今年『ナイン』は大当たりする!
去年は知らなかったくせに、応援します。


べ3

きょうは『ナイン』が
モチーフにしている映画、
『8 1/2』についてです!


シェフ
関係があるのかないのか。

べ3
あるんですよ。

シェフ
リスペクト・トゥ『8 1/2』
ってことかな?!

べ3
そのあたりのヒミツ、
お読みくださ〜い!

               
第五回 『8 1/2』と『ナイン』のこと。
               


稽古は快調なペースで進んでます。
先週末には「リトル・グイド」
(主人公グイド=別所哲也さん、の子供時代)が、
3人全員一緒にそろっての稽古でした。
リトル・グイド役は3人の子役が交替で演じるのです。

樋口くんは去年秋からの連続出演。
新人くんふたりをリードして、すっかり兄貴です。
本番はひとりずつのはずの舞台の上に、
まずは3人一緒に稽古しました‥‥

「大人グイド」の別所さんに
帽子を被せてあげる場面では、
別所さんの頭に帽子が3つ重なりました。
いつもは女性たちに囲まれてる別所さん、
この日の笑顔はまたちょっと格別です。

さて、きょうは
『ナイン THE MUSICAL』がモチーフにしている
映画 『8 1/2』の話です。

『8 1/2』。はっかにぶんのいち、と邦題では読む、
変わったタイトル。
映画好きの人なら一度は、
このヘンな題名を目にしたことがあるはず。

イタリアの映画監督フェデリコ・フェリーニが、
1963年に撮った映画です。
新作準備のためスパ・リゾートを訪れた映画監督の、
創作の苦悩を描いた自伝的作品。
フェリーニの分身「グイド・アンセルミ」役を、
マルチェロ・マストロヤンニが演じました。
『8 1/2』という数は、
それまでフェリーニが監督した映画の本数に、
短編の共作を1/2として足したもの、
とされています(が、真説かどうかわかりません)。

『ナイン THE MUSICAL』は、
この『8 1/2』から生まれました。

はじまりは1963年。

1963年、高校生のモーリー・イェストンは、
『8 1/2』をミュージカルにしたいと思いたちます。
彼はそこから本格的に作曲を学びはじめ、
曲をつくり、やがて劇作家のアーサー・コピット、
演出家のトミー・チューンに出会うことに。
そして誕生したのがトミー・チューン版『ナイン』。
1982年、ついにブロードウェイ上演が実現すると、
トニー賞ベスト・ミュージカル賞、
ベスト・オリジナル・スコア賞に輝きました。
フェリーニはモーリー・イェストンに、
感謝の言葉を贈ったそうです。
「『8 1/2』を『9』にしてくれてありがとう」

それから14年後に、
『ナイン』はデヴィッド版で生まれ変わり、
今度はトニー賞ベスト・リバイバル賞を受けます。

『8 1/2』は人間の頭のなかで起きていることを、
斬新に、そして見事に描ききった映画です。
それは創造する人間の苦悩そのものとなっています。
映画のなかでマストロヤンニの「グイド」は、
しょっちゅうぼんやりとなにかを見つめます、
見つめながら、つくるのです。
なにをって、つまり幻想(映画)を。

こんなことを言うと、
小難しい映画に思われてしまいそうですが、
深刻さからはほど遠い、ユーモア盛りだくさんの、
荒唐無稽で、圧倒的で、なのに軽い。
主人公「グイド」の際限ない欲望と、
それとは対照的な小心者ぶりに、
巧い! とか、わかるわかる! と、
1分に1回つぶやいてしまう映画です。

じつは『8 1/2』は、フェリーニが、
へそを曲げてしまった妻への弁解につくった作品、
とも言われています。

1959年、フェリーニは『甘い生活』という映画で、
カンヌ映画グランプリを手にします。
マルチェロ・マストロヤンニの初主演も、
「パパラッチ」という言葉を生んだものも、
この映画からだったのですが、
フェリーニ自身にも「甘い生活」がおとずれます。
60年代は、アナーキーで大胆な性の時代でした。

フェリーニには、映画を撮り始める前から、
妻にして女優のジュリエッタ・マシーナがいました。
しかし『甘い生活』の成功の陰で、
夫婦関係が危うくなっていたのです。
ジュリエッタが愛想を尽かし、
家を出てしまったときに撮ったのが『8 1/2』です。
映画作家にとっての苦悩を吐露する一方、
身もふたもないほど、
自分自身のことをあからさまに描いています。
たぶん、スクリーンの前の妻へ向けて。

フェリーニが『8 1/2』で描こうとしたのは、
じつにいろんなことをみせてくれつつも、
やはり「夫婦愛」に違いありません。
男の頭のなかに渦巻く、馬鹿げた妄想や、
残酷な自己愛を描きつつ、
わかってくれよジュリエッタ! と、
妻を説き伏せようと必死で滑稽なフェリーニが
思い浮かぶのです。

デヴィッド版『ナイン』は
愛の範囲が、より広くなっている!

映画監督にはフェリーニ・ファンがたくさんいます。
ヨーロッパだけでなく、アメリカにも日本にも。
なにかものを作る職業の人たちにも、
フェリーニと聞いたら黙っちゃおれん、
という人たちが大勢いるんじゃないでしょうか。

この映画以降、自画像を描こうとする映画監督は、
『8 1/2』を意識しないわけにいかなくなりました。
映画監督が登場する映画を思い浮かべると、
どうでしょう、『8 1/2』と似ているか、
どこか影響を受けてる感じがしてならないんです。

『8 1/2』同様、『ナイン THE MUSICAL』もまた、
夫婦の愛を描いたミュージカルです。
ですが、デヴィッド版に関しては、
女性への愛、そのすべてを讃えているようです。
『8 1/2』よりも愛の範囲が広いかもしれません。

ストーリーの大きな流れは、
だいたい『8 1/2』に沿っています。
仕事に行き詰まり夫婦関係の危機を抱えた男が、
スパにやって来て新作映画を撮る話、
という点はまったく一緒です。

主人公の名前も、妻の名前も映画のまま。
ほかにも共通する登場人物がたくさんいます。
そのなかでちょっとおもしろいのは、
『ナイン』に登場するクラウディア・ナルディ、
純名りささんが演じる「女優」の役ですが、
『8 1/2』にも出演している、
クラウディア・カルディナーレがモデルです。
このもじり具合、ぼくは大好きです。

さて、『ナイン THE MUSICAL』が
『8 1/2』といちばん大きく違うのは、
登場する男性が「グイド」ひとりということです。
これはトミー・チューン演出の発明です。
「グイド」以外は全員女性のミュージカルとして、
『ナイン』の大きな特徴をつくりあげています。
そしてもうひとつ、
『ナイン』というタイトルが示すのは、
9歳という年齢です。
「グイド」は9歳で、
恐怖と罪の意識を植えつけられます。
同時に、女性へのあこがれを抱き、
将来の創造のテーマにしていくのです。

40歳の映画監督「グイド」は人生の崩壊を目前に、
9歳の「グイド少年」に出会うのですが‥‥
ここから先はひかえましょう。

(つづきます!)

今回、グイドの少年時代(リトル・グイド)を演じる子役は3人います。
前回からの子が1人。新しく選ばれた子が2人。
本番では1人しかでませんが、今日の稽古は3人同時に行いました。
出番まで舞台上で待機中ですが、大きなテーブルの後ろに隠れているので、
客席からは彼らの姿は全く見えません。
かくれんぼしてる、そんな感じでした。


べ3
さて今日もメールを
紹介しましょう!
=
久々にほぼ日を開いたら、
「ナイン」のコーナーが
できているではありませんか!

ミュージカルが好きな私でも、
去年はまったくノーマークでした。
が、たまたま昨年の秋に、
「レ・ミゼラブル」に出演されている
若泉亮さんという役者さんの
HPの日記を読んでいたら、
「ナイン」のことが絶賛されていたんです。
「僕にとって人生に一度か二度
 会えるかどうかの素晴らしい舞台」
という言葉に、観たくて
いても立ってもいられなくなってしまい、
その日、会社が終わった後に
劇場に駆けつけました。

いやー、もう素晴らしかったですよ!
なんというか、とてつもなく
きらきらしたものを見せてもらっちゃった、
という感じでした。
「こんなことできるのかー」
という意表をついた演出も本当に格好いいし、
何より女優さんたちの魅力的なこと!

感動のあまり、見終わった後、
友人に感想のメールを出しまくり、
2人劇場へ動員しました。
今年の東京公演のチケットも
既に買ってあります。
昨年は空席が目立ち、
「こんないい舞台なのに
 なんてもったいないんだ!
 私が広報担当だったら、
 もっと宣伝するのにっ!!!!」と
本気で悔しく思ってました。
なので、ほぼ日でじゃんじゃんばりばり
宣伝してくださることを知り、
すごーくうれしく思っています。

観て損はないことは確かです。
ミュージカルを観たことのない人にも、
いえ、そういう人にこそ
おすすめだと思います!
(わかやす)

シェフ
わかやすさん、ありがとうございました!
若泉さんの日記、探してみました。
若泉さんのオフィシャルHPのなかに、
わかの日記というのがあるんです。
すごいよ、2004年の11月12日の日記
読んでみてください!

べ3
すごい‥‥。
さすがプロのミュージカルの
役者さんだよね。
ストーリーを語らずして、
熱く魅力を語っている!
すごく行きたくなるねえ!

シェフ
んだねー。
今年も期待してまちがいないね。
ますます楽しみになってきた!!

べ3
さて昨日紹介した
チケットの「ほぼ日」枠の
こと
なんだけど、
枚数とか、ちゃんと
言ってなかったですね。

シェフ
すみません〜。

べ3
まず大阪公演ですが、
これは日程が近いこともあって
「残席がある限り、
 なるべくよい席から
 おゆずりします!」
と、tptのチケット担当の
マツモトさんも言ってますから
はやめにメールで
お申し込みくださいねー。

シェフ
東京公演は、1公演につき、
「はじめてのミュージカル」に
最適のS席を10枚、
A席を8枚、
ナインシートを6枚。
つまり1公演につき
24枚を確保しています!
この東京公演のチケットは
4月25日から
イープラスのサイトでの
受付を開始しますので、
今週中に、どの公演に行こうか
考えておいてくださいね〜。
くわしくはこちらから!

べ3
ちなみに千秋楽は、
いい席はもうとりにくいらしいですよ。

シェフ
さすがに最終日は人気だよね。
舞台って生き物だから
ツウの人は、初日・まんなか・千秋楽と
3回行くって聞いたことがあるよ。

べ3
途中で演出がかわったりするのかな?

シェフ
さあそれはどうだろう?
キウチさんの連載は
本番がスタートしてからも
続けてもらって、
そんな変化のことも
書いてもらおうよ。

べ3
よろしく! キウチさん!

シェフ
そしてきょう文中に登場した
クラウディア役の純名りささん。

宝塚歌劇団出身で
娘役のトップスターだったかた!
初舞台『ベルサイユのばら』で
いきなりエトワール役に
抜擢されたんだよね。

べ3
NHKの朝の連続ドラマ
『ぴあの』の主演
96年に退団後、香港映画から
『レ・ミゼラブル』『細雪』
『サタデーナイトフィーバー』
『天使は瞳は閉じて』に出演。
‥‥資料を読んでるだけで
ドキドキしちゃうよねー。

シェフ
だねー。
ということで今日はここまで!
また次回です。

 

『ナイン』大阪公演初日まで
あと16日!

illustration=UNO


2005-04-20-WED
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