第36回 前に住んでいた幽霊寮。
今住んでいるアパートに引っ越す前は、
広く一般に部屋を提供している感じの
寮みたいなところに住んでいました。
結局、そこには三ヶ月ほどいたのですが、
ここが割りとヤバい場所だったんです。
その寮から学校に通っているときのこと。
僕は学校の友達に
自分の住んでいるところについて
説明することになったんですが、
どうも話してみるとその友達は
その寮のことを知っているようでして。
それどころか、彼は、
その場所に以前住んでいたらしく・・・。
以下、その時の会話。
「ああ、あそこね。俺、あそこに住んでたよ」
「マジでございますか。いつ?」
「もうだいぶ前。君、
いつまであそこに住むつもりなの?」
「さあ、とりあえず、まだ一週間目だし。
契約は一ヶ月だけど・・・延長するかも知れんですし」
「ふうん。でも、あそこってかなり嫌じゃないか・・・?」
「・・・何が?」
「だって、部屋とか超狭いし、
シャワーとかトイレとか共同だし・・・
なんか嫌でしょ?」
「まあ、確かに。あんまりいい環境ではないな」
「うん・・・それに・・・」
「・・・?それに?」
「・・・あそこ、デるじゃんよぅ」
「何が」
「幽霊」
と、刹那、思い出したことがあります。
その寮に着いてから二日目だか三日目だかの晩。
僕の部屋は十階でした。
寝るときはいつも窓に足を向けて寝ていたので、
視線は天井、若しくは窓に向くことになります。
おそらくあれは夜中の三時かそこらだと思いますが、
闇夜にふと目を覚ますと、窓に人影が。
白い服を着た黒髪の女でしたが、
なぜかその時は別にそれ自体
どうということもなく・・・。
ただ、ふとソイツを見つけて
「うぜぇ」とだけ思いました。
とにかく、ソレを目撃したのは一瞬です。
何故なら、ソレを確認した瞬間に僕は
再び寝に入ってしまったからです。
翌朝、昨晩の出来事もすっかり忘れて学校に行きました。
もう、本当に、きれいサッパリ忘れていたのです。
友人との会話でその時の怪現象を思い出し・・・。
「嗚呼!いたよ、そういえば!俺、見ましたよ!幽霊!」
「エ〜〜〜〜?マジで〜〜〜〜〜?」
「ま、まじでぇ、って、アンタが、
あそこにはデるって言ったんじゃないかぁ! 」
「うん。まあ、本気で見てるとはなァ」
「いやいや、本気ですよ。夢かもしれないけど
(話ブチ壊し)」
「・・・・あそこね、元病院だからね」
「・・・!こっえーーー!」
というわけで色々聞き込みをしたところ、
その寮は結構有名な
心霊スポットだということが判明しました。
そんなところに現役バリバリで
人が居住していること自体、
なんか妙ですよねぇ・・・。
で、そんな話を人にしてみると、
「霊感があるんですね」なんてことを言われますが、
そこのところ、実はとても微妙なのです。
僕にはその霊感とかいうものが分からないのです。
あのときに見たものが一体何なのかなんて、
わからないですよ。夢である可能性も充分ですしね
(ただし、個人的にはゆふれいさんだと思っています)。
仮にアレが現世のものでなかったとしても、
だからどうだという話です。
別にどうってこと無いんじゃないですかね。
信じるも信じないも、
なんかどうでもいいことのように思えてきますし。
そんなもんでしょう、幽霊なんて。
同じ幽霊寮で、こんなこともありました。
或る休日、その頃僕はインターネットが
自分のノーパソで使えなかったために、
寮のビルディング内にある
図書館のパソコンを使って
メールのチェックやら何やらをしていたのです。
その日もお昼前に図書館まで行ってみたのですが、
二台しかないパソコンは満席。
仕方が無いので椅子に座って
新聞を読みながら待つことにしたのです。
回りには数人の老人たちが僕と同じように
新聞を読んでいたりしました。
十分近く待った頃でしょうか。
僕は何か部屋全体に違和感を感じて、
新聞から目を上げました。
目の前には・・・・。
煙。
何故?何故、煙。
瞬時にあたりを見渡すと、
老人たちは変わらぬ様子で新聞を読み続けています。
再び煙に目を戻すと、
今度は炎がブスブス上がり始めているではありませんか。
リアリティが崩れていくのが、
実にハッキリ分かります。
ただ、それを分かっているのは
冷静に炎を見ている視神経で、
本当のところは『突然自分の目の前で炎があがる』
なんて強烈に面倒くさいことは考えたくもありません。
部屋全体に、赤いシグナル。
無音の赤いシグナル。
老人たちもさすがに顔を上げます。
そして、けたたましい警報とともに老人たちは
やっと小パニックになりました。
図書館の館員が脱出の指示をダルダルやり、
全員、ぞろぞろ、逃げ出します。
僕もさすがに目の前が燃えているので
逃げなくてはなりません。
二階にある図書館から一階に降りると、
全館一斉非難になっているらしく人があ
ふれていましたが、とりあえず外へ。
その頃、まだ真冬。
その日は特に寒かった気がしますが、
僕は同じ館内の図書館に行くだけだったので
薄い長袖Tシャツしか着ていませんでした。
さ、寒い。焼死の危険を避けたと思ったら
今度は凍死か!
すぐに大げさな感じで消防車が到着し、
館内の人々は次々と外に出されていきます。
みんな、あったかそうな服着てていいなぁと思いつつ、
これからの行動を考えます。
いつ中に入れるか分からんのですが、
これ以上外にいると本当に凍死し
てしまいそうです。
なので、スタバにでも
避難していようと思ったのですが・・・。
財布が、無い。
財布、忘れてる。
仕方が無いので、
顔面が動かなくなるほどの寒さに耐えながら一人、
セントラルパークの湖を眺めました
(本当、財布が無くて苦労することが多いなぁ)。
※前々回、
「スパゲッティしか食べてなくて
イタリア人になりそうです」
の回を見てくださった数人の方が、
鍋でご飯を炊く方法を教えてくださいました。
ありがとうございました。
助かります。
今度、米を買ってきて炊いてみようと思います。
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