今年『ナイン』は大当たりする! 去年は知らなかったくせに、応援します。 |
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 第八回 「オケ合わせ」の熱気と、 「男が泣けるミュージカル!」のこと ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ いよいよ大阪公演の初日が迫って来ました。 きょうはオーケストラとの合同練習。 「オケ合わせ」といいます。 (ソリストと合わせるときは、 「ソロ合わせ」になるそうです。) ちなみにオーケストラの側からすると、 「歌合わせ」なのだそうで。 スタジオには演奏者が約20名、指揮者2名。 子役も含めキャスト20名。 演出家はじめスタッフや保護者が11名。 合計何人かもわからないくらいの大所帯、 すごい熱気で、中に入れないほどの雰囲気が、 防音扉の外まで伝わってきました。 これは、ドアの小窓からのぞきながら撮った写真です。 (キャストやオーケストラのみなさん、 さぞ気になったことでしょう。ごめんなさい!) きょうの「オケ合わせ」では、 1曲につき2回、ふたりの指揮者が1回ずつ 指揮棒を振りました。 キャストは椅子に腰かけスタンバイ。 ソロを歌う人がオーケストラの前に出ると、 指揮者がキャストの息づかいを しっかり確認しながら、演奏をすすめます。 出番のキャストは椅子から立ち上がったり近づいたり。 稽古場での表現をその場で工夫する様子が、 これまでの稽古場での様子と異なる、 ちょっと新鮮なリハーサルになっています。 そして全曲、2回ずつ歌い通して終了。 3人の子役は、ふたりで合唱。 あたりまえですが、みんな歌がうまい。 ほんとうにうまい。 ほんとうにうまい歌を聴くと、 どうして泣けて来るんだろう。 なかでも花山佳子さんの歌を聴くと、 ぼくはいつも感動してしまいます。 花山さんはグイドのママ役です。 グイドのママは若くしてこの世を去った天国の人。 衣装は夫の葬儀に着ていた喪服です。 イタリア男にとってのママ(マンマかな?)は、 特別な女性という言葉以上に特別な女性です。 情熱的で大胆で小心な、 恋に生きるイタリア男の理想の存在だとか。 少年時代、グイドはそのママから 決定的な拒絶を受けることになります。 花山さんが歌う『nine』について、 演出家デヴィッドはこんな話をしました。 「これを歌ってるのは、グイドが9歳の誕生日。 グイドにはきょう一日楽しいことがたくさんあって、 夜にはすっかり疲れきってしまった。 でもまだいちばんの楽しみが残ってる、 お風呂から上がるとママがタオルで 頭を拭いてくれる! 子守唄、バースデーのキャンドル、そして、 指にキスしてその指をほっぺたにあてあう、 グイドとママのいつもの儀式。 いま、ママは近づいた自分の死を察してる。 だから息子に、ひとりで育つようにささやく。 『わたしなしで生きる準備をなさい』 でもそれが9歳になったばかりのグイドには、 よく理解できない。 ママはグイドを膝からおろし、立たせると、 闇のなかへと送り出す、キャンドルの明かりだけで。 ママから背中を押されるグイドには、 それが母親に拒絶されたと感じてしまう。 再び押されて走り去るグイドは、 もう一度振り返ってママの顔をみつめる‥‥」 そしてデヴィッドは、子役のみんなに言います。 「ママだけを見るんだ。 いつもきみたちがそうしてるように」 いつもにぎやかな稽古場も、 デヴィッドのこんな話を聞くと、 ときどき涙もろくなります。 幼い頃に受けた(と感じた)母親からの拒絶、 その体験がグイド・コンティーニの将来を、 長いあいだ支配し続け、 この物語を生み出すことにつながります。 2幕のラストにおとずれる、 リトル・グイドとママのシーン‥‥ 台詞もなくほんとに短いアクションですが、 『ナイン THE MUSICAL』に、 世界中の男性たちが涙したというそのわけは、 この場面にあるとぼくは思います。 (つづきます!)
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2005-04-27-WED
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