モノポリーエッセイ

2007年度モノポリー日本選手権
全国大会結果報告(その19)


こんにちは。
モノポリー日本選手権の決勝戦。
大きな転機を迎えました。
岡田@2000年世界チャンピオンが
多額の支払いを負うこととなり、
会場内に衝撃が走ったところです。

20世紀のモノポリーならここで再起は無理。
一度でも経営に失敗するとジ・エンド。
あとはただひたすら破産を待つのみ。

でも21世紀のモノポリーは違います。
ここからどこまでがんばれるかが問われます。
経営に失敗したカラーグループを、
経営できそうなプレーヤーに譲って、
より少ない資金で経営できるカラーグループや
投資のいらない乗り物などを譲り受けて、
少しずつ現金をためながら、じっくり再起を待つ。
そんな戦法で十分逆転が目指せる時代になりました。
現実のビジネスの世界に照らせば、
丸の内にオフイスを構えていても、
ひとたびビジネスに失敗したら、
家賃の安い新宿や新橋などにオフイスを移転して、
再起を待つようなものですね。

当然、岡田さんもレッドの経営に失敗したとしても
めげることはなく、簡単にあきらめません。
レッドを誰かに譲って、
自らはじっくり再起を図ることを模索します。
焦点は、決勝の5人の中で、
唯一コーン(家)に多額の投資をしていない長崎さんが、
この局面をチャンスとしてとらえるかどうかです。
長崎さんは最初にオレンジにとまって、
まとまった出費があり、
今はおとなしく再起を待っている状態。
どこかで勝負をうちたいところです。

岡田さんからの提案は、
長崎さんがレッドに7軒建つ条件で、
残りの全ての権利書を岡田さんが引取るということ。
次の手番はオレンジを経営する白井さんで、
レッドの手前にいます。
オレンジといえば長崎さんがレンタル料を払ったばかり。
つまり「反撃」のチャンスでもあります。

7軒
 この連載で何度も登場するキーワードですが、
 モノポリーの家の建て方では、
 各土地に3軒目を建てるのが
 最も経営効率が良いとされます。
 レンタル料が2軒の際と3軒の際では
 まるで違うからです。
 7軒を建てるということは、
 3箇所の土地がセットのカラーグループで、
 (2軒、2軒、3軒)というふうに、
 どこか一つが3軒目になっている状態を指します。
 勝負できる状況だといえましょう。


さらに「もっと重要な情報」がありました。
チャンスカードの中に
レッドの「モンスターズインクへ行け」というカードが
あります。
このカード、実はこのゲームで一度も登場していません。
岡田さんは今回のメンバーの性格や先方を考慮して、
交渉がなかなか成立しない長いゲームになると想定し、
チャンスカードがこれまで何枚引かれたか
カウントしていました。
モノポリーではチャンスカードが16枚しかなく、
引いたカードはカードの山の最下部に置かれますので、
一度引かれたカードは16枚引き終わるまで、出てきません。

チャンスカード
 引いたカードに書かれているイベントに従います。
 「○○に行け」という移動系のイベントが多いです。
 移動させられた土地にコーン(家)が林立していますと、
 多額の支払いが必要になります。
 そこで別名「ピンチカード」とも呼ばれています。
 移動系のイベント数枚だけでも既に出たかどうかだけ、
 覚えておけば戦略に幅が出てきます。


これまで十数枚、チャンスカードが引かれており、
残りはわずか!
このわずかの中にレッドの
「モンスターズインクへ行け」というカードがあります。
つまり高確率で「モンスターズインクへ行け」という
イベントが起こるということなのです。

岡田さんがレッドの経営を選択したのは、
実はこの「モンスターズインクへ行け」という
カードの存在があります。
最初にカラーグループを揃えることは、
他のプレーヤーからマークされることとなり、
結構厳しい状況でもあります。
しかも軒数が多くなく、かつレッドの権利書以外は
何ももっていません。
しかし、岡田さん自身がGoマス手前で
かつレッドにすぐに止まってくれそうなプレーヤーが
いるため、Goマスで給料をもらうか、
誰かがレッドに止まって
レンタル料を受け取ることができるなら、
レッドに7軒目を建てることができます。
この7軒目をモンスターズインクに建設し、
チャンスカードで他のプレーヤーが
モンスターズインクに止まってくれたら、
一気に流れを引き込めます。
ここに岡田さんは賭けたのでした。

賭けは実りませんでした。
すぐには岡田さんの経営するレッドに
他のプレーヤーが止まってくれず、
岡田さんもGoマスは通過したものの、所得税の支払いで、
給料の全てを失う不運。

Goマスと所得税
 Goマスは通過すれば給料がもらえます。
 しかしそのGoマスから4マス目に所得税のマスがあり、
 もらったばかりの給料を全て奪っていきます。
 そのため、Goマスを通過して所得税に止まることを
 業界的には「チャラになる」といいます。


ただし岡田さんの「賭け」は
他人が引き継ぐことのできるものです。
なぜなら「モンスターズインクへ行け」というカードは
まだ出ていないからです
誰かがレッドを経営して、7軒目をモンスターズインクに
建設すれば、一気に勝負気配です。
岡田さんはそれを見越して長崎さんに
オファーを出したのでした。

しかし長崎さんは最終的に
岡田さんのオファーを断ります。
長崎さんは一気に勝負をかけるということを
そもそもあまり好まれないのかもしれません。
また岡田さんが世界チャンピオンになった2000年、
長崎さんは岡田さんと
日本チャンピオンの座を争っています。
その際、長崎さんは岡田さんと交渉をまとめて、
結果的に岡田さんの後塵を拝しています。
このあたりが今回の交渉に影響したのかもしれません。

岡田さんも
「モンスターズインクへ行け」というカードが
そろそろ出そうだという「超重要情報」を
交渉時に敢えて明かしませんでした。
日本チャンピオンを争うゲームである以上、
日本チャンピオンにならんとするなら、
この「超重要情報」はぜひ自ら察して欲しい、
そんな気持ちだったのかもしれません。
そして結果的に交渉は決裂し、
レッドのコーン(家)は1軒もなくなってしまいました。

次の手番はオレンジ経営者の白井さんです。
レッド手前ではありますが、
レッドはすでにコーン(家)が一軒もありません。
白井さんは少しだけほっとした感じで
ダイスをふったところ、
チャンスカードに止まることとなりました。
そしてめくったところ、なんと
「モンスターズインクへ行け」!!!!!

勝負というのはまさに「非情」ですね。
「もし」があれば、
長崎さんはレッドに7軒コーン(家)を建設して、
モンスターズインクは3軒立っていたはず。
そしてこのカードによって、
先ほど痛い目に合わされたオレンジに大打撃を与えて、
自らは現金も豊富。
決勝進出3回目で、
悲願の日本チャンピオンに近づいたはずでした。
長崎さんにとっては
誠に惜しまれる「逸機」でした。

(原文:1999年モノポリー日本チャンピオン 宮野徹
 監修:日本モノポリー協会専務理事・
 2000年モノポリー世界チャンピオン 岡田豊)

2008-11-02-SUN

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