銀座の「ガーディアン・ガーデン」と
「クリエイションギャラリーG8」というふたつの会場で
葛西薫さんの展覧会「葛西薫1968」がひらかれています。
“タイムトンネルシリーズ”という、
第一線で活躍しているクリエイターの、
デビュー当時の作品を紹介する展覧会のシリーズです。
── 葛西薫さん。
先日「気まぐれカメら」に、
とうとつに登場した、
あの、ダンディなおじさんです。
葛西さんは、「サン・アド」という
広告会社に所属する、アートディレクターです。
葛西さんの名前を知らないかたでも、
1983年から続く「サントリー烏龍茶」の広告は
きっと、ご存じだと思います。
じつはぼくらが、今回、
葛西さんのところにうかがったのも、
このサントリー烏龍茶が関係しています。
「ふだんから、きれいな字を書きたい。
自分の字が好きになりたい」
ということを、コンテンツにしよう! と考えたとき、
話を聞かせていただく方として、
あの広告をつくった葛西薫さんのことを、
思い出したのです。
サントリー烏龍茶の広告には、
よく、すてきな手書きの文字がつかわれていますものね。
さて、その「字」にまつわるお話は、
12月にコンテンツとして登場するのですが、
そのまえに、もうすぐ終わってしまうこの展覧会のことを
おしらせしておこうと思います。
ものをつくることに興味のあるかたに、
ぜひごらんいただきたいなあと思う展覧会なのです。
では、まずクリエイションギャラリーG8に
入ってみましょう。
ここには、葛西さんの広告の仕事の、
とりわけ初期の作品が集められています。
完成品、だけではなくて、
アイデアスケッチもたくさん展示されています。
この展覧会に向けて、葛西さんは自宅や事務所から
過去の仕事の資料、アイデアスケッチ、メモ、
ラフ、コピーの原稿など、
たくさんのデータを集めたのだそうです。
(ううむ、こういうものを
きちんと保管されている、というのが
すごいです!)
「糸井さん、ほら、これ。
なつかしいでしょう」
と、葛西さんがさししめしたのは、
1982年に出版された
『ヘンタイよいこ新聞』なる本のカバー。
この裏表紙に掲載されている
ソニーのウォークマンの広告が、
糸井重里と葛西薫さんによる仕事、
だったんですって。
(ちなみに表紙絵は横尾忠則さんです。)
ふたりは、あれやこれやと
むかしばなしを重ねつつ、
葛西さんの仕事を見て回りました。
「うん、ここは、ぼくのよく知っている
“サン・アドの葛西さん”がいるね。
じゃあ、もうひとつの会場に行きましょうか」
「クリエイションギャラリーG8」をでて、
道をわたって、数寄屋橋のほうへ、
歩いて3分くらいのビルの地下に
「ガーディアン・ガーデン」があります。
こちらの会場では、広告の仕事からとびだした、
たとえば書籍の装丁であるとか、
お芝居のパンフレットであるとか、
さまざまな分野にわたる
葛西さんのグラフィック作品が展示されています。
「ここに展示しているものは、
この10年くらいで、心の中でふくれあがってきた
広告以外のグラフィックです。
といっても、広告が嫌いになったわけじゃなくて、
広告から生まれたもの、でもあるし、
もともと、ぼくが持っていたものでもあります。
せっかく会場がふたつあるのだから、
公私混同させないで、
あちらは公、こちらは私、でやろうと
そういうふうに思ったんですね」
と、葛西さん。
よりプライベートな感覚が強いといいますか、
葛西さんの部屋に招かれたような、
葛西さんの頭のなかを覗いちゃったみたいな、
そんなムードがあるんです。
ユナイテッドアローズの広告のために
イタリアの映像作家・トッカフォンドと
いっしょにつくった
アニメーションも上映されています。
ちいさな会場ですけど、資料室みたいに、
びっしりと並べられた作品を見て、
糸井重里が、なかばあきれるように言いました。
「長いつきあいなんですけれど、
葛西さんという人を、
この展覧会で初めて見た、
そんな感じがします。
とくに、こちらのちいさな会場。
すばらしかったです。
いままで、ぼくは葛西さんのことを
ほんとうに知らなかったなあ、と思いました」
「ええ、こちらは丸裸になろう、
おもいきり恥をかこうというつもりで
構成したんです。
ここまで展示してしまうと、
なんだか財布が空になったような、
すかんぴんになった気分です」
と、葛西さん。
「なかには、こんなエロティックな
ドローイングもあるし‥‥。
葛西さんはいったい、いつも、
これをどこに隠してたんだろう?!」
その問いに、葛西さんは
「いかにもな答えかたですけれど」
と前置きして、こう説明してくださいました。
「家というものは隙間がたくさんあって
隙間をあけると、
ぴっちり何かが詰まっていますよね。
意外と隙間の量って多いなと思うんです。
たぶん仕事の中の隙間でもあるんですよね。
普段の仕事のちいさな積み重ねで
なんだか増えてしまったんでしょう」
そして糸井重里は、
「ぼくは、今日は改めて
喜びとともに感じたのは、
葛西さんが見てるものの分量が、
自分よりずっと多いんだということのうれしさでした。
このあと、お話しするのが、
とっても楽しみになりました」と。
葛西薫さんと糸井重里による「文字」と、
「葛西薫さんが見てきたもの」のお話は、
12月に「ほぼ日」に登場します。
どうぞ、おたのしみになさっていてくださいね!
そして、その前に、可能なかたは
11月22日まで、銀座で開かれている「葛西薫1968」展、
ぜひ、ごらんくださいませ。
(ふたつの会場、どちらも、どうぞ!)
タイムトンネルシリーズ Vol.25
葛西薫1968
【会期】2007年11月22日(木)まで
【時間】11時〜19時(水曜は20時半まで)
【休館】土日祝
【入場料】無料
【第1会場】クリエイションギャラリーG8
東京都中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F
TEL 03-3575-6918
【第2会場】ガーディアン・ガーデン
東京都中央区銀座7-3-5 リクルートGINZA7ビルB1F
TEL 03-5568-8818 |
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