モノポリーエッセイ |
2007年度モノポリー日本選手権 全国大会結果報告(その22) こんにちは。 モノポリー日本選手権の決勝戦。 2007年の日本チャンピオンの座を巡る連載も、 ついに最終回になりました。 最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。 ここまで生き残っている選手はもうたったの3名です。 石川さんはグリーンの経営を成功させた後、 機を見てレッドに転換し、現在トップ。 山本さんはイエローで勝負をかけていますが、 9軒まで建てては崩れるという展開。 長崎さんはライトブルーと乗り物で我慢の展開。 駒位置は、山本さんと長崎さんがGoマスを過ぎたところ。 石川さんが刑務所に入ったところです。 Goマス、刑務所 Goマスから最も止まりやすいのは ライトブルーのマスです。 やや安価な土地ながら、 Goマスでせっかく得たはずの給料を 奪われてしまう可能性があって、 なかなかくせものですね。 また刑務所から最もとまりやすいのはオレンジです。 刑務所に入る確率は結構ありますので、 その刑務所からとまりやすいオレンジは、 非常にとまりやすいカラーグループといえます。 日本では最も人気の高いカラーグループでしょう。 ▲トイレ休憩中の選手を待つ間に、 キーになる交渉をふりかえる、 岡田@2000年世界チャンピオン(左端)と 山本さん(右端)。 日本一を決定するゲームといえども、 熱くなる一方というわけではなく、 選手間でいろんな話もあったりします ▲終盤のヤマ場。 石川さんは2つのカラーグループを経営していてリード。 画面奥のイエローを経営する山本さんと 画面手前のライトブルーを経営する長崎さんは、 協力して石川さんになんとか打撃を与えたいところ 山本さんから長崎さんへの交渉内容は、こうでした。 長崎さんのオレンジ以外の物件を山本さんが買い取り、 オレンジに7軒を建てることができる条件です。 7軒 モノポリーの家の建て方では、 各土地に3軒目を建てるのが 最も経営効率が良いとされます。 レンタル料が2軒の際と3軒の際では かなり違うからです。 7軒を建てるということは、 1箇所の土地がセットのカラーグループで、 (2軒、2軒、3軒)というふうに、 どこか1箇所が3軒目になっている状態を指します。 なんとか勝負になる状態といえましょう。 ここまで我慢してきた長崎さんは、じれてしまったのか、 これを受けてしまいます。 オレンジという勝利が狙えるカラーグループでの勝負が、 とても魅力的に映ったのでしょう。 まだ石川さんは 次が刑務所から強制出所となるわけではありません。 つまりオレンジに石川さんは すぐにはとまりそうにありません。 山本さんがライトブルーに泊まるかどうかを見てからでも 十分によかったかもしれません。 ちょっと早計だったかもしれません。 山本さんと長崎さんは 予選2回戦においても対戦しているのですが、 その時にも山本さんから長崎さんへの交渉で、 カラーグループの転換を持ちかけて、 長崎さんはそれを受けた結果、 モノポリー勝利しているのです。 このときの「成功した記憶」も手伝ったのかもしれません。 カラーグループの転換 とまる確率の低く、 とまってもそれほどレンタル料が高くない カラーグループは、最後まで経営していても、 なかなか勝てそうにありません。 そのため、より勝利に近づくために、 経営するカラーグループを、 より勝利に近そうなものに乗り換える、 これをカラーグループの転換といいます。 石川さんがグリーンからレッドに乗り換えたのは その典型例ですね。 もっとも、 ではもう1ターン、ないしは2ターン待ってから、 となると、今度はどうなるかわかりません。 山本さんは自分の駒がオレンジの手前まで来てしまうと、 このような交渉はもうしなくなるでしょう。 そうなると長崎さんとしては、 更に次のチャンスを待つまでに、 今度は自分がレッドやイエローの高額地帯を 無事に通過できるという保障はどこにもないのです。 ですから長崎さんも 「今しか買ってもらえない」 「今しか先手を取りにいけない」 という判断だったのはもちろんあるでしょう。 非常に微妙ですが、 全くのミスとも言えない局面ではありました。 結果的に、長崎さんは先に自分が乗り物に止まって オレンジの家を崩してしまいます。 山本さんは、先ほどの長崎さんとの交渉で、 自分の目の前にコーン(家)が林立していたライトブルーを うまい具合に払拭できたのですから、 結果だけ見ればほぼ一人だけ「得をした」という形です。 しかもそのオレンジも自分が行く前に崩れてくれた。 「このゲーム唯一の、悪知恵が働いた瞬間でした」 こうなると山本さんにとっては、 その長崎さんのオレンジを、 イエローも含めた自分の手持ち権利書全てを投げ出して 交換してもらうという手があります。 そうしてオレンジにホテルを建てて石川さんの出獄を待つ。 入れば一発逆転。 まさに伝説の逆転劇となるところだったでしょう。 しかし残念ながら、それは夢幻で終わってしまいました。 山本さんは「SCREAM POWER」(電力会社に相当)から 「8以下」と念じてダイスを振りますが、 無常にも目は9でした。 レッドの土地「SULLEY & MIKE'S APARTMENT」 (ケンタッキー通りに相当)に泊まってしまい、 875ドルの支払いです。 ▲石川さんリードの流れを変えることができずに、 厳しい表情の山本さん ここは長崎さんの協力も得て イエロー2軒ダウンで凌ぎますが、 更に続けて次の周回でもレッドに止まってしまいます。 これでとうとうイエローも全壊します。 長崎さんもレッドに止まり、破産となります。 過去2回決勝卓へ進み、 2回とも準優勝という好成績だった長崎さん。 今回は決勝3位となりました。 最後に残った2名は、石川さんと山本さん。 とはいえ、さすがにここからの逆転は もう厳しいでしょうね。 山本さんは刑務所に入りますが、 もはや投了ということなのでしょう。 1回目で「出ます」と宣言して銀行に50ドルを払って ダイスを振ります。 そして最後はオレンジのマスである 「GUSTEAAU'S RESTAURANT」 (セントジェームズプレースに相当)へ。 オレンジには直前に石川さんが9軒建てており、 550ドルの請求がきます。 これは払えません。破産となります。 この土地はピクサーの最新作、 邦題「レミーのおいしいレストラン」の土地です。 石川さんにとって文字通り 「おいしくいただきました」 といったところだったでしょう。 モノポリー日本選手権。 今年の日本一となったのは、 北海道代表の石川隆紀さんです。 昨年の大木さんに続いて、 2年連続で北海道代表の全国優勝となります。 1998年の千葉さんも含めて、 これで北海道代表の選手が全国優勝するのは 3人目となります。 ▲日本チャンピオンの証のワッペンを張ったジャケットを着て、 満面の笑みがこぼれる石川新チャンピオン 石川さんのお住まいは関東ですが、出身が福井県の方で、 北海道の大会に出場し優勝されたのです。 そのときの打ち上げの席で、 「北海道代表としてがんばります」と 挨拶してきたそうです。 その「公約」を見事に果たしました。 ▲後方の審判長、大会委員長とともに 記念撮影に応じる決勝進出者5名 モノポリーは誰でも楽しめる、誰でも勝てるゲームです。 強くなればそれだけ楽しめるし、 それだけ勝てるようにもなれますが、 それでも運の要素があるために「必勝」というランクは 存在しません。 それが最大の魅力なのです。 事実、毎年のように、 ほとんど経験のない方が 全国大会への切符を手にされています。 今年も初めて大会に経験された若い女性の方が、 全国大会に進まれることになりました。 つまり、誰でも日本選手権に出場できる可能性がある。 日本チャンピオンに、世界チャンピオンになれる可能性が あるのです。 これを読まれている方も、 ぜひ一度お近くの大会に遊びにいらしてみませんか。 それは気軽で簡単に持てる ひと時の楽しい週末であると同時に、 遠くしかし確実に繋がっている 世界チャンピオンへの確かな第一歩でもあるのです。 そんな不思議で魅力的な空間へ。 次はあなたもご一緒にどうでしょうか。 お待ちしております。 (原文:1999年モノポリー日本チャンピオン 宮野徹 監修:日本モノポリー協会専務理事・ 2000年モノポリー世界チャンピオン 岡田豊) |
戻る |