モノポリーエッセイ

第4回

【代表決定戦1回戦】

――さて、代表決定戦の1回戦ですが、
  結論から申しますと、私はこの1回戦の結果で、
  何か岡田さんに流れがある、
  世界選手権大会の代表になられそうな気がしたんです。
  良くも悪くも、岡田さんを中心にまわった
  ゲームだったんですね。
  まず、一周目から大きな交渉がありましたね。
  岡田さんが千葉さんに対して
  ダークブルーを揃えさせたんですよね。

岡田
そうですね。
そして、千葉さんはダークブルーに家を3軒
(ボードウォークに2軒、パークプレースに1軒)
建てたんですが、
田中さん、宮野さんが相次いで
ボードウォークに止まって・・・

――それで、千葉さんの1位がほぼ確定、2位は誰か、
  というゲームになりましたね。
  教科書どおりというか、
  千葉さんにダークブルーを揃えさせた
  岡田さんが2位になったんですが…
  結果的には、岡田さんにとって強敵とみられた
  田中さんと野中さん(※26)を抑えて、
  岡田さんが2位に来ましたから、
  「これは岡田さんが代表になりそうだな」
  という気がしたんです。

※26 田中さんと野中さん
   田中瑞穂さん(1992年、1997年)、
   野中俊一郎さん(1994年、1996年)とも
   2回ずつ日本チャンピオンになっている実力者です。

岡田
もちろん、誰かを落とす、などという気持ちはなくて、
私自身勝つつもりで
千葉さんにダークブルーを揃えてもらったんですが、
私は普段からダークブルーの評価が低めなので、
……確実性が低いというのがあるものですから……
今思うと千葉さんに有利な交渉をして、
他の皆さんにも
ご迷惑をおかけしたような気がします(苦笑)。

――なるほど。
  まだ、ほとんど全員が一周していない時に、
  家を4軒建設できる状態で、
  ダークブルーが揃ってしまったんですものね。
  千葉さんははっきり有利になったでしょう。
  一方、岡田さんはどうなのかな、
  と思いながら見ていたのですが、
  結果的にはきちんと2位になりましたね。

【代表決定戦2回戦】

――1回戦終了時点では、
  1位 千葉篤史さん  28ポイント
  2位 岡田豊さん   17ポイント
  3位 野中俊一郎さん 10ポイント
  4位 宮野徹さん    5ポイント
  5位 田中瑞穂さん   0ポイント
  ということになりました。
  そして迎えた2回戦では、
  どういうことを考えて勝負に臨んだんですか?

岡田
1回戦は2位だったわけですが、
やはり、どこかで勝たないと代表にはなれないので、
「勝ちに行きたい、勝たないと」
と思って2回戦に臨みました。

――ゲーム展開は、どうだったんですか?

岡田
序盤は、権利書も買えて、
千葉さんと私とで交渉のしやすい、いい形になりました。
いい形だったんですが、
なかなか交渉がまとまらないでいると、
田中さんがレッドを揃えられまして、
最初は5軒スタート(※27)くらいだったと思いますが、
それが家7軒まで育ちまして、
これは何とかしないといかんな、という状態になりました。
そこで、野中さんがゲームを動かしていきまして、
宮野さん、千葉さんと交渉をまとめまして、
野中さんがグリーン、千葉さんが
ライトパープル(※28)を揃えました。
野中さんはグリーンに
最初は家が2軒しか建たなかったのですが、
うまいタイミングで勝負をかけられまして、
家7軒まで成長したんです。
田中さんのレッド7軒、野中さんのグリーン7軒が
脅威になったので、
私も宮野さんにオレンジ(※29)を揃えてもらう代わりに
鉄道3枚を譲ってもらう、などしたのですが、
そうこうしているうちに、
野中さんの経営するグリーンで
家が3軒建っているペンシルベニア通りに止まってしまい、
$1000の負債が払えずに仮破産しました。
これは、最初のうちは
救済してもらえなさそうだったのですが、
本当に無理やり、田中さん宮野さん千葉さんに
細切れで権利書を引き取ってもらい、
なんとかその場は生き延びました。

※27 5軒スタート
   3ヶ所の土地に2軒、2軒、1軒の家を建てて、
   そのカラーグループの経営を始めること。
   タイミングやまわりの状況にもよりますが、
   他に売り切れているカラーがなくて、
   レッドに家5軒は、
   十分に勝負になるかもしれません。

※28 ライトパープル
   刑務所の直後にあり、家の建設費はオレンジと同じ。
   しかし、コストパフォーマンスは
   オレンジにかなわず、
   微妙な役回りのカラーグループ。

※29 オレンジ
   刑務所からサイコロ一投で止まりやすい場所にあり、
   また家の建設費も$100と安く、
   コストパフォーマンスも
   申し分のないカラーグループ。
   序盤から終盤まで
   ゲームのキーポイントとなることが多く、
   性能的にはチャンピオンカラーといえる。

――それが、振りかえってみると
  岡田さんにとってものすごく大きな交渉でしたね。

岡田
そうですね。
そのまま破産していたら5位だったところを、
無理やり救ってもらったことで3位になりましたからね。
ここで破産していたら、THE ENDでしたね。

――結局、2回戦はその岡田さんが支払った
  $1000のアドバンテージを
  うまく活用した野中さんが1位になり、
  岡田さんはビリも覚悟したゲームを
  3位に粘ることになりました。
  1回戦目で1位だった千葉さんは
  2回戦4位で1歩後退。

【代表決定戦3回戦】

――2回戦終了時点での順位は、
  1位 野中俊一郎さん 38ポイント
  2位 千葉篤史さん  33ポイント
  3位 岡田豊さん   27ポイント
  4位 田中瑞穂さん  17ポイント
  5位 宮野徹さん    5ポイント
  となりました。
  この結果、野中さん、千葉さん、岡田さんの3名は、
  3回戦目に勝てば無条件で代表決定、
  田中さんは3回戦目に勝った上で、
  野中さん、千葉さんの順位次第では代表の可能性あり、
  宮野さんは残念ながら
  この時点で代表の可能性はなくなりました。

岡田
そうですね。
やはり、自分が勝ちさえすれば、
他の人の順位を気にしなくていいので、
気楽に勝つことだけを狙っていけました。

――3回戦目のゲーム展開はどうだったんですか?

岡田
私は序盤からサイコロ・カードともに順調で、
お金が結構たくさんもらえるような滑り出しでした。
そして、また千葉さんと絡むことになるのですが、
千葉さんと私の間で、レッドが3枚とも売り切れたので、
早速千葉さんと交渉をしました。
レッドの手前に宮野さんと野中さんがいましたし、
他のカラーグループがパタパタと揃う状況でもないので、
私に揃えさせてもらう交渉を持ちかけてまとめました。
ライトパープル1枚
(ライトパープルは1枚が売れ残っていた)と
$500くらいでレッドを揃えさせてもらったのですが、
その時点で私は$1100くらいの現金を
持っていたと思います。

――その時点でかなり有望ですね。

岡田
しかも、レッドのお客さんだった宮野さん、野中さんが、
両方とも$250ずつの場所でしたが、
止まってくれたんです。

――それでは、もう8割がた勝てそうですね。

岡田
そこで、野中さんがひと働きされたんです。
野中さんは私のケンタッキー通りで
$250を支払ったばかりで、
イエローの手前なのですが、
あえてイエローを出して
田中さんにイエローを揃えさせたのです。
その時点で、田中さんには
十分な建設資金はなかったのですが、
何せ私へレッドを揃えさせた交渉で
現金が豊富になっている千葉さんがいますから、
そのイエローが千葉さんに渡るようだと
私にも脅威になります。
その辺は野中さんや田中さんは十分ご承知ですから、
野中さんは私の独走を阻止する意味で、
自分も苦しい位置なのに、
私が脅威を感じる動きをなさったんですね。
ただ、結果的には、
田中さんがイエローを千葉さんに譲る交渉を
案の定持ちかけたのですが、
私にとってはラッキーなことに
千葉さんがその交渉には乗り気でなく、
すぐにはまとまらなかったので、
「あっ、これは勝てるな」と思いました。

――結局、そのまま押しきって、そのゲームを勝って、
  世界選手権代表の座を手にされたんですね。

岡田
途中、田中さんがライトパープルで勝負をかけてきたり、
私が余裕をかましすぎて、
宮野さんにちょっと噛みつかれるような場面も
あったのですが、
そのときにはだいぶ差もついていましたし、
なんとかこらえて勝ちきることができました。

――3回戦は岡田さんが勝たれて、最終順位は、
  1位 岡田豊さん   55ポイント
  2位 千葉篤史さん  43ポイント
  3位 野中俊一郎さん 43ポイント
  4位 宮野徹さん   22ポイント
  5位 田中瑞穂さん  17ポイント
  となり、岡田さんが
  2000年世界選手権に出場されることになりました。
  この「代表の座」というのは、
  是非とも欲しかったんじゃないんですか?

岡田
5人で行われる代表決定戦に出場できたわけですから、
5回に一度は、という意味でも、
「チャンスはある」とは思っていたんですが、
「絶対代表になってやる」みたいな執着心は
なかったですね。
「できれば取れればいいな」くらいだったんです。

――岡田さんの戦いぶりを見ていると
  非常に勢いを感じました。
  やはり、その年のチャンピオンが
  「勢い」を代表決定戦に持ちこめる分、
  有利(笑)みたいなこともあるのでしょうか。

岡田
確かに、「時の勢い」みたいなものは
あったかもしれませんね。
高橋尚子さんにも
後押ししてもらったような感じかな(笑)。

(つづく)

2000-12-16-SAT

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