イベント開催のお知らせ。

2003年度モノポリー日本選手権全国大会の結果詳報
(全5回)
〜第5回モノポリー日本一は誰に〜



こんにちは。
モノポリー日本一を決定する大会、
「モノポリー日本選手権」のレポートも
いよいよクライマックス、
今回は決勝テーブルの模様をお送りいたします。

決勝戦を戦う5人の選手を簡単に紹介しておきましょう。

佐藤英一選手:
昨年度の5位入賞によるシード選手です。
今年も非常に強く、予選では3戦全勝、
うち2戦はモノポリー勝利でした。
他を寄せ付けない圧倒的な強さで、
2回戦終了時点で早々と当確を出していました。
2年連続の決勝進出です。
本人はさかんに
「あとひとつ勝たないといけないのか〜」
と呟いていたところに
若干の疲労が感じられるでしょうか?
最後のひと踏ん張りに期待したいところです。

有澤達也選手:
新潟の佐渡島で行われた「おけさ杯」の優勝により、
日本選手権に進出しました。
佐藤さんと同じく予選3連勝で、
こちらは初の決勝進出となります。
各地の大会に参戦して上位の成績を残す
ベテラン選手ですが、
一方で「いまいち隊」と呼ばれるほど
「惜しい成績」も多いといわれている選手でもあります。
今回、日本チャンピオンになって、
晴れて「いまいち隊」を卒業したいところでしょう。

山本昌穂選手:
昨年準優勝。シード選手です。
今年はもう目指す目標は一つ、優勝しかありません。
しかも昨年破れた相手、
日本チャンピオンの井元さんは
同じこの決勝テーブルにいるのです。
雪辱の機会としてはこれ以上のものはありません。
既に先ほどの予選3回戦では、
その井元さんとの直接対決を行い、
壮絶な振り合いの末に
ご自身がモノポリー勝利を達成しています。
今日の勝負強さは
現役日本チャンピオンにも負けていないといえるでしょう。

表寺修選手:
7月に開催されたモノポリー名人戦の優勝者です。
モノポリーだけではなく、オセロやバックギャモンなど、
幅広くボードゲーム全般で活躍しているプレイヤーです。
モノポリーでは今までの
自己最高記録(全国6位)を上回ることが
既に確定しているためか、
リラックスしているように見えます。
自然体で臨む、といったところでしょうか。

井元哲也選手:
昨年度優勝の日本チャンピオンが連覇を目指します。
本人によれば、ご自身の連覇よりも、
決勝テーブルに唯一残った「関西代表」として頑張ります、
との宣言です。

5名とも経験・技術・実績ともに申し分のない、
誰が勝ってもおかしくないメンバーばかりです。
さすがにこのテーブルにまで登りつめてくるためには
運や勢いだけでは難しいようですね。
観客がぐるりと決勝テーブルを取り囲み、
日本一を決めるこの一戦に熱い視線を注いでいます。
隣では「大盤解説」も並行実施。
人垣で直接テーブルが見えにくいギャラリーのために
リアルタイムで現状を表示しています。
いよいよダイスが投げられました。

まずは、権利書がバラバラに売り切れていく展開。
誰が口火を切って交渉を始めるのか、
ギャラリー達も固唾を呑んで見守ります。
これは動きが悪くなると見たのか、井元さんが先行経営。
ダークブルーを
裸で(他の権利書を持たない状態で)揃えて、
4軒スタートします。
一方で佐藤さんがレッドを揃えて家をとりあえず5軒建築、
自分の駒は安全な刑務所に入るという形。
表寺さんがオレンジをやはり裸で8軒経営スタート。
山本さんはグリーンに3軒立てます。
有澤さんはいきなりパークプレース2軒に入ってしまい、
痛い痛い500ドルの出費があったため、
やむをえず他の人に揃えさせて
残った権利書(通称“端切れ物件”)を集めて我慢の形。
一方で真っ先に大きな収入を得た井元さんは、
しかしその直後に自分もオレンジに止まってしまい、
550ドルの出費。
表寺さんのオレンジに収入が入ったことは重要です。
増築し成長したオレンジは
しばしば混戦を抜け出して
独走状態に入る力を持つからです。
他のプレイヤーたちは
表寺さんが独走態勢に入らないように、
無理をして自分の経営カラーに家を増築し、迎え撃ちます。
しかし表寺さんはここ一番で強いダイスを振り、
これらを回避。
逆に山本さん、井元さんが
物品税のマスの支払い75ドルを払えずに、
グリーン、ダークブルーの家がそれぞれ1軒ずつ崩れます。
全力で投資をしたツケが回ってきたわけですね。
しかしもちろん、表寺さんというライバルを
狙わなくてはいけない状況でしたので、
ここは勝負をかけるしかなかったと思います。

さて、盤面は大きな山場を迎えました。
井元さんがダークブルーに再び5軒目を建築、
佐藤さんもレッドに7軒目を建築。
皆の駒が刑務所付近に集まってきます。
ここで表寺さんも当然勝負をかけます。
オレンジが9軒に増築。
ここからの一投は勝敗を左右することになりそうです。
まず、井元さんは、フリーパーキングへ抜け、セーフ。
続く佐藤さんも共同基金のマスに着地し、
オペラのカードで全員から現金を徴収、
更に再び刑務所に逃げ込むという離れ業を見せます。
さすがにここまで来る人たちはダイス運も
カード運も並ではないですね。
有澤さんはGOマスまで飛びます。
これは全員がオレンジを回避するのか?と
観衆が思い始めたかもしれません。
しかし最後の山本さんがニューヨーク通りへ突っ込みます。

さあこれでオレンジが成長して12軒へ。
こうなるともういつでもホテルにできることもあり、
非常に強い形です。
ただし、井元さんのダークブルーも5軒建っており、
特にボードウォークは1400ドルのレンタル料なので
ここに入ればまだまだ十分に逆転がありえます。
佐藤さんのレッドも8軒で勝負をかけており、
イリノイ通り750ドルにお客が来れば
レッドも十分に勝負圏内となります。
ここで表寺さんと有澤さんとの間で交渉が成立し、
表寺さんがライトブルー3枚を、
有澤さんは鉄道4枚をそろえました。
オレンジに加えてライトブルーも手に入れた表寺さんが
地盤をより強固に固め、
一方の有澤さんは鉄道でこつこつ現金を貯めつつ
有力カラーへの転換のチャンスを待つ
という形にしたわけです。

しかし有澤さんは残念ながら
その後すぐにオレンジの土地に止まってしまい、
力を蓄えるまもなく「仮破産」となってしまいました。
レンタル料を支払うことができないプレイヤーは
「破産」となり、ゲームから脱落していきますが、
そのプレイヤーの持っている物件に価値を見出して、
高値で引き取ってくれる他のプレイヤーがいる場合には、
「救済」が成立し、破産を免れます。
この救済があるかどうかを確認するまでの間の状態を
「仮破産」と呼んでいるわけです。
有澤さんの「仮破産」は微妙でした。
不足額は375ドル程度と
それほど膨大ではありませんでしたが、
何せほかのプレイヤーたちが
現金をほとんど持っていない状態。
下手に救ってしまうと
自分が先に破産してしまう危険が増えるわけです。
しかし決勝戦で日本一を目指す以上、
順位が一つ下がるかもしれないという心配など
無意味でしょう。
少しでも勝利の可能性を広げるためならば、
リスクを顧みている場合ではありません。
数人がそれぞれ資金を絞り出すようにして、
有澤さんの持ち物件を少しずつ引き取る内容で
救済が可能なことを確認します。
結局、最後は債権者の表寺さんが、
鉄道以外の「端切れ物件」を全て引き取ることで
レンタル料の代わりとするという提示をして
この局面は決着しました。
有澤さんにとっては、
自分の手元に鉄道4枚が残ったのですから、
まだわずかながらも希望を持って
ゲームを続行できるわけです。

ゲーム再開です。
今度は山本さんがパークプレースに突っ込み、仮破産です。
山本さんはグリーン3枚とイエロー2枚を
持っていましたが、
グリーンを経営できるプレイヤーが
他にいなかったこともあり
この物件は救うだけの価値がないと判断され、
今回は救済が成立しませんでした。
山本さんは本破産となり、ゲームから脱落します。
悲願の日本チャンピオンが果たせなかったばかりか、
昨年に続き井元さんの土地で破産するという終わり方と
なってしまいました。
雪辱はまたしても年越しとなります。
井元さんはダークブルーに加えて、
グリーンのカラーグループも手にしました。
もし今後もダークブルーに順調にお客が来れば、
グリーン(または交換した他の色)を追加経営して、
表寺さんを追撃可能な形を整えつつあります。
これに対して、表寺さんは、
ライトブルーを使って残りの家を買い占め、
ライバルたちに増築を許さないように手を打っておきます。
更に周りを見回して、
オレンジのニューヨーク通りにホテルを建築。
場に出た家を使ってライトブルーも12軒に、
慎重に手順を確認するかのように増築。
なかなか冷静な印象です。



ゲームも既に終盤です。
井元さんと佐藤さんは全力を振り絞って
家を建てているのですが空回りしています。
鉄道や税金などの細かい出費で
建てたばかりの家が崩れていくような展開。
しかしそれでも攻めるしかない。
今や防御はありえません。
自分はどこにも止まらず、ライバルが止まってくれる。
そういう展開にならない以上逆転はないのですから、
何も考えずに全力で建築。
やがて力尽きたかのように、
まず井元さんが、続いて佐藤さんも、
オレンジに突っ込みます。
確率の王者が最後はその強さを見せつけたような形でした。
表寺さんは「佐藤さんの赤が崩れ」た瞬間に、
勝ちを意識したそうです。
盤面は、表寺さんが決定的に有利な状態。
対する3人は全員の資産を合わせて
ようやく1000ドルといったところ。
もし奇跡の逆転があるならば、
この1000ドルを1人にあつめて
ダークブルーに家を5軒建てて
表寺さんから1400ドルを2回以上取り
家を崩させるピンチに陥れて、
手元に押さえている端切れ物件を放出させながら
他のプレイヤーも含めた混沌とした殴り合いに
今一度引き戻す、といった形が考えられます。
しかしこれを実施するのには様々なハードルがあり、
実際には机上の空論で終わってしまう場合がほとんど。
つまり、表寺さんの優勝は
もう九分九厘決まったといっていいでしょう。
あとは順位の決定ですが、
これはもう、誰が先に表寺さんの家に止まって
破産するのかという順番だけの問題です。
一人、また一人と破産が宣告され、
席を立って一礼、選手やギャラリーたちの
暖かい拍手に迎えられてゲームを終了していきます。
かくして午後3時12分、
表寺さんのモノポリー勝利により、決着しました。

表寺さんの優勝者挨拶は印象的でした。
自分は決して最強ではないとまずはご謙遜された上で、
15年間のプレイ経験の中で
その時代の最強プレイヤーたちと
渡り合ってきたのだという自覚が
自信になっていたと言われました。
「継続は力なり」、ということでしょう。
モノポリーも最後は精神力の、
気迫の勝負なのかもしれませんね。



2003年の日本選手権は幕を閉じました。
そしてその瞬間から、
表寺さんを目標に新たなスタートが切られているのです。
来年の日本選手権へ向けたタイトルレースは
すでに始まっています。
まず、12月には川崎で
横浜モノポリークラブ選手権が行われ、
過去2回日本チャンピオン経験のある田中瑞穂さんが優勝。
5年ぶりとなる次回日本選手権出場を決めています。
年明けの1月には、
大阪で大阪モノポリークラブカップが行われ、
地元の山添雅己さんが優勝し、
同じく次回の日本選手権に出てきます。
今後も各地で大会や予選が行われ、
続々と新たな選手たちが名乗りを上げていくことでしょう。
そしてその中には、今これを読んでいるあなたも
含まれているかもしれません!

このレポートの最初にも言いましたが、
モノポリーは実力にどんなに差があっても、
誰にでも勝つチャンスがあるゲームです。
勝敗はやってみなければわかりません。
まだ経験のない方も、全くかまいません。
ちょっとでも面白そうだなと思ったら、
是非最寄のサークルの例会に顔を出してみてください。
どのサークルでも初心者大歓迎のはずです。
もちろん、いきなり大会にエントリーしてもかまいません。
今年はディズニー版やウルトラマン版など、
新しい特別版モノポリーボードも発売される予定であり、
それに併せたイベントや大会も計画されています。
初心者の方が
デビューしやすい年であるのではないでしょうか。
また、4年に1回の世界選手権が開催される年なので、
現役ワールドチャンピオン岡田豊さんを目標として、
文字通り世界中から腕自慢ダイス自慢の“ツワモノ”達が
集結する年でもあります。
そして、くどいようですが、
あなたもその中の一人として
ダイスを振ることになるかもしれません。

2004-02-06-FRI

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