最新号のデリバリー版。

ほぼ日デリバリー版とは、
2000年6月より、全1231回にわたって配信された
「ほぼ日」のメールマガジンです。
毎日の「今日のダーリン」をまとめて読めるほか、
おもしろい過去の記事のバックナンバーや、
デリバリー版独自の特集を交えてお送りしてきましたが
2007年3月15日の配信をもって
終了とさせていただきました。
御愛読、どうもありがとうございました。

以下に掲載しているのは
「ほぼ日デリバリー版」の最終号です。

ほぼ日刊イトイ新聞(デリバリー版)

■2007年3月15日(木)第1231号■

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ごあいさつ
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たくさんの暖かいメールを、
ほんとうにありがとうございました。
ほぼ日刊イトイ新聞の糸井重里です。
前回も予告しましたが、長い間おつきあいいただいた
「ほぼ日デリバリー版」、今回で終刊となります。

ぼくらの仕事は、つくること届けることですが、
読んでもらえなければ完成しません。
「つくること」と「届けること」「読むこと」は、
それこそ三位一体のセットになって、ひとつのことなのだと
つくづく思っています。
読んでもらえることは、
つくったものを成就させることであります。
たくさんのありがとうを言いたいのは、
ぼくらのほうでもあるのです。
ほんとうにありがとうございました。

インターネットのサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」は、
今日も明日も、毎日更新して開いています。
ぜひ、訪ねてきてください。
この先もずっと、どうぞよろしくお願いします。

さて。熱心に、確実に「ほぼ日デリバリー版」の
編集をしてくれた木村俊介くんによる
「終刊号」をお届けいたします。
いつものようにおたのしみください。
木村くん、どうもお疲れさまでした。
BON VOYAGE‥‥!

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こんにちは。

●江古田の町を歩いていたら、
 小学3年くらいの男の子が
 紙筒をふりかざして
 「かきぞめ大会の賞状だぁ!」
 と大声をあげて走っていきました。
 家に帰って
 見せたくてたまらない気持ちが
 伝わってくるかのようでした。

●茨城弁では
 タチがわるいとか
 よくないとかいうことを、
 「いしこい」といいます。
 「おめえの自転車いっしけー!」
 というように使用する方言ですが、
 小学校のころ、都会から来た先生に
 「いしけーとはどういう意味ですか」
 ときかれたので、私は自信を持って
 「いしこいことです」と答えました……。

●徳島県で生まれ育ちました。
 大学は大阪だったのですが、
 当時、徳島の池田高校が全盛期で、
 インタビューを受けている監督が
 「だから」という意味の徳島の方言を、
 「ほなけん、ほなけん」と連発していて、
 私のあだなも「ほなけん」になりました。

町のセリフも、方言も、
ひきつづき、じわじわいただくなかで、
最近、青空のあとのゆうやけがきれいな東京から、
(今日はどんなゆうやけになるのかなと思いつつ)
「ほぼ日デリバリー版」を、おとどけいたします。

前回のデリバリー版に
とてもたくさんのかたから、
感想をいただきました。
「笑わせてくれたり、
 泣かせてくれたりするともだちが
 日本じゅう世界じゅうに
 いるみたいにして読んでいました」
「会社以外の知りあいと
 話しているような時間、でした」
と、ふだん会わない人の
日常や感情に触れられることを
たのしんでいただいて、
ほんとにありがとうございます。
ちなみに、
「仕事するフリをして、
 ひそかに読むのがたのしみでした」
「彼氏からのメールがないときに、
 特に重宝していました」というような感想も、
ニヤニヤしながら、拝読していましたよ。

……と、まずはじめに、
感謝をおつたえしたくなりました。
(担当者のわたくし木村俊介は、これから
 独立して文章を書くことにいたしました。
 みなさんとは、また、本や雑誌などで
 お会いできたらうれしいな、と思います)
今日のデリバリー版も、
たんたんとおつきあいくださいね。

前回の反響をもとに
おたよりを紹介してゆくかたちなので、
つい、最終回関連の話題が、
増えてしまいがちなのですが、
「デリバリー版を読みはじめてから、
 自分の立場は、
 海外逃亡中のプータローから、
 ワーキングプアの派遣を経て、
 丸の内のIT企業で深夜残業する
 正社員に至るまで、わりと
 ドラマチックに変わったけど、
 家に帰ったら、あいかわらず、
 デリバリー版がとどいていたんです」
と、個人的な時間の推移を
そえてくださったような話題に
ピントをあわせて、今回の
ふつうのおたよりを紹介してゆきます。

●4年前から、夫の仕事で
 アメリカで暮らしています。
 異国の地で、
 日本とはまるでちがう文化の土地で
 驚いたり、傷ついたり、学んだり、
 日本にいる親を思ったり……
 子どもも、夫も、私も、
 それぞれの立場でたたかって、
 それぞれの状況に、
 おりあいをつけてやってきました。
 とんがった気持ちがやわらいだり、
 あたたかい気持ちになれたり、アメリカもいいし、
 日本もいいし、両方を知ることができてよかった、
 と思える、おおきな手助けをしていただきました。

●私が読みはじめたのは
 第264号(2002年1月28日)からです。
 札幌→新潟→福島→ガーナ→ケニア→新潟→東京と
 ひっこしても、いつもとどくのがたのしみでした。
 アフリカにいたときは月にいちど
 メールチェックできるかどうかの場所に住んでいたので
 ごはんを食べながら、まとめ読みする時間が
 なによりのたのしみでした。
 ケニアからの投稿が1170号に載ったときは
 うれしくもあり、恥ずかしくもあり、よく覚えています。

●私はカナダに来て今年で10年になります。
 現在住んでいるトロントは大好きですが、
 最初の数年を過ごした都市では
 土地との相性があんまりよくなかったのか、
 気分がふさぎがちでした。
 気持ちが枯れることって、あるんですよね。
 そういうときには、よく
 デリバリー版を読んでいた記憶があります。
 海外で、報道に触れていると、日本の状況は
 悪くなっているような印象を受けるのですが、
 素直であたたかい人のおたよりに、
 「こういう人もたくさんいるのだ」
 と安心したりして読んでいました。

●ここ数年、むちうちの後遺症で
 ほとんど寝たきりの生活を送っていますが、
 世間から隔絶された感じで泣けてくる合間、
 すこし調子のいい日に、
 デリバリー版を、まとめて読んでいました。
 人のぬくもりを感じられ、元気ももらえて、
 たのしい時間を過ごさせていただきました。
 「高校の物理の先生の言葉です。
  作用・反作用の講義です。
  『この世界に
   ひとりぼっちのチカラ、
   というのは決して存在しないんだよ。
   ひとつのチカラがあれば、
   それと引きあう力がある。
   かならず、ある。
   それが宇宙の法則なんだ』
  にっこり、ほほえんでおっしゃっていました。
  ひとりぼっちのような気になったとき、
  夜空を見あげて、宇宙を思って
  先生の言葉を思いだしているんです」
 という話に、心がなぐさめられました。
 これからも忘れられない言葉になると思います。

●今でも、読んで涙が出てしまうおたよりがあります。
 「先週の金曜日、私は高校を卒業しました。
  高校生活3年間はあっというまでしたが、
  ほんとうにたのしい思い出がたくさんできました。
  私は合唱をやる部活に入っていました。
  夏には合唱コンクールがあり、毎年出場しました。
  高校2年生の夏のコンクール前、
  近くのホールを借りて練習にきていました。
  練習の合間の休憩中、たまたま、
  同じ学年の子たちだけが集まって、しゃべっていました。
  そのとき突然、ある子が
  『私、こんなにしあわせでいいのかなぁ』
  と涙ぐみながらいったんです。
  どうやらその子は、みんなとしゃべっているという、
  ごくふつうの状況がしあわせだと感じたようでした。
  私を含め、まわりのみんなが驚き、何いってんのぉ!
  と冷やかしたんですが、きっと私以外のみんなも、
  同じようにあたたかい気持ちだったんだろうなぁ……。
  2年生だったのにその子は
  『卒業したくないよぉ』とも言ってました。
  友達としゃべるなんてすごくありふれたことだけど、
  卒業した今ではすごく大切な思い出です。
  あの子のあの言葉がなかったら、
  たぶん忘れていたと思います。
  結局その子は3年生が引退したのち、
  新部長に選ばれ、みんなをひっぱっていってくれました」
 読みなおすたびに、大事な人と時間を共有するという
 あたりまえのよさに気づかされるから、好きなんです。

●さまざまなおたよりのなかで
 私の印象にのこっているのは、
 以前の、次のおたよりでした。
 「私は57歳です。
  夏のすごしかたを読み、
  ひさしぶりに、かつての
  両親のセリフを思いだしました。
  両親が農家で毎日朝から夜まで
  いそがしい生活をしていたため、
  大学受験を控えた夏休みには
  私は町に下宿をし、
  実家に帰らず講習を受けていました。
  ある日の夕方、両親が軽四輪に乗って
  茹でたとうもろこしやおやつを
  下宿に持ってきてくれたのです。
  『お父ちゃんとお母ちゃん、
   これから夜釣りにいってくるきに、
   ついでに、ちょっと寄ってみたわ』
  海に行くにはずいぶんまわり道なのにね。
  『お月さまの明かりで
   あがって来る魚がキラキラして、
   そりゃあ、きれいながぞね!』
  父母の最高の笑顔でした。
  私たち夫婦は、あんな笑顔をしてるかしら」

生活、仕事、育児、介護、学校……
それぞれの環境には
それぞれの自由も密室もあるなかで、
だからこそ、
ホッとするような、なにげないけど
人間らしい記憶を交換しあうという、
そういう場所になれていたとしたら、
デリバリー版の担当者としてさいわいに思います。

2000年の6月に
第1号をおとどけしてからの6年8か月、
たのしんでくださり、ほんとうにありがとうございました!
(第1号では23歳でしたが今は29歳になりました)

デリバリー版へのさまざまな感想などは、ぜひ、
postman@1101.com
こちらに、件名を「ふつうのおたより」に、おおくりくださいね。
デリバリー版に直接返信してくださっても、ちゃんととどきます。
おたよりは、もちろん、すべて、真剣に読ませていただきますね。

ここからは、みっかぶんの「今日のダーリン」を、おたのしみください。
(「今日のダーリン」は、糸井重里による、毎日更新のコラムです)
==========
●3月12日(月)
「ほぼ日」の節目になる時期というのは、
1年に2度あります。
ひとつが、6月6日の「創刊記念日」です。
「1年、やってこられたなぁ」という思いと、
「ここから先、また新しくなっていかないとなぁ」という
うれしいけれど、ちょっと緊張する気持ちが
微妙に交差する日です。
今年2007年の6月6日がくると、
「ほぼ日」は満9歳になるわけで、これは同時に、
10年目のスタートを切るという意味を持ちます。
意識的にも無意識的にも、現在の「ほぼ日」は、
来年の「ほぼ日10周年の日」を、
ひとつの大事な軸にして、生きています。
そして、その直前の9周年の日から、
新しい「ほぼ日」の助走が始まるはずです。
いまは、そのための「助走の準備」をしている時期です。

そして、もう1回ある節目が、
会社としての期末・期首にあたる3月〜4月です。
零細企業経営者としては、
生きてこられたという思いで「ふ〜っ」と、
大きく息を吐く時期ですし、これまた同時に、
「さぁ、この先、どうやって進むんだ」ということを、
具体的に考えていかなくてはいけない時期です。
10周年の前の9周年の直前の時期にくる、
新しい「年度」なんです。
これはこれで、身の引き締まる思いなんですよねー。

この時期、小学6年生が、中学という
新しい場所に引っ越すように、
がらっと様変わりすることがたくさん起こります。
「前のほうがよかったのに」というようなことも、
「新しいスタイルは、なじめないぞ」なんてもことも、
多々あるとは思うのです。
読者にも、ぼくら乗組員一同にも、関係者にも、
なにかと勝手のちがうことも起こるでしょうが、
どうぞ、少しずつ「脱皮」をさせてください。
よろしくお願いします。
そんなご挨拶をしておかなきゃなぁ、という季節です。
いつも桜の話題がでる時期は、こんなです。

●3月13日(火)
・急に寒くなってくれたおかげで、
 「桜のたよりがうれしいですね」なんて、
 言いやすくなりました
 (『ほぼ日桜前線2007』も、たのしいですねー)。
 先日まで、気温が暖かいということが、
 「よくないいことのサイン」としてしか
 認識できにくくなっていましたからね。
 先日は気象庁が、
 「今シーズンの暖冬をもたらしたエルニーニョ」が
 2月で終ったと発表してました。
 その発表を知った直後から、寒くなったり、
 地方によっては雪が降ったりして(くれて)、
 なんだか逆にうれしい気分です。
 ほんとは、寒いの大嫌いなのにねぇ。
・「もうちょっとでわかる」という感じ、ありますか?
 なんか漠然としたことを考えていて、
 問題の芯さえも見えてないんだけど、
 なんか答えというものがありそうな感じが、
 ずっと続いていることって、ありませんか?
 ぼくは、何年に1度くらいの周期であるんです。
 「ほぼ日」というものをつくろう、と思いついたときも、
 その直前まではずうっっと
 「もうちょっとでわかるのに‥‥」という状態でした。
 いまも、ちょっと長くそういう時期にあって、
 じれったいし、わくわくもするし、
 見えないからさみしかったりもするし‥‥
 という気分が続いています。
 でも、そこからするっと脱け出られそうな予感が、
 ちょっとあるんですよねぇ。
 あとは、コツコツと手で穴を掘って、
 向こう側の光に出合うだけ‥‥!
 わけのわかんないこと言って、御免よ。

●3月14日(水)
絶対的に平凡であるようなこと、
あまりにも当たり前なこと、
みんながすでにさんざんやっていること、
そういうことを、
「もう終わったこと」と思ってはいけないんですよね。
『スターバックス』は、
飲みすぎているほどコーヒーを飲んでいるアメリカで、
コーヒー店をはじめたわけです。
「まさか、いまさら?」と思われそうなことです。
でも、溢れすぎているからこそ、おろそかにされている、
という「でっかいスキマ」が、あったんでしょうね。

「なにをいまさら?」「まさかいまさら?」
と言われるようなことこそ、
いまみたいな時代には、やりがいがあるように思うんです。
ぼくがこのごろ気になっているのは、
だいたい「歩くこと」だとか、
「遊ぶこと」だとか、
「寝ること」だとか、
「集まる」ことだとか、
人間のやることのうちでも
「元素」みたいなことばかりです。
いまさらそこまでさかのぼるか、というようなことが、
いちばん興味深くて、考えがいがあるんですね。
そして、もうあらゆる考えや方法が
出尽くしたかに見えることのなかに、
自分たちの仕事があるような気がしています。

新しそうに見えることよりも、
「古いよ、それは」と言われそうなところで、
穴を掘ってみたいと思っています。
具体的じゃないことばかり言ってて、すいません。
そういう日もありますので、そのまま行きます。

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「デリバリー版」をたのしんでくださり、ありがとうございました。
お相手は、わたくし「ほぼ日」スタッフの、木村俊介でした。

○「ほぼ日デリバリー版」は、今回で最終号になりました。
 https://www.1101.com/home.html
 ほぼ日刊イトイ新聞発。無断転載は、やめてね。
 Copyright(C) 2007 Hobo Nikkan Itoi Shinbun
 さまざまなおたよりは postman@1101.com まで。
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○ほぼ日デリバリー版に登録されていた
 みなさんのメールアドレスは、
 個人情報保護のため、最終号をお送りしたあとに
 「ほぼ日」で消去いたします。
 (ほぼ日ストアなど、ほかの「ほぼ日」関連のなにかに
  登録されたアドレスは、そのまま残ります)
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☆デリバリー版は、キールネットワークスが開発した
 高速メール配信システム「expresso」を使っています。
 開発してくれた佐藤智行くん、どうもありがとうございました。
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