モノポリーエッセイ

第7回

【世界選手権予選1回戦】

――では、いよいよ世界選手権のゲームについて
  うかがいましょう。
  予選1回戦はどういうメンバーですか?

岡田
4人テーブルで、
UK代表、前日に練習ゲームをやった
チェコ代表、ウクライナ代表、と私でした。
イギリスからは、
「イングランド代表」「スコットランド代表」
「UK代表」の3人の代表がなぜか出場していました。

――それなら、レベルが高い日本だって、
  複数人出られてもいいのにね。
  それで、ゲーム内容はどうだったんですか?

岡田
振りかえってみると、世界選手権の4ゲームの中で、
一番苦しい試合でした。
ウクライナと私で、イエローを持ち合って、
交渉しやすい権利書も結構ある状態になったんですが、
イエローを揃える交渉がなかなかまとまらないんです。
こちらがイエローを揃える交渉は相当難しいし、
かといってウクライナにイエローを揃えてもらうにも、
ウクライナがイエローに
家9軒(※36)建つような条件に固執されまして。

※36 イエローに家9軒
   イエローの3ヶ所の土地に家が3軒ずつ建つ状態。
   このような条件で先攻できれば、
   かなり有利といえる。

――それは厳しいですね。

岡田
それで、交渉をまとめられないでいる間に、
前日の練習試合の様子から
「動かない」と思われたチェコが、
ウクライナにものすごく安く
ライトブルーを売ってしまったんです。
その結果、ウクライナはライトブルーのセットと
現金$800くらいを持って、
さらにキーになる権利書を何枚か押さえるような状態です。
それならウクライナも喜んでやるでしょうね。
チェコはそれの見返りに鉄道を3枚セットにしたんですが。

――それで、岡田さんはどういう作戦をとったんですか?

岡田
仕方がないので、私はチェコにグリーンを揃えてもらって、
その代わりにレッドとオレンジをもらって、
UKとツーペーになるような交渉をまとめました。
チェコは先ほどの鉄道3枚に加えて、
グリーンに家が7軒建つくらいの現金を
持っていたはずです。
実際にはグリーンに家を6軒建てましたが。
そして、私とUKでレッドとオレンジのツーペーです。
しかし、両方ともそれほどお金がない。
結局UKとの交渉は、私がオレンジに家6軒建つくらい、
UKがレッドに家7軒建つくらいの状態で、
まとまりました。
オレンジの手前には他のプレーヤーがいなかったのですが、
私もダークブルーの権利書
(もう一枚をチェコが持っている)
と鉄道の権利書を持っていましたから、
なんとかなるか、というところではあります。
一方、レッドは私とUK以外の二人が手前にいましたから、
UKもかなりいい条件で交渉がまとまった
ということじゃないでしょうか。
でもUKは家を1軒ずつしか建てなかったんですが。

――勝負どころですね。

岡田
ところが、私がサイコロで「3」を出して、
ライトブルーの家4軒に止まってしまうんです。
ライトブルーにとまることは
ほとんど考えていませんでしたし、
レンタル料の$400を支払うと、
オレンジの経営が難しくなる大ピンチだったんですが、
そこで、そこそこお金を持っていたチェコが、
私の持っていたダークブルーの権利書1枚と
鉄道の1枚に興味を示してくれて、
この2枚をまとめて$700で売ることができたんです。
それで、オレンジに家を8軒建てることができまして、
その後はうまい具合にレンタル料をかせぎ、
なんとか勝つことができました。
まあ、実際には、私との交渉の結果、
ダークブルーと鉄道を揃えたチェコはかなり優勢になり、
私は途中2回ほど、チェコの経営するグリーンの家9軒を
サイコロで抜けなければいけない場面もありました。
もちろんそこでグリーンに止まれば勝てなかったでしょう。

――この大会は順位でなくて資産が重要なんですが、
  資産はどのくらいだったんですか?

岡田
モノポリー勝ちで$8616でした。
4人ゲームですから、
こんなモンかな、というところですね。
この時点で全体では7位の資産額でした。

――日程はこの予選1回戦の後、
  ナイアガラに観光でしたね。

岡田
そうです。
ただ、外国人は時間に結構ルーズでして、
出発が遅れました。
予定していた観光地を1ヵ所キャンセルしたにも関わらず、
かなり遅れてホテルに帰ってきたようなありさまでした。

【世界選手権予選2回戦】

――さて、1回戦の好結果を受けまして、
  翌日の2回戦はどうだったんでしょうか?

岡田
2回戦目は5人テーブルで、
ルーマニア、USA、トリニダード・トバゴ、ポーランド、
の代表と私の対戦でした。

――どういう作戦で臨んだんですか?

岡田
対戦相手の中では、
唯一1回戦でモノポリー勝ちをしていた、
USAを一応警戒して、USAよりも上位にいこう、
と考えながらゲームに臨んでいました。
ところが、私が1回戦で
苦しい体勢から勝ったのが伝わっていたのか、
相手からは私がマークされるような雰囲気でした。

――ゲームが始まってみて、どうだったんですか?

岡田
私は結構キーポイントになる権利書を買えまして、
いろいろと交渉を持ちかけてみたんですが、
「マークされている」みたいなこともあるのか、
皆さんなかなか交渉に応じてくれないんですよ。
そうして、ゲームが始まって
45分くらいたったときでしょうか。
USAが、
「もう交渉しないで、このままサイコロを振ろうぜ!」
と言い出しまして、
審判が「談合はイカンよ」みたいなことを言ったんですが、
談合じゃないよ、ということで、
本当にまとまる交渉もなく、
結構な時間、みんなでサイコロを
振りつづけることになったんです。

――USA代表はシャイだ、とうかがったんですが、
  仕切るところでは仕切りますねえ。

岡田
それで、みんなサイコロを振りつづけて
給料をもらいつづけて、
全員が現金を$2000近く持っているような
状態になったんです。
ただ、私は所得税のマスに何回も止まったりして、
私は現金が他のプレーヤーよりも少なかったんですが。
それで、私も「このままじゃまずいかな」と思いまして、
ゲーム開始後70分くらいで、
ポーランドにダークブルーを譲る交渉をしまして、
それが結局まとまったんです。
ポーランドはダークブルーのセットと
現金が$2000は残る感じ。
私はその代わりに鉄道2枚と
現金$1200をもらいました。
他の人は、みんな、
「このままサイコロを振りつづけて
 給料をもらいつづけてゲームが終わる」
と思っていたようで、私とポーランドの交渉成立に
かなり衝撃を受けたようでした。
ダークブルーが揃ってしまいましたから、
やむを得ず、という具合に他の人も交渉を始めまして、
私はUSAと交渉して、USAに
グリーンと鉄道4枚を揃えさせる代わりに
私はオレンジを揃えました。

――それは、全員が大金持ちという条件では、
  かなり岡田さんに不利な条件じゃないんですか?

岡田
そうなんですが、みんなグリーンは大好きですから、
譲ってくれないんですよ。
それで、そういう条件になるのがわかってましたから、
全員がグリーンに遠いGOマスくらいにいるときに
交渉して、オレンジをもらってきたんです。

――なるほど。
  相手はあまりその辺は注意していないわけですね。
  それで他の人はどうなったんですか?

岡田
ルーマニアとトリニダード・トバゴの二人は、
ライトパープルとイエローを揃えました。
私は先にオレンジに家を12軒建てていたんですが、
みんなが家をほしがったもので、
残り時間がないっていうのに、
家の競売になってしまったんですよ。
しかも、相対的に有利となった2人、
ダークブルーのポーランドとグリーンのUSAが
定価より安く家を買って、
さらに有利になってしまうという、
もう私にとって最悪の展開で…

――その後はどうなったんですか?

岡田
グリーンと鉄道を揃えたUSAが、
オレンジに連泊してくれたこともあって、
モノポリー勝ちにはならなかったんですが、
私は$6913の資産を残して1位でした。

――モノポリー勝ちじゃなくても、
  それだけ資産が残れば十分ですね。

岡田
その時点で、2ゲームとも勝ったのは、私を含めて3名で、
私は$15529で総合3位。2位はハンガリー代表。
1位は香港代表で、$18865でした。

――しかし、交渉しないで
  サイコロを振りつづけるゲームを、
  よく打開しましたね。

岡田
あのままサイコロを振りつづけていたら、
全員が$5000くらいの資産だったのかもしれませんね。
私とポーランドとの交渉は
他のプレーヤーもビックリしていましたし、
見ていた女性の記者も
「あの状況で相手にダークブルーを揃えさせるなんて、
 思いもつかない戦法だ!」
と声を掛けてくれました。

(つづく)

2000-12-19-TUE

BACK
戻る