モノポリーエッセイ

モノポリー世界チャンピオンへの道その2
「見果てぬ常勝の夢」
〜Road to 2009 Monopoly World Champion〜


こんにちは。
不定期連載といいながら、
珍しくスタートダッシュを決めて、
短期間のうちに連続掲載となります。

前回はモノポリーが運の要素が強いゲームということを
書きました。
運の要素が強いゲームならほかにもいっぱいあります。
ではなぜモノポリーにはまるのでしょうか?

世界チャンピオンになれるというのは
理由の一つではありますね。
「世界チャンピオン」、
なかなか味わえない、甘美なフレーズですね。
運だけであってもその頂に到着できるなら、
試してみたいというのはありそうです。

でも、運だけで世界チャンピオンになるのは
かなり大変です。
気の遠くなるような確率の低さで、
宝くじで3億円当たるより大変そうにみえます。

例えば日本人が世界チャンピオンになるケースを
考えましょう。

1月9日に開催されるような
「モノポリー日本一決定戦」に招待される枠が
設けられているモノポリー大会で成績上位になる
→モノポリー日本一決定戦で優勝し、
 日本チャンピオンになる
→過去4,5年の日本チャンピオンと争い、
 世界一決定戦の日本代表になる
→モノポリー世界一決定戦で優勝し、
 世界チャンピオンになる

という道のりが必要です。
詳しくはここをみてください。

宝くじ同様に参加しないことには可能性はありませんが、
単なる運だけで世界チャンピオンになるのは、
全世界に5億人以上のユーザーを抱えることを考えると、
相当に厳しい道のりです。

こんな考え方もできます。
世界各国の代表は運のいい人ばかり、
その中で最も運のいい人になるのは
天文学的な確率の低さのはず。
私も世界選手権で、普通は考えられない、
確率を超越したかのようなサイコロの目を
何度も目の当たりにしています。
こんな人たちを相手にするのかと思うと
それこそ「ぞっと」してしまいますね。

では、このようなサイコロの理不尽さを乗り越えて、
人はなぜモノポリーにはまるのでしょうか?

私が思うに、2つほど理由があります。まずは、
「サイコロの理不尽さを凌駕するテクニックがある」
と信じるからです。
「テクニックを講じればリスクなく勝てる」
という思想ともいえ、
「ディフェンス」が得意な日本人に多い思想ですね。
リスクを低減するためにはどんな努力を厭わない、
リスクが本当に低減可能かどうか、
よくわからなくても本当に一生懸命がんばります。

性格的にどうしても保守的という方は
この思想ではまります。
あと経験の浅い方もこの思想にはまります。
知人や家族だけで遊んでいた時は
運だけで決まっていたと思うのですが、
テクニックに目覚めていく段階で、
ものすごくリスク回避できるようになったと
感じるのですね。

あとこのタイプの方が得意なのは、
大会における特別ルールや、
優勝者選抜システムに応じて、
戦法を変えることです。
これらは経験値が左右しやすい部分であり、
ベテランプレーヤーが
ビギナーよりやや優位にたてることは間違いないです。

今、アメリカでは毎週のように大会が開催されていて、
常連という方々も徐々に出てきているようです。
そうした中には以前に比べてテクニックを駆使される方が、
増えているように聞いています。
大会では毎回のように上位に食い込む方が現れつつあり、
その中には彼らなりのテクニックを講じる方も
いらっしゃると聞いています。
またモノポリー勝ち(全員を破産させ、
ただ一人の勝者になること)よりも、
2,3位になることを目指すテクニックなるものも
あります。
大会で優勝するために
ゲームにおいて少しでも
いい順位で終える必要があることが多いからですね。

例えばアメリカやイギリスで特有のテクニックとして
「自力狙い」があります。
*自力:他人と交渉せずカラーグループを独占すること。
 モノポリーの場合、カラーグループを独占して、
 家やホテルを建てることが勝利の必須条件だが、
 それゆえ、簡単には独占させてくれない。
 交渉相手も勝ちたいからである。
 たとえ交渉してカラーグループを独占できたとしても、
 交渉相手も勝利につながる大きな利益を得ているわけで、
 交渉が自分の勝利だけに直結しているわけではない。


でも交渉なしに独占できれば
自分だけものすごく有利にたてる。
最もリスクの高い、最後の交渉をしなくて済むからだ。
そのため、売り切れていないカラーグループに的を絞り、
3つのマスあるカラーグループなら
まず2枚をそろえる努力はおこなうものの、
最後の1枚は交渉ではなく
自分でそのマスに最初に到達して購入しようとする。
リスク回避という意味では
わかりやすいテクニックでもある。

ディフェンシブな戦法ですが、
今、世界的には大はやりです。
このたびモノポリー日本一決定戦に参加された
二人の外国人も、このテクニックを選択しがちでした。

でもよく考えてみてください。
そんな相手の狙いがわかっているなら、
そのテクニックにわざわざ翻弄されることもありません。
実際に、モノポリー日本一決定戦に参加された
二人の外国人も、この戦法はほとんど通用しませんでした。
交渉相手のみがリスクを軽減するということは、
自分のリスクが上昇するということ。
そもそも「自分だけ利益」というところに、
交渉の破綻が予期されていますね。

じゃあ、リスク回避テクニックの向上以外で
どんな理由でモノポリーにはまるのでしょうか?
それは、一言でいいにくいのですが、
「サイコロの理不尽さを受け止め、
 それに精一杯対応していくことのおもしろさ」
のようなものだと思います。

例えば、あるプレーヤーが
サイコロのおかげで圧倒的に有利になった際に、
不利に置かれた他のプレーヤーは
「座して死を待つ」なんてありえません。
サイコロで不運になったプレーヤーどうしが結託して、
リードしているプレーヤーを追い詰めます。
逆にリードしているプレーヤーはそのリードを守るべく、
他のプレーヤーの結託を阻止せんとします。
その際、全くリスクなくというわけにはいきません。
結託する相手は「奴隷」ではありませんので、
いずれはあなたを乗り越えて勝者を目指す存在だからです。

その攻防に関するテクニックは磨き甲斐があります。
なぜならゲームをおもしろくしようとする
テクニックだからです。
サイコロに関わらず、
参加している全員が
なんとかして勝利を目指せる展開に持ち込む。
最後は「武運拙く」サイコロの目で
敗れてしまうかもしれませんが、
途中までは勝利に近づけたという達成感、
序盤の圧倒的不利を打開して逆転した時の爽快感。
このあたりが、勝った負けたを乗り越える
モノポリーの魅力ともいえます。

勝利至上主義でリスクを管理するのはつらいです。
不利なサイコロの目を出した自分さえも呪うという、
非常に厳しい立場に追い込まれかねません。
一方、リスクに対応することは楽しいことばかりです。
サイコロを嘆くこともなく、
参加者全員の満足度も高まります。
みんなが楽しめれば、勝者への賞賛も大きくなります。

今、世界のモノポリーは
徐々に「リスク管理」に目覚めつつあります。
「見果てぬ常勝の夢」を追っているのかもしれません。
日本でもちょうど90年代後半まで
そんな状況だったように思います。
その後、日本では第二の魅力、いわば
「人心を尽くして天命を待つ」
的なものにはまる人が増えているように思います。

日本一決定戦に参加されたアメリカ人二人が
この「Japanese style」を理解してくれたかどうか、
わかりません。
また日本でも全ての方が同じ方向を
向いているわけではありません。

「Road to 2009 Monopoly World Champion」
ではこれまで以上にこの二つの魅力が
激しくぶつかった過程ということができると思います。
次回以降は、その様子を、モノポリー日本一決定戦
「2009年度モノポリー日本選手権全国大会」に
みたいと思います。

(文章:日本モノポリー協会専務理事・
    2000年モノポリー世界チャンピオン 岡田豊)

2011-01-04-TUE

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