
シェフ |
みなさまこちらでございま~す!
あちらに見えますのが
モノレールでございます! |

べ3 |
なにをしているのですか。裏声で。 |

シェフ |
「ほぼ日」乗組員のみんなにも
『ナイン』を順番に観てもらうんで、
天王洲までの道案内の練習を
していたのです! |

べ3 |
そういえば毎日
「●●さんは今日ですよ!」っていう
社内メールを流してますね。 |

シェフ |
「ヨクキタネー!」 |

べ3 |
だからデヴィッドは
そんなんじゃないですよ。 |

シェフ |
ぼくらもそれぞれの人生の幕を
開けるときが来ているよ‥‥ |

べ3 |
いえ、だから、そういう感慨は
おうちでやってくださいね。
ていうか人生の幕、開いてないんですか。 |

シェフ |
ま、ぼくもグイドも
いろいろあるのさ‥‥。
ところで、すでに観た
「ほぼ日」乗組員たちに
感想を聞いてみよう! |

べ3 |
そうですね、
ちょっとずつ喋ってもらいましょう! |

アロハ |
わたしはですね、
女は姿勢だ! と思いましたー。 |

べ3 |
ど、どういう意味? |

アロハ |
池田有希子さんのカルラ?
のとき、思ったんですけど、
姿勢がすっごくよくて、
すっごいきれいで!
そして奥さんのルイザ? の、
高橋桂さんとの対照的なキャラクターで
あっち観たりこっち観たり
こっち観たりあっち観たり!
もう、ほんとにみんなきれいで! |

シェフ |
『ナイン』は女性たちが
ほんとうにきれいだよね。
ぼくは彼女達の歩き方に
ぐっときちゃったなあ。
あんなふうに美しく歩ける人を
16人もいっぺんに観ることないもん。 |

アロハ |
そうそう、舞台に大勢のひとが
いっせいに動くでしょう。
わたし、このごろ落語づいているから
舞台を1点集中で観るくせが
ついちゃったんですよ。
だからこれだけたくさんのことが
いっぺんに起きているのが
ぜいたくでぜいたくで。 |

リカ |
わたしはですね、
女は体の柔らかさだ!
と思いました~。 |

べ3 |
こ、これまた、
ど、どういう意味? |

リカ |
体が柔らかいと
愛の表現が多彩にできるんだって
舞台の表現を観て思いました! |

シェフ |
‥‥なるほど‥‥ |

あやや |
いやー、わたしは、あまりに自分の
日常とは別世界のできごとで
ぽわーんとしちゃって、
トリップしているかんじです‥‥ |

シェフ |
キミはいつもそうじゃないか。 |

あやや |
でも思いましたよ、
女は唄がうまいほうがいい! |

シェフ |
そ、そうだね。
演るならどの役がいい? |

あやや |
そりゃもちろん、
純名りささん!
あんなふうになりたいっす。 |

シェフ |
それは役名ではないうえに
かなり高望みをありがとう。
ちなみに純名さんの役名は
クラウディアだよ。 |

アロハ |
クラウディア、
きれいで、せつなくて、
姿勢が良くて‥‥、 |

リカ |
柔らかくて‥‥、 |

あやや |
しかも毅然としてた!
かっこいーっ! |

シェフ |
ぼくはあの海岸のシーンが
たまらなく好きなんだよ。
グイドがあっきらかに
クラウディアとふたりになると
ほかの誰にも見せないようなところを
見せちゃうでしょう。
あの声がさ!!
‥‥男っていうのは‥‥ |

あやや |
(聞いてない)
あと、大浦みずきさんの
足がほしいっす!
きゅーっとなった足の筋肉!
ふくらはぎがすっごい上なの!
うらやましい! |

シェフ |
鍛えなさい鍛えなさい。
たまにはヒールを履いたらいかがかな。 |

ナカバヤシ |
わたしにも言わせていただけますか。
プロデューサーのリリアン役の
大浦みずきさん、すごかったですよね!!
大浦さんは元宝塚のトップだった人だし、
お客さんのつかみ方も上手で、
ステージでの立ち振る舞いが
いつもキマッテいてすごくカッコいいし、
出ただけで場をさらって行かれますもんね。
わたしはあの中で役を演じるとしたら、
リリアンがいいです! |

べ3 |
リリアンもかっこいいですよね!
グイドって女性からみてどうですか。 |

ナカバヤシ |
多くの女性を愛したグイドだったけど、
わたしが思ったのは、
「芸術家の苦悩」の重さでしたねー。
だんだんグイドが追い込まれていくのが
重くて、
逆に、あれぐらい多くの女性と
浮き名をながしていた方が、
身体にいいんじゃないか、
ぐらい思いましたよ、うんうん。 |

べ3 |
わっ、意外とおおらか! |

ナカバヤシ |
それから歌ですけど
どの歌もとっても良かったです。
でも、特にリトル・グイドくんの声が
すごくきれいで、
彼が、「おとなになるとーき♪」
と歌った時は、
ぐーっと涙が出そうになりました。
出てくる人たちが、いい人たちばかりで、
嫌いなキャラクターが
ひとりも出てこないので、
そこは、この舞台の
気持ちのいいところだなと思いました。
もう、とってもよかったので、
ぜひ、もう一度、
観に行きたいなと思っています! |

べ3 |
なんてすばらしいコメント!
ありがとう!
ハリさんはどうでした。 |

ハリー |
ぼくは生音のすごさを
体感したなあ。
映画じゃありえないでしょう、
小さい音は小さく、
大きい音は大きくっていう
ダイナミクスがあって。 |

べ3 |
オーケストラが生ですからね!
そして台詞とシンクロしていく音楽の
すごさを感じますよねえ。
で、内容は? |

ハリー |
ええとですね‥‥ |

あやや |
あのう、質問なんですが。 |

シェフ |
ほい? |

あやや |
あの人達は、実在の人物なんですか? |

シェフ |
あう‥‥? あうあうあう?
当日券買ってもう一回観なさいっ! |

べ3 |
声が裏返ってますよ。
さて、先日公演を観た
糸井darling重里のコメントも
再録しておきますね!
どうぞ! |
『ナイン』東京公演、観てきましたよー。
これが夕方からだったのですが、
その前、昼間は「通信販売の達人」などと、
その世界で言われている人と会っていました。
「どんなにいい商品だとわかっていても、
それを、<誰も買いそうもない>と、
いったん否定的に考えなきゃダメなんです。
いいものだと理解していて、買うに決まってる人は、
絶体に買うんだから、その人のために伝えることはない」
そこから考えを出発させると、その商品の
「ほんとはあなたにも関係のある魅力」が、
見えてくるというわけらしいのです。
この話に感心したあとで、『ナイン』ですから、
これを、誰も行きそうもないミュージカルとして、
考えてみようという練習がしたくなったわけです。
芸術家の生き方に関心があるわけでもなく、
恋愛だのなんだのは忘れちゃったかなぁという感じで、
しかもミュージカルを観るのも初めての人が、
この『ナイン』をどう観るか‥‥と想像してみたら、
これはこれでけっこう楽しめると思ったんですよ。
まずは、女優さんたちが、いずれアヤメかカキツバタです。
たいへんにぎやかでキレイですから、
お花見やら紅葉狩りみたいな楽しみがある。
主人公のグイドさん、なんやかんやいっても、ま、
「艶福家じゃないの」というような解釈もできるわけで、
いやぁおもしろい人生だったわぁ、と
きわめて明るくとらえるのもオッケーだと思うんですよ。
終幕に至る流れなんて、いかにも日本風に、
「これで水に流してさ、おまえさんたち」なんていう
歌舞伎の世話物みたいな展開だと思ってもいいんじゃない?
そんなふうなことを想像しながら観ていたんです。
こんな「誤読」がいっぱいできそうな舞台というのは、
やっぱりもともとの力があるからなんですけどね。
正直、ぼくはけっこう歌舞伎座にいるような気分で、
イタリア人の映画監督の物語をたのしんできました。
糸井重里(2005年5月31日の「今日のダーリン」より) |
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