある意味ではほんの一部なんですよ。
ほとんどは、もっと、甘いだのしょっぱいだの、
あるいは、目の前に来たからパッと払うだの、
そういう部分で動いている。
人間の原点はそこまで行っちゃうんです。
で、なのに、人間は特別な神様から進化したっていう、
たった2000年の思想を信じ込まされているおかげで、
ウソをついているわけだ。
それは社交ダンスやフォークダンスが
女と抱きあいたいからってのを、
違う理由をつけて型をつけていったように、
最初なんだっけ? って考えてくと、
ウソばっかりついてる。
松本 ウソばっかついてますよね。
糸井 そのウソの構造を立派にしてくと、それはそれで
世界観ができるから、遊びとして完成するわけですよ。
「それは本当はウソだよね」って解ってて遊べるわけだよ。

2000-01-11-TUE

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