モノポリーエッセイ |
モノポリー日本選手権
全国大会結果報告(その5) こんにちは。 モノポリー日本一を決定するための大会、 「モノポリー日本選手権」。 現場の興奮と盛り上がりをお伝えするレポートも 今回で5回目、いよいよ予選最終ゲームの報告を お送りいたしましょう。 予選の3回戦目。 前回もご説明しましたように、 このゲームの開始前には、 すでに、何名かの選手にとっては、 決勝進出はなくなっています。 そういう選手にとってこの3回戦は、 システム上は、言い方は悪いのですが、 いわゆる「消化試合」ともとれる ゲームになっているのです。 しかし、ここが日本選手権のいいところなのですが、 だからといって、やけになったり、 放り投げるようなゲームをする選手は一人もいないのです。 例えば野呂さんは、開会式で 「勝っても負けても全ゲームモノポリー決着」という 公約をここまできちんと守っており、 自身にとっての最終ゲームでも 「時間内に終わらせましょう」と、 積極的に場を動かすという自分に課した「使命」を 最後まで全うする旨を表明しています。 その他の選手も、せっかく出場できた全国大会、 真剣かつ全力でゲームをしたい、 記念に1勝して帰りたい、 一人でも多くの相手とゲームを楽しみたいと、 最後の最後まで全力で戦いぬく気概が見えます。 開会式での表寺さんの選手宣誓ではありませんが、 「正々堂々最後まで」の精神は、 確実に全ての選手に浸透しているようです。 ここでは第2テーブルに注目してみましょう。 このテーブルには、 現在暫定2位の篠塚さん(13,580ウルトラマネー)と、 4位の名古さん(10,175ウルトラマネー)がいます。 篠塚さんはたとえこのゲームで破産しても、 決勝へのボーダーラインはぎりぎり超えていそうな位置。 一方の名古さんは、 あと数千ウルトラマネーの上乗せが必要と思われる 位置です。 そういう意味では、 特に名古さんにとって非常に重要な一戦です。 さて、この第2テーブルでは、 まずは寺下選手がSM(スーパーメカ=鉄道)を 3枚目まで「自力」 (交渉を経ずに自分でバンカーから購入すること)して、 序盤頭ひとつ抜けた優位に立ちます。 逆に、篠塚さんはYe1枚しか買えていなくて、 なにやらはた目にも「苦悶の表情」に見えます。 この篠塚さんの表情を隣でじっと観察していたのか、 寺下さんはここで一人頷き、 まずおもむろに関根さんに交渉を持ちかけます。 お互いに1枚ずつ所持するOrとYeの権利書を 「チャラ交換」 (追い金をつけることなく、 権利書の交換のみで取引すること)しようという内容。 この条件提示は問題なく受け入れられ、 関根さんがOrを2枚、寺下さんがYeを2枚、 それぞれ持つことになりました。 寺下さんは次の交渉相手として、 あえて権利書が1枚しか買えていない 篠塚さんを選んだのです。 その理由はおそらく、「3鉄」を出せば かなりいい条件でYeを揃えさせてくれそうだ、と 思ったからではないでしょうか。 北海道代表の寺下さんと九州代表の篠塚さんの、 非常に重要な交渉。 篠塚さんはかなり譲歩した内容で条件提示を受けいれ、 この交渉は成立します。 寺下さんはYeのカラーグループをそろえます。 手元には、LBの権利書も1枚残しており、 更に基地を8軒建てられるだけの現金を持っています。 しかもYeの手前、フリーパーキング付近には、 名古さんと宮野さんの2名の駒が 「お客さん」として控えているのです。 Yeに家を8軒建てて、 2名のうちどちらかが800や850の 高額のレンタル料の土地に止まれば、 そのまま一気に独走態勢に入ってしまうかもしれません。 そうして寺下さんが勝ったとすれば、 その勝因は、まさしく「人間観察眼」の勝利、 といってもいいかもしれませんね。 ところが、2名ともここは意地を見せます。 「渾身のダイスで」この窮地を通り抜け、 2名ともYeには止まりませんでした。 さあ反撃です。 一連の交渉が一気にまとまり、 ほんの数分後には、野呂さんがLPに9軒、 名古さんがOr7軒、関根さんはDB4軒、 そして宮野さんがGr4軒と、 きれいに盤上に全ての基地(家)が 建ち並ぶことになります。 もうこうなると、あとは純粋にダイスの振り合いです。 あっという間に先行の優位が消え去った寺下さんは、 結果的には、真っ先に基地を崩すようになり、 結局このゲームは勝つどころか、 早々に破産してしまいました。 先行して基地をたくさん建てることができても、 お客に抜けられてしまうと、 一気にその後の交渉が促進されてしまい、 今度は自分の行く先々に ライバルの基地が建ち並ぶようになり、 往々にしてこのような展開となることがあります。 4枚目のスーパーメカを 自力しようと狙っていた篠塚さんも、 このゲームでは残念ながら破産となります。 ほどなくLPやDBも崩れ、 最終的には、GrとOrの「叩き合い」になります。 宮野さんはタイミングを見てGrの基地を すべてLPに「移動」させる (正確には、Grの基地を崩したお金で LPに増築させているのですが、 見かけ上はあたかも 「移動」させているように見えるのです) などして、名古さんに一手先にダメージを与えようと、 捨て身の攻撃を仕掛けてきます。 が、名古さんは直前の自分の土地である ピット星(コネチカット通り)にうまく着地して回避、 その後も毎週のようにピット星に着地していきます。 悔しさ半分、冗談半分から、 宮野さんは 「あなたはエレキング (ピット星に住む怪獣の名前)ですか?」 などと言っています。 言われた名古さんはここでは苦笑していましたが、 まさかこの後、何十人もの人間から 同じ意味の台詞をコールされることになろうとは、 このときにはまだ本人は 夢にも思っていなかったでしょうね。 さて、そんな名古さんの 「宇宙人ばりの」回避力にかなうわけもなく、 ほどなく宮野さんも破産。 名古さんは見事モノポリー勝ちを達成して、 予選3回戦の総資産も20,175ウルトラマネーと、 2万の大台に乗り、ここで全選手中トップに躍り出ます。 もちろん、堂々の予選突破です。 今の3回戦のゲームではカラーグループを揃えることなく 破産してしまった篠塚さんも、 それまでの「貯金」が13,580ウルトラマネーもあり、 どうやら予選を通過できる見込み。 篠塚さんにとって、名古さんともう一度、 今度は決勝のテーブルで直接対決により リベンジを挑めるチャンスが巡ってきたわけです。 闘志が湧かないはずはないでしょう。 さて、全ての予選が終了しました。 決勝へ駒を進める選手は、 前述の名古さん、篠塚さんに加え、 金谷さん、中野さん、小沼さんの5名です。 最終的なボーダーラインは 12,000ウルトラマネー付近に落ち着きました。 なんと、今年の決勝進出者は 全員が全国大会の決勝テーブル初体験という、 フレッシュなメンバーです。 過去の日本チャンピオン5名 (百田・田中・宮野・岡田・表寺)全員が 低迷したばかりか、 決勝進出は確実といわれていた 近年の実力者、佐藤さんや山本さんたちが次々と予選落ち。 大荒れの予感です。 今年の日本チャンピオンが決定するまで、 いよいよあと決勝の1ゲームを残すのみとなりました。 この決勝戦、何とも「ものすごい戦い」となるのです。 「ものすごい」というのは何だか陳腐な表現ですが、 興奮するとこんな表現しか思いつかないものです。 いったいどんな戦いがおこり、 そして誰が勝ったのでしょうか。 「感動の」決勝戦の模様は、次回お送りいたします。 お楽しみに。 |
2004-09-21-TUE
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