モノポリーエッセイ

モノポリー世界選手権
日本代表決定戦報告(その2)



こんにちは。
前回からのつづきです。

場面は第2回戦の中盤、大きな交渉がいくつか成立し、
4人がそれぞれ経営するカラーをそろえたところで、
植田:駒位置19、持ち金僅か
権利書DB(3・2)、2LP、Or、Re裏
井元:駒位置08、持ち金約500
権利書Gr(2・2・1)、Re
篠塚:駒位置15、持ち金約600
権利書DP(H・H)、LB(0・0・0)、LP、Re
表寺:駒位置11、持ち金約400
権利書2Or、2Ye、4RR、2UT
概略こんな感じです。

まず植田さんがGr2軒を踏み、*390の支払い。
若干現金が足りず、DB(2・2)に。
井元さんGr(3・3・3)まで増築したところで
LBに12軒を建てたばかりの篠塚さんが飛び込み、
*1000の負債で仮破産。
表寺さんから救済が入り破産は逃れましたが、
篠塚さんは資産ゼロの状態で、
次の手番に破産しました。
井元さんは現金にも余裕ができ、
かなり優勢な形です。
表寺さんは、篠塚さんからいくつかのカラーを入手し、
井元さん追撃の体勢ができました。
手始めにDPで井元さんから*250取ったのですが、
敵は表寺さんと見た井元さんは、
表寺さんがGrに近づいてきたところで
1軒増築、G(3・4・3)とした、
まさにその4軒を表寺さんが踏んで
*1100の支払いとなってしまいました。
豊富な物件を持ちながら、もう経営資金がない状態です。
しばらくして、
DB(1・2)となんとか形を保っていた植田さんが
Grに突っ込み、破産です。
このゲームではDBが爆発することはありませんでした。
表寺さんも瀕死の状態。
あとは、井元さんがモノポリー勝ちして
150ポイントの獲得なるか、というところに
焦点がしぼられます。
ここから表寺さんの驚異的なダイスが展開されます。
井元さんはGrに加えて
植田さんから入手したDBにもKIOSKを建設し、
重量級の2色で表寺さんを待ち受けますが、
表寺さんは決して踏みません。
刑務所に2回入り、
さらにベロタクシー(ショートライン鉄道)や
イベント(共同基金)を飛び石にして
Gr・DBを2回素通りし、
とうとう時間いっぱいまで逃げ切ってしまいました。
井元さんとしては
痛恨の取りこぼしと言えるでしょう。
結局第2回戦は、
井元さん66ポイント、
表寺さん34ポイント
植田さんと篠塚さんは0ポイント
となりました。
トータルでは
植田さん150ポイント、
井元さん66ポイント
表寺さん34
篠塚さん0ポイント
で、植田さんがアドバンテージを保った形です。

2回戦のあとしばしの休憩ははさんだのち、
さあ、すべてを決する第3回戦に突入です。
このゲームにモノポリー勝ちすれば
225ポイントを獲得できますので、
全員に優勝のチャンスがあります。
スタートの順番はこれまでの獲得ポイントの多い方から、
植田さん、井元さん、表寺さん、篠塚さん
の順となります。

今回も順調に権利書が売れていきますが、
交渉はなかなかまとまりません。
第3回戦は120分(1・2回戦は90分)と
たっぷり時間がありますので、
それぞれじっくり構えているようです。
交渉を持ちかけても、
あせる必要はないので甘い条件は出てきません。
そんななか、またもや植田さんと井元さんの間で
大きく場を動かす交渉が出ました。
ちょうど井元さんが3枚目のYeを買ったところで、
植田:駒位置25、持ち約800
権利書LB、Or、Re、Ye、RR
井元:駒位置26、持ち金約800
権利書DP、2LB、2Ye、Gr
表寺:駒位置20、持ち金約1000
権利書2LP、Gr、RR
篠塚:駒位置28、持ち金約500
権利書LP、2Or、Re、2RR、UT
といった状況です。
井元さんがYeを買ったことにより、
植田さんとの間でLBとYeのツーペーになりました。
ここはまとめる一手です。
お互いに条件がいろいろ出されたあと、
まとまったのは
井元:2Ye=植田:LB+RR+30
という内容です。
Yeの方がカラーとしては強力で、
その1色でも勝ちきれるのに対し、
LBはやや非力ではありますが、
植田さんのYeは振り絞ってもKIOSK6軒、
井元さんのLBは楽々と店舗(ホテル)3軒いける、
という現金状態で、
なおかつ表寺さんや篠塚さんに好条件で売却可能な
OrとRRを、それぞれ持ち合う、という、
かなりバランスのとれた状況と言えるでしょう。
井元さんはLB(4・4・4)、
植田さんはYe(1・2・2)
という形になりました。
Ye直前にいた表寺さんは
からくもエネルギーサービス(水道)に逃れ、
篠塚さんは東京メトロ(リーディング鉄道)まで
駒を進めてLBを踏むリスクが少なくなったところで、
こんどは表寺さんと篠塚さんのLPをそろえる交渉です。
これは
表寺:2LP+480=篠塚:2Or+Re+2RR
という形でまとまりました。
篠塚さんと同じく東京メトロにいる井元さんを狙って、
篠塚さんはLP(4・3・3)。
ここで井元さんは、
RRを表寺さんに売りに行きます。
これはLPを踏んだときの支払い原資であると同時に、
手持ち現金がかなり苦しい植田さんのYeと
篠塚さんのLPに対する布石でもあります。
井元:DP+RR=表寺:Gr+300
でまとまり、
表寺さんはこれで4RRがそろいました。
井元さんはLPを踏んで*500の支払いとなりましたが、
まだ余力があり、ここは一気に勝負と、
LB(H・H・H)にします。
篠塚さんは直近につめていたものの
結局ダイスは4で、LB踏んで*600支払い、
井元さんからもらったお金にノシをつけて返す形に
なってしまいました。
植田さんはといえば、
所得税からネットワークサービス(電力)に着地、
LBとLPの両方をかわすという離れ業です。
ここでどちらかを踏んでいたら、
Yeは一気にくずれていたところですが、
この日の植田さんはすごいです。
リスクが少なくなったところで、
植田さんYe(2・2・2)。全力です。
井元さんには
Yeを飛び越えて刑務所に入られてしまいましたが、
表寺さんがLP踏んで*625支払いのあと
Yeにも入り*330支払い。
植田さん、手をゆるめずにY(3・3・2)と増築。
そのYe3軒に
刑務所から出てきた井元さんが突っ込みます。
井元さんのLBはまだ健在ですが、
植田さんのYeが俄然有利になってきました。
表寺さんは次の周回でも
LB踏んで*550支払いのあと
Ye3軒を踏み*800支払い、
さらにもう一度LP4軒を踏んで破産です。

表寺さんは、
ダイス運が2回戦終盤に集中してしまったのか、
その他はほとんどいいところを出せませんでした。
モノポリーはもちろん、
バックギャモンやオセロ、
その他ボードゲームと名がつけばなんでも強い、
「ボードゲーム大王」として知られる表寺さんも、
この日は運が味方してくれなかったようです。
表寺さんの日本代表は消えました。

熱戦は続きます。
井元さんは、
LBである程度の収入を確保するものの、
Yeに致命的な連泊をした後、
次の周回でもYeに飛び込んで破産しました。

井元さんは、
後日談ではありますが、
この翌日開催されたのモノポリー名人戦で
2回目の名人位を獲得するほどの
全国に知られた実力者です。
3ゲームとも勝負形を作り、
さすがにみごとな戦いぶりでした。
2回戦でモノポリー勝ちできていれば
植田さんと井元さんが150ポイントで並び、
3回戦の戦い方もお互い違ったものになっていたでしょう。
もしそうなっていたら、結果はどうだったか
神のみぞ知る、です。
井元さんの日本代表も消えました。

まだゲームは終っていません。
篠塚さんが食い下がります。
そして「勝つために」仮破産の井元さん救済で
権利書入手と引き換えに現金を吐き出した直後に、
Ye3軒踏んでLP崩壊。
LBに乗り換えてさらに食い下がるも
最後はやはりYeに突っ込み破産。

篠塚さんは、
地元福岡で長年地道にプレーを続けてこられた、
温和な人柄で知られる名プレーヤーです。
この日は結果として0ポイントでしたが、
この最終戦で、
LPをそろえて建設した直後の手番に、
植田さんと篠塚さんのダイス運が逆だったら、
もしかするとYe崩壊、LP大躍進、
篠塚さんそのままモノポリー勝ちで優勝、
ということになったやもしれません。
他の3人の選手に比べて
大舞台の経験は少なかったかもしれませんが、
まさに紙一重の戦いだったと言えます。
篠塚さんの日本代表も消えました。

3人が破産し、植田さんの3回戦勝利、
そして、3戦して2モノポリー勝ちの堂々たる優勝、
栄えある日本代表に決定です。
植田幹浩さんおめでとうございます。



植田さんは関西在住ですが、
この日集まった
モノポリープレーヤー(スタッフ含む)の中で
誰よりもこの六本木ヒルズに足を運んでいるという、
おしゃれが帽子をかぶって歩いているような人です。
この日も、ルイ・ヴィトンのストラップを身につけて
「六本木ヒルズはホーム」と言い放ちました。
世界選手権の舞台もこの六本木アカデミーヒルズ。
現世界チャンピオンの岡田豊さんをして
「世界選手権での最大のライバル」と言わしめた、
その力を次の大舞台でも見せてほしいものです。
そして、岡田さんとともに、
日本人プレーヤーのワンツーフィニッシュを
私たちに見せてくれることを
期待してやみません。
2人がダイス運に恵まれるよう、
世界選手権が行われる10月8日・9日は
六本木に向けてみんなで念力をおくりましょう。
ダイス運さえよければ、もとい、「悪くなければ」
ワンツーフィニッシュは確実ですから。

(おわり)

2004-10-03-SUN

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