モノポリーエッセイ

2007年度モノポリー日本選手権
全国大会結果報告(その18)


こんにちは。
モノポリー日本選手権の決勝戦。
次第に佳境に突入してきました。

白井さんのオレンジが火を噴き、
それを岡田さんのレッド、
山本さんのイエローが追いかける展開。
石川さんと長崎さんは、
グリーンの交渉で浮上を狙うところです。

石川さんは長崎さんへ交渉を申し込みます。
先ほど決裂したグリーンの交渉です。
現在は長崎さんがオレンジに止まって
高額のレンタル料を支払い、
現金を減らしてしまったため、
方向性は石川さんが経営することで決まっており、
あとは条件だけです。

「現金を減らしてしまった」
 カラーグループを経営するには、
 コーン(家)を建設する資金が必要です。
 高額のマスほど高額の建設資金がかかります。
 どんなに苦労してカラーグループを揃えたとしても、
 建設資金がなければ「宝の持ち腐れ」になるだけです。
 上位プレーヤーほど、カラーグループを揃えた後に、
 残った現金でどれほど
 コーン(家)が建つのかにこだわります。
 ここでは長崎さんが資金に乏しく、
 高額の投資を必要とするグリーンを経営することは
 難しいと判断し、より手持ち資金が豊富な石川さんが
 グリーンを経営すべきと、
 交渉に関わる双方が判断したということです。


石川さんは乗り物3枚にライトブルーを付けて、
長崎さんからグリーンに更に現金をつけてほしいと要求。
関係ない権利書は全て渡すので、
自分は全力で建築に専念させてくれという意味ですね。
長崎さんは250ドルまでなら出せると回答しました。

ライトブルーと乗り物
 ライトブルーはレンタル料が安く、
 それだけで勝つのは難しいです。
 しかしコーン(家)の建設費が安く、
 手持ち資金が少ない場合でも経営できます。
 また乗り物はレンタル料が安いものの、
 コーン(家)を建設できませんので、
 投資も必要ありません。
 ライトブルー、乗り物ともに、
 手持ち資金が少ない場合に経営するに適している
 といえましょう。


石川さんは静かに頬杖をついて考えます。
このポーズは今回、何度も見受けられました。
そして回答します。
現金ベースでは同じ条件で、
ただし220ドルに売り切れていない安価な権利書を1枚、
つけてほしいという条件提示。
これは微調整レベル。問題なく成立します。

石川さんはグリーンを7軒スタート条件で
揃えることに成功しました。
7軒目は真ん中の「LUIGI'S CASA DELLA TIRES」
(ノースキャロライナ通りに相当)に建てます。
これでグリーンも十分に勝負ができる形となりました。
盤面は完全な「叩きあい」の形です。

「叩きあい」
 多くのプレーヤーが何かのカラーグループを経営して、
 コーン(家)をできるだけ多く建設して、
 手持ち資金が少なくなります。
 こうなると、
 互いに他のプレーヤーの経営するカラーグループに、
 先に止まった者から脱落するような形になります。
 このような状況を「叩きあい」と表します。



▲グリーンにコーン(家)が建設された直後の盤面の様子。
 数字が書いてあるのが、コーン(家)の数です。
 5人のプレーヤーのうち4人までは
 カラーグループを経営して、まさに「叩きあい」の状態です


そして岡田さんの手番です。
岡田さんは11を振って、
ナント! 唯一3軒目が建っている
グリーンの土地へ突っ込んでしまいます。
もちろん手持ち現金はわずかですので、
レッドに建設されたコーン(家)全てを失う、
非常に厳しい状態に陥りました。

3軒目
 モノポリーの家の建て方では、
 各土地に3軒目を建てるのが
 最も経営効率が良いとされます。
 レンタル料が2軒の際と3軒の際では
 まるで違うからです。
 グリーンの2軒目までのレンタル料は$390か$450。
 一方3軒のレンタル料は$900か$1000。
 2軒しか建っていない土地に止まるのと、
 3軒たっている土地に止まるのでは、
 まさに「天国と地獄」ほどの違いがあります。


先ほどうまくオレンジを抜けた直後であり、
気が抜けていたのかもしれません。
また近めにイエローがあったこともあり、
グリーンへの警戒が薄くなっていたのかもしれません。
もちろん、モノポリーはダイスを振って
駒を進めるわけですから、
またどこのカラーグループにも狭間に
「安全地帯」とも言える家を建てられないマス目が
あるのですから
(そのようなマス目は止まってもレンタル料は安い)、
警戒したり油断したりしたからどうこうというのは
おかしな話です。
それでも不思議なくらいに
「気を抜くと家に泊まるような目を振ってしまう」
ということが多い気がします。
あくまでも「気がする」だけなのですが、
そこを楽しむというのもゲームの遊び方の一部、
なのかもしれません。

「もしも」の話をしても仕方がないのですが、
仮にここで岡田さんが凌いでいたら、
次手番では石川さんがレッドやイエローのマスに止まって、
グリーンの経営に失敗する可能性も
決して少なくありませんでした。
その際には立場は全くの逆になっており、
今度は石川さんが救済も入らずに
家を崩すことになっていたでしょう。
将棋ではありませんが、
まさにこれは「一手勝ち」「一手負け」の世界。

モノポリーに強いということは、
勝負ターンにおいてこの「一手勝ち」をとりに行くための
先読みができるかどうか、というのも大きい気がします。

もちろん、何度も言いますように
ダイスやカードで駒の動きを決める以上は、
予想以上に駒が進む、進まない、
あるいはどこかへ飛んでいってしまう、
などという現象がいくらでも起こりえますから、
正確に計算や読みができれば必勝なのかというと
決してそうでもない。
最後は運に支配されるからこそ、
誰が勝ってもおかしくない。
そしてそれゆえにモノポリーは、
「いつ誰とでも楽しめるゲーム」なんですね。

しかしそれでも、
「少しでも確率上有利な立場とする」ために、
選手たちは先を読み、策を立てるのです。
結果がどう出るかは別にして。
そこが楽しむ要素の一つであるということも
またもちろん、事実です。

(原文:1999年モノポリー日本チャンピオン 宮野徹
 監修:日本モノポリー協会専務理事・
 2000年モノポリー世界チャンピオン 岡田豊)

2008-10-31-FRI

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