モノポリーエッセイ |
2008年度モノポリー日本プレーヤー権 全国大会結果報告(その3) こんにちは。 昨年の日本一決定戦 「2008年度モノポリー日本プレーヤー権全国大会」は 去る2008年11月15日、16日に 東京・中野サンプラザで開催されました。 その3回目の報告となります。 現在、予選1回戦が終了し、 石井さんがダントツの単独首位。 引き続いて予選2回戦に突入します。 今回は何かと話題の多かった予選2回戦の様子を、 詳報いたします。 まずは2回戦3番テーブル。 ここにはなんと百田@1988世界チャンピオンと 岡田@2000年世界チャンピオンの、 「二人の世界チャンピオン」が同席となりました。 当然、ギャラリーも数多く集まります。 モノポリーで権利書は28枚。 今そのうち27枚まで売れてしまいました。 各プレーヤーの手札を見ますと、 そこそこ順調に購入できている百田さんに比べて、 岡田さんはなんと1枚も購入できていません。 地方大会などでは最初から 「2枚配り」などのルールを使う場合もあるため、 このような「不運」は発生しないでしょうが、 全国大会ではこのような「試練」も待ち受けています。 岡田さんは最後まで売れ残っていた ダークブルーの「リガ」を かろうじて購入します。 もう1枚のダークブルー*の権利書である 「モントリオール」の持ち主は、 百田さん。 さて圧倒的に出遅れた岡田さんは ここからどのように立ち回るつもりでしょうか。 *ダークブルー モノポリーでは最高の価格を誇るカラーグループ。 超高額の収入が期待できる半面、2マスしかない (他のカラーグループの多くは3マス)ので、 止まる確率は低いです。 確率が低いものの、一撃必殺の破壊力なので、 ドラマチックな逆転劇といえば このカラーグループでしょう。 扱い方がやや難しいので、 ベテラン勢にはあまり好まれないようです。 「リガ」を購入した岡田さんは、 即、「モントリオール」を持つ百田さんに ダークブルーに関わる交渉を持ちかけます。 具体的には、岡田さんが「リガ」に現金を更につけ、 百田さんがダークブルーに いきなりたくさん家を建てられる状態にして、 百田さんのもつほかの権利書5枚を 全てもらってくるという内容。 予選1回戦は膠着したゲームが多かったため、 予選2回戦で大勝すれば、 例の予選1、2回戦計で 優先的に決勝に進出できる可能性が広がります。 それだけに一発勝負にも魅力が出てきます。 お互いにとって思い切った交渉となりましたが、 この交渉は成立します。 百田さんはダークブルーに6軒*建てて 直後の2人の「お客さん」を待ちます。 今回のダークブルーには すぐに止まりそうなプレーヤーがいるのも魅力的でした。 *ダークブルーに6軒 モノポリーでは通常、各マスに3軒家を建てるのが、 経営効率がいいとされます。 3軒目に急にレンタル料が跳ね上がるからです。 ここは2マスですので3軒づつ 家を建てることになります。 ダークブルーはモノポリーで 最高の価格を誇るカラーグループ。2マスしかない (他のカラーグループの多くは3マス)ので、 止まる確率は低いのですが、破壊力は抜群です。 3軒だと相当の破壊力となります。 岡田さんは、今回は最後の最後まで 1枚も買うことができませんでしたが、 その最後にダークブルーという 「切り札となる1枚」を購入できました。 もし本当に何も権利書が購入できなかったら そのときはどうすればいいのでしょうか? 何もせずに誰かが苦しくなるのを待つ? 確かに、うまくいけばそれでも浮上できるかもしれません。 でも誰かが苦しくなるということは、 盤上にそれだけ「危険な土地」が出現しているということ。 そんな世の中を何の武器も持たない状態で 自らも渡り歩いていかなければいけないことを考えれば、 非常にハイリスクな「後攻め選択」となる可能性は 低くないでしょう。 やはりモノポリーでは、積極的に交渉を仕掛けて、 先に動いたプレーヤーほど有利になる、 そのような側面が強いといえるはずです。 もし本当に自分が権利書を1枚も購入できなかったら、 その分、他のプレーヤーの手元には 権利書が多めにあるはずです。 もっといえば、 「権利書はたくさん買えたけれども、 お金が少ないので、 すぐにはカラーグループの経営は難しいかなあ‥‥」 と考えていそうなプレーヤーがいるはずなのです。 そういうプレーヤーに積極的に話しかけて、 お金をたくさんあげる交渉をしましょう。 タイミングを見誤らなければ、 きっと相手にとって魅力的な条件が見つかるはずです。 これが何もせずにぐるぐる周回を続けていると、 そういったプレーヤーもサラリーなどで現金を増やし、 普通にカラーグループを揃える交渉を 始められるようになり、 「あなたの支援は必要ありません、 どうぞ建てた家にお越しください」 という時代になってしまいかねません。 権利書が買えないゲームでは、 場に現金が不足しているときに動く。 これが肝要でしょう。 さて、百田さんの仕掛けたダークブルーは 確率が低いけれど、 破壊力抜群で、まるで「地雷」です。 そしてこれを早速踏んでしまうプレーヤーがいました。 山本さんです。 モントリオール3軒にとまって14M<メガ>ドル (通常のモノポリーでは1400ドル。 ワールド版は通常のモノポリーの1万倍となります) の支払い。 ギャラリーも含めていっせいに悲鳴と歓声があがります。 山本さんはなんと1回戦に続く連日の 「14M踏み」となりました。 普通ならば 「ああ、もうこのゲームは負けた。だめだ」 と思ってしまう人も少なくないでしょう。 苦笑しながら場を離れているギャラリーも 散見されるシーンです。 しかし上級者はこういった高額負債を背負った後の 「リカバリー」が実に上手です。 そうです。 まだまだ「あきらめるのは早い」のです。 しばらく他を回った後に、 再びこの3番テーブルを見たギャラリーの一人は、 その光景に目を疑ったそうです。 なんと、山本プレーヤーは 有力カラーであるオレンジを経営しており、 しかも結構な軒数まで家を建てているではありませんか。 いったいどんな魔法を使ったのでしょうか。 もちろん、最初から手元に14Mを支払って まだまだ有り余るくらいの 膨大な現金があったというわけでは、 決してありません。 いったいどのような「錬金術」を使ったのでしょうか。 どうやら山本さんは、一見有利になった百田さんに、 ダークブルーに続くカラーグループの経営をすすめ、 うまく百田さんから現金を引き出します。 その後、岡田さんと一緒に、 不利な者同士、徹底的に協力体制を組んで、 百田さん包囲網を形成。 その過程で山本さんや岡田さんは、 カラーグループを経営して、 着実に反撃を加えだしたのでした。 結果的に、山本さんは 百田さんが追加経営したカラーグループに、 何度も痛い目にあってしまいました。 しかし、一歩間違えれば? 逆転勝利も 十分にありえるところまで 回復していたというのも事実です。 どんなに不利でもあきらめてはいけないという 実例になったのではないでしょうか。 また特筆すべきは、 このゲームの参加者も見学者も多くが、 最後までゲームを非常に楽しんだということ。 不利になってから「スイッチが入った」山本さんの例を あげるまでもなく、 不利でも十分楽しめるのが、モノポリーの良さ。 思い切った勝負に出た百田さんともども、 モノポリーを楽しむことが出来る方が多かった卓では、 全員が楽しめます。 こんなゲームをしたいから、 モノポリーを続けているのですね。 このテーブルでは、 百田さんが優勢のまま時間切れとなりました。 岡田さんの「大型交渉」や、 山本さんの「リカバリー」など、 目を見張るような大きな動きが 多々見られたゲームでしたが、 最後は世界チャンピオンが がっちりと勝利をつかんだ形となります。 百田さんは、ここまでの暫定2位となり、 決勝への進出が決定します。 日本プレーヤー権出場17回、優勝2回と 数々の最多記録を誇る百田さんですが、 決勝への進出は1998年以来となり、 久しぶりという印象があります。 実は百田プレーヤーは今回、 「今年はわけあって勝ちにこだわります」 などと公言していました。 まさに有言実行。そのとおりの決勝進出です。 次回ではさらに予選が続きます。 (原文:1999年モノポリー日本チャンピオン 宮野徹 監修:日本モノポリー協会専務理事・ 2000年モノポリー世界チャンピオン 岡田豊) |
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