2025年に日本に上陸した
イタリア生まれのバッグブランド、
「SALCE(サルーチェ)」。
イタリアならではの職人技が各所に光るのは、
眼鏡ケースなどのアイウェアアクセサリーを
40年以上つくりつづけてきた背景があるからだそう。
日本での展開を2年がかりで説得したのが、
アパレル・小物のセレクト会社「フラッパーズ」です。
セールスマネージャーの小栗昌記さんに、
「SALCE」のなりたちや
伊藤まさこさんが「美人の中の美人」という
バッグのデザインについて、
くわしく聞きました。
小栗昌記さんのプロフィール
小栗昌記
株式会社FLAPPERS(フラッパーズ)で
インポートブランドの営業を担当。
シューズやバッグを中心に、
国内のセレクトショップや百貨店への提案・卸売のほか、
海外ブランドとの商品企画や仕入れにも携わる。
大学では経済学を専攻し、
卒業後にシューズやバッグを中心に扱う
インポーターに入社。
卸売や直販に携わりながら、
靴や革について実地で学び、現在に至る。
妻と2匹の猫と暮らし、山より海が好き。
3年ほど前から料理を始め、
日々少しずつレパートリーを増やしている。
01はじまりは、眼鏡ケース
- 伊藤
- 今回取り扱わせていただくバッグ、
私はSALCEを持つのがはじめてだったんですが、
とても気に入って、さっそく愛用しています。
今日はブランドについて教えていただきたくて。
- 小栗
- ありがとうございます。
ぜひお話しさせてください。
- 伊藤
- SALCEはイタリアのブランドですよね。
小栗さんたちが、フラッパーズとして
お付き合いをはじめられたのは
いつ頃からでしょう。
- 小栗
- 日本で展開をはじめたのは
昨年(2025年)のSS(Spring/Summer)からです。
- 伊藤
- あら、はじめられたばかり。
- 小栗
- はい。本国のイタリアでは2017年に
設立者のアルド・カフィエロが
バッグブランドとしてスタートしました。
親会社のカフィエログループは
1980年に設立された、
イタリアの主要産業の一つである
アイウェアアクセサリーをはじめ、
ジュエリーケースなどの製造を
40年以上にわたって担ってきたファクトリーなんです。
- 伊藤
- アイウェアアクセサリーというと、
眼鏡チェーンとか?
- 小栗
- そうです。
革製のグラスコードや
マイクロファイバークロス。
でもカフィエロで最も有名なのは、眼鏡ケースです。
長いあいだ作ってきて、
今も百貨店に並ぶようなアイウェアブランドに
供給し続けています。
- 伊藤
- どうしてそこから
バッグを作ろうと思われたんでしょうね。
- 小栗
- 眼鏡ケースづくりの技術をいかしてのことでした。
バッグにはいろんな作り方があって、
多くのものは革などの素材を縫い合わせることで
形を作りますよね。
でも、眼鏡ケースは、
眼鏡を守れるものでないといけないですから、
つぶれないための立体構造を考えたり
芯を入れたりして、フォルムを形成しています。
そのつくり方をバッグに活かしたのがSALCEです。
アイウェアアクセサリーづくりで培ってきた
立体構造への理解と高い縫製技術、
上質な革という素材を、
ラグジュアリー感のあるデザインで、
バッグに反映したんですね。
- 伊藤
- なるほど。
たしかに革の質感、すごく素敵です。
- 小栗
- そうですよね。
長島(フラッパーズの社長)が
イタリアの展示会ではじめてSALCEを知り、
すぐに惚れ込んでしまって、
日本で展開をさせてほしいと話をしたそうです。
でも、あまり多売をしたいとは
思っていないブランドで、
2年かけて説得して、
やっと契約ができたそうです。
- 伊藤
- あら。契約までにそんな時間が。
- 小栗
- 先方が言うには、
買ってくれるのはもちろんうれしいけれど、
売れるならどこでもいいというわけじゃなく、
自分たちの価値感やフィロソフィーを
理解してくれる卸先、お客さまと一緒に
ブランドを大切に育てていきたい、と。
そういう気持ちが大きかったようですね。
その点は僕らフラッパーズの考え方にも合っていたので、
ちゃんと話して、受け入れてもらえたようです。
- 伊藤
- そんなドラマがあったんですね。
デザイナーさんは、イタリアの方ですよね?
- 小栗
- はい。
ピエラさんという、
とても美的感覚にすぐれた女性が
デザインを担当しています。
彼女は日本のマーケット事情にも精通していて、
今回オーダーいただいた「ARISA」というバッグも、
実は日本人が使うことを主に意識して
つくられたものなんです。
- 伊藤
- そうなんですか。
「ARISA」って、名前もかわいいですね。
- 小栗
- 名付け親のピエラさんに名前の由来を聞いたら、
「日本の女性の名前にもある、
響きがきれいな言葉を選びました。
ヨーロッパでも女性名に使われていて、
その語源を調べると、
「たのしみ」「高貴な」などの意味もあり、
とても素敵だと思って」
と言っていました。
たしかに聡明な感じがありますよね。
- 伊藤
- そうなんですね。
外国の方の名前でもよく聞くから、
日本を意識してつけられたとは思わなかったです。
なんだかうれしいです。
- 小栗
- ピエラさん自身もバッグを使う女性として、
ちょうどいいサイズ感や強度、
使いやすさなどがすべて備わっていないと
バッグとして機能しないということを
よく理解しているので、
妥協せず、8回くらいつくり直したそうです。
- 伊藤
- 少し前に、御社の長島社長にお会いしたんですが、
SALCEはステッチがすごくきれいだ、
とおっしゃってました。
こうして見ると、ほんとうにきれいですね。
- 小栗
- でしょう!
ついこの前、僕も長島と2人で
このバッグを見ながら言ってたんですよ。
おじさん2人して「きれい、きれい」って、
ちょっと気持ち悪いよなって言いながら(笑)、
それでも「きれいだよねー」って。
- 伊藤
- いやいや、これは言ってしまいますよ。
「作品」という感じがしますもの。
- 小栗
- 仕事が本当に丁寧で、
ステッチのピッチも均一なんです。
コバの処理(革の断面に溶剤を塗って、
毛羽立ちや凹凸をきれいにする工程)を
見てもらっても
ものすごくきれいなんですけど、
これ、手塗りでしてるんです。
- 伊藤
- えっ。手作業ですか。
- 小栗
- SALCEではコバの部分も
職人が一つひとつ手作業で仕上げていて、
職人の技術が表れる部分でもあります。
これはイタリアの職人文化が培ってきた
お家芸の一つだと思います。
下手な職人さんだとはみ出ちゃうので、
ベテランの高い技術ですよね。
- 伊藤
- 熟練の業なんですね。
あと、ファスナーの開け閉めも、
すごく滑らかだなって。
- 小栗
- そうなんです。
ファスナーが滑らかなのって、
当たり前のようですが、
すべりがよすぎても使いにくい。
その点、SALCEは絶妙なんですよね。
ファスナーがまっすぐなバッグに比べて、
「ARISA」のようなラウンド型は、
カーブの部分で多少引っかかりを感じることもあります。
でも「ARISA」は、それをほとんど感じさせないんですよね。
- 伊藤
- 全く感じないですね。
気持ちよく開け閉めできて、
これだけでもすごいなって。
- 小栗
- これは真鍮製のファスナーですが、
かみ合わせがしっかりした
密度の高い上質なものを使っているのはもちろん、
特殊な機械でポリシング(研磨)を
2回ほどかけることによって、
よりスムーズに動くようにしています。
- 伊藤
- しかも、このファスナーが
デザインのポイントにもなっていますよね。
- 小栗
- そうなんですよ。
SALCEはこういう細かいところでも
エレガンスさ、上質さを忘れない仕上げをしてます。
眼鏡ケース作りの発想が生きているという
ポイントでいうと、
実はこのパイピング(生地の端に
細長いひも状の芯材を包んだテープを挟み込んで
縁取りする処理)を見てください。
- 伊藤
- 面と面のつなぎ目が
縫われてるところですよね。
- 小栗
- はい。
ここはどうしても厚みが出るところで、
通常は縫い代を裏側に隠して処理することも
あるんですが、
SALCEの場合はパイピングにして、
デザインの一部としてあえて見せています。
バッグの角にあたる部分なので、
全体のフォルムを保つための
強化剤にもなっているんですよ。
- 伊藤
- ここで眼鏡ケースづくりの技術が
生かされているんだ。
ほんと、デザインのポイントにもなっていますね。
- 小栗
- パイピングがない場合を想像してみると、
もっとぺたっとした
存在感のない印象になっちゃうんですけど、
そうさせないのはデザインの力ですよね。
(つづきます)
2026-10-12-MON