モノポリーエッセイ

2007年度モノポリー日本選手権
全国大会結果報告(その14)


こんにちは。
モノポリー日本選手権のレポート、その第14回目です。
長らく休載しており、すみませんでした。
「結果はどうなったんですが?」
という読者の皆様のご意見も
各種イベントでちらほら伺いまして、
気力を振り絞りまして、
「完走」を目指したいと思います。

世間はすでに2008年も押し詰まりつつありますが、
ここだけまだ2007年11月。
予選も煮詰まってきた3回戦の模様をお送りしています。

ここで全国大会の仕組みを復習しておきますと、
全国大会は予選3ゲーム+決勝1ゲーム。
決勝はたった1ゲーム、予選の成績は一切関係ない、
All or Nothing の一発勝負で、
今年のモノポリー日本一が決まります。

その決勝に進出できるのは5人。
予選3ゲームのうち、1、2ゲーム計の成績上位2名は、
3ゲーム目を戦わずして、決勝テーブルに進出します。
今回、紹介させていただくのは予選第3ゲーム目。
決勝に進出する残り3人が決まります。

この予選3ゲーム目は特殊です。
決勝に進出する残り3人については、
予選3ゲーム目にモノポリー勝ちすることが最優先条件。
その中から予選1〜3ゲーム計の上位3人を選びます。

したがいまして、予選1、2ゲームで
どんなに成績が良くても、
予選3ゲーム目でモノポリー勝ちしなければ、
決勝進出の目がほとんどなくなります。
逆に、予選1、2ゲームでどんなに成績が悪くても、
予選3ゲーム目でモノポリー勝ちできれば、
大逆転で、モノポリー日本一を目指すことができます。

そういう意味では、All or Nothing の要素満載の、
熱い予選第3ゲームです。

そしてさらに熱くなっているのが、
今回紹介するこの4番卓。
「前人未到の全国大会22連敗目」を記録した
山本尚意さんがいるんですね。

22連敗と聞くとものすごく弱く思えますが、
まず考えてもらいたいのは、
全国大会で22ゲームするには、
10回近く全国大会に出場しなければなりません。
これは大変なことでして、
生半可な実力では絶対にできません。
しかも山本さんは8年連続で全国大会に出場されています
(実は2008年度の全国大会も既に出場を決めてられますので
 9年連続の大偉業となっています)
8年連続出場は世界チャンピオン経験者などの
永久シード権保持者を除けば最長記録。
これだけでもモノポリー界を代表する
超強豪であることがわかります。
その山本さんが22連敗中ですから、
もはや七不思議どころの騒ぎではない、
モノポリー界の「奇跡」でもあります。

その4番卓。
「山本さんいれば不思議あり」を地で行く
ありえない展開になります。
先行して経営され、レッド7軒の辻本さん、
ダークブルー4軒の岡田要さんが
どうみても有利なのですが、
その二人が次々と泊まったのは、
一見してどうということのない
ライトブルー1軒の土地でした。
モノポリーの中でも2番目に安い土地で、
しかもわずか1軒しか家がたっていない。
普段はたとえその土地に止まったとしても、
レンタル料は痛くも痒くもありません。

しかし直前に全力で家を建てて
キャッシュを放出しきっていたお二人には
なんとこのわずかなお金が支払えません。
レッドやダークブルーの家は1軒ずつ崩れていきます。
そのこぼれた家が
すかさずライトブルーの家と変わっていくのです。

山本さん自身は勝ちみに遅いグリーンを経営しながら、
他のプレーヤーにライトブルーという
あまり攻撃力のなさそうなカラーグループを経営させて、
レッドやダークブルーという攻撃力ある先行者を追撃し、
ついには逆転してしまいます。
山本さんにとっては、「してやったり」の展開でしょう。

そしてNHK風にいえば「その時、歴史が動きました」!
そうです、
ついに山本さんが、待望の全国大会初勝利を
達成したのでした。

終わってみれば
「なぜこの人が今まで1勝もできなかったのだろう」
と首をひねりたくなるような、
燻銀の妙技が光るゲームでした。
膠着しかかった局面を
自分の側にちょっとだけ有利になれるような方向に
仕組むテクニックが
最終的に勝利を呼び込んでおり、
観客も納得の拍手を送ります。
開会式で自分の連敗記録を進んでネタにしつつも、
「記録は破るためにある」と断言したとおりの、
有言実行でした。

3番卓がモノポリー決着しなかったため、
残り3つのテーブルのモノポリー勝ちした者が
そのまま決勝テーブルに進みます。
もちろん山本さんは決勝進出となります。
うれしい初勝利がそのまま
決勝への決定打ともなったわけですね。

決勝卓へ進む5名が決定しました。

予選1位 2000年世界チャンピオン 岡田豊さん
予選2位 島朗杯優勝 白井孝さん
予選3位 近畿地区大会1位 長崎則久さん
予選4位 九州地区大会優勝 山本尚意さん
予選5位 北海道地区大会優勝 石川隆紀さん


この5名の中から2007年度の日本チャンピオンが出ます。

この中で過去に決勝卓を経験しているのは、
もちろん岡田さんと、そして長崎さんです。
それぞれ3回目の決勝進出となります。
岡田さんは勝てば2回目の優勝。他は初優勝を狙います。


決勝テーブルに座る決勝進出者。
 画像左であいさつしているのが、
 2001年チャンピオンにて2004年世界選手権代表の植田さん。
 今回の審判長です


この5名がどんな戦いを見せてくれるのでしょうか。
昼食のあと、いよいよ今年の日本チャンピオンを決める
最終ゲームが開始されます。

会場の中央に、決勝テーブルが
セッティングされていきます。
ギャラリー席はその周囲を
ぐるりと半周するように設けられ、
反対側には囲碁や将棋の「大盤解説」のような
大きなボードが立てられます。


▲ゲームボードを実際にはって、各プレーヤーのコマの位置と、
 所有権利書などをリアルタイムで再現します。
 すごく見やすくて、好評です


さらに中継用のネットカメラが3台設置され、
中継班の席もしつらえます。
全国各地のモノポリーファンもほぼリアルタイムで
決勝戦の模様を知ることができるのです。
昨年の主役であった秋田大会の主催者は
今年も来場いただき、
賞品を提供してくださいました。


▲中継班の面々。
 ウェブでの中継といっても、
 画像でダイスの目をみせたりするだけのはつらいので、
 ここで文字実況をします。
 リアルタイムでの文字実況は、ゲームのターニングポイント、
 各プレーヤーの交渉内容解説、心理戦解説など、
 モノポリーを良く分かっているからこそできる、
 懇切丁寧なすばらしい出来ばえ。ぜひ一度はみてください。
 文字実況といえば、この人、画像真ん中左のめがねをかけた、
 宮野1999年日本チャンピオンです。
 協会的には、文字実況だけでなく、選手紹介の司会や、
 成績公表サイトの運営などで、本当にお世話になっています!


決勝戦を前に、
まずは選手とバンカーの投票で選ぶ
「ベストプレーヤー賞」が発表されます。
10票という高得票を得て選ばれたのは、
前チャンピオンの大木勝裕さんです。
実力と人格の両方が伴わないと
取れないといわれている賞であるだけに、
一同納得の結果だったのではないでしょうか。
大木さんは今年は既に予選での敗退が決まり、
連覇の夢こそは絶たれたものの、それは前述のように
岡田さんをはじめ決勝進出者たちとの
壮絶な戦いの末の結果であり、
本人もいまはすっきりとした表情で
この賞を受けていました。


▲ベストプレーヤー賞の賞品を手に満面の笑みの、
 大木2006年度日本チャンピオン


予選の白熱、更には直前の機器トラブルなどもあり、
開始予定時刻を1時間近く過ぎてしまいました。
会場の皆様、そして全国のお茶の間の、
パソコンの前で待機していたネット中継観戦者の皆様、
お待たせしてしまいました。申し訳ありません。
そしてこのレポートの読者の皆様にも、
「お待たせいたしました」ですね。
いよいよ次回は決勝戦開始です!

(原文:1999年モノポリー日本チャンピオン 宮野徹
 監修:日本モノポリー協会専務理事・
 2000年モノポリー世界チャンピオン 岡田豊)

2008-10-24-FRI

BACK
戻る