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芦田健一郎さんインタビュー その4
「クリック感について。」

 
 
 
任天堂の新しいハード
「ニンテンドー ゲームキューブ」。
編集部は「ウェーブレース」と「ルイージマンション」で
交互に遊んでますよ。
使えば使うほど、コントローラの使いやすさが
わかってきます。
ハードウエアをデザインした芦田健一郎さんのお話、
今回は、そのあたりをお聞きしました。 
 
 
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────: グレーの、差し込み口のあるパネル、
これ、ぱっと一番に目に入るところですね。
絶対こっち側向いてるところですもんね。
ここが「顔」だと思っていいんでしょうか。
 

芦  田: いいえ、ゲームキューブは
上面が顔になるようデザインしています。
といっても、何かの顔に見えるように
デザインしてるわけじゃないんですよ(笑)。
よく言われるんですけど・・・。
ディスクの出し入れや
パワーボタンといった主要な操作は
全て上面部に集中させました。
ですから、すべての接続が終わったら、
あとは上面部の操作だけで
ゲームを遊ぶことができます。
ゲーム機を手元に持ってくると
前面より上面の方が目に入ってきますよね。
ここはゲームキューブのロゴや
ハンドルも見える、
デザインの一番カッコイイ見せ場にしました。
反対に、ロクヨンは
前面が顔になるようにデザインしたんですが、
上面にカセットを挿すため、
そっちの方が目に入ってしまうんですよね。
それで、逆さまにするとクマに見えるって、
よく言われましたよ(笑)。

 
────: たしかにクマでしたね。
その点ゲームキューブは……
(側面に、コントローラのコードを差し込んで)
わっ! このクリック感、ていうんでしょうか、
吸いこまれるようにカチッとはまりますね!
 






 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
芦: そうですね(笑)。
 
────: さきほどコントローラを触ったとき、
LRトリガーボタンの最後の一押し、
カチっとはまりますよね。
これも気持ちいいと思ったんですよ。
気持ちいいです、これ。
(音:かしゃかしゃ)
 
芦: ええ。LRトリガーボタンは
7mmのロングストロークがある
アナログボタンなんです。
さらにもっと奥まで押し込むと
まだスイッチがあるんですよ。
クリック感があるのはそのためです。
新しい『触感』でしょ。

 
────: そうなんです。
くくっ、くっ。
気持ちいいですね。(笑)
このごろ、すごく思うんですが、
銀行のATM行っても、
あれ全部画面でタッチパネルに
なってしまいましたよね、ボタンじゃなくて。
銀行によって、タッチパネルなりに、
いろいろ工夫していて、
「ぷきっ」という音が気持ち良く出たり。
そういう気持ちが入ってるATMってね、
ついお金を下ろしちゃう。(笑)
それから、家庭用電気製品のタッチパネル、
あれも何とかならないかなあと思うんです。
どうも「押した感じ」がしないものが多い。
そういう中で、嬉しいです、
ゲームキューブのクリック感。
 
芦: ハードのデザインや設計で、
『触感』というものは
大変重要だと思っています。
コントローラなんかは
操作性にダイレクトに反映しますからね。
言うまでもなく、
コントローラのボタンのクリック感は
ゲームの気持ち良さに通じる
『触感』に影響するんですが、
コントローラやACアダプタを
本体に接続するプラグのクリック感は
信頼性に関係するんです。
もし、プラグにクリック感がなかったら
ちゃんとつながっているかどうか
心配になってしまいますよね。
ここは安心してユーザーに
使ってもらいたいので
クリック感をつけているんです。
「フレンドリー」設計というわけです。

 
────: でも入ったかどうか
わからなくちゃいけないのに、
ほとんどの機器は、ぐりぐりやって、
入ったんだか入ってないんだか
わかんないのが多いですよ。
 
芦: そういうのありますよねえ。
 
────: や、ほとんどそうですよ。
 
芦: 映像ケーブルのS端子なんかは
差し込むのに苦労するんですよね。

 
────: それと比べたらこういうことって、
なんだろう、肉体的に気持ちいいですよね。
ヨーロッパの家電とかだと、
タッチパネルではなく、あえてダイヤルの
「がちゃがちゃ」とした感覚に、
あえて未だにしてるとことかありますよね。
ドイツ製品とかって。
ボタンでも、がちゃんと押し込めるとか、
常々すごい大事だなと思ってるんです。
芦: 小型のデジカメでも
撮影モードの切り替えなんかは
ちゃんとダイヤル式になってますね。

 
────: ついでに、シャッター音も
「ガッシャン」て言ってほしい。
ウソでもいいから言ってほしい(笑)。
ゲームキューブは、
そういうウソはないですけど、
クリック感、ほんとに感じさせますね。
 
芦: ゲーム機コントローラのボタンに
要求されるクリック感は
気持ち良さだけではだめなんですね。
耐久性も必要なんです。
実はゲームキューブの
コントローラのABボタンは
500万回の打鍵試験に
合格するように設計されているんですね。
気持ち良さと耐久性のバランスをとった
チューニング。
『触感』のデザインのむつかしいところですね。

 
────: なるほどね。
コントローラの色は派手目なんですね。
 
芦: あ、ボタンですか?
 
────: ええ、原色使ってますね。
 
芦: テレビゲーム機の
コントローラというものは
手元を見ないでも不安感なく
操作できることが理想です。
そのために、
いろいろな工夫をするわけなんですね。
色を活用することもそのうちのひとつです。
色はユーザーの意識に
強く訴える働きをしますから、
手元を見ないでもそれとなく分かるための
助けになると思うんです。
恐らく、Aボタン・Bボタンというよりも
緑ボタン・赤ボタンと言ってしまう人も
多いのではないでしょうか。
さらに、ボタンの色・カタチをわかりやすく
印象深いものにすることによって、
ゲーム画面とリンクさせた
インターフェイスをつくることができます。
こういった理由で
任天堂のコントローラは
一貫して強くてハッキリした
原色に近いボタンを使っているんです。

 
────: それがゲーム機における『デザイン』
ということなんですね。
非常にはっきりしてますね。
コントロールスティックと
Cスティックだけ素材が違うんですね?
 
芦: それはねえ、エラストマーっていう材料で、
ゴムが混ざっている特殊な樹脂なんですよ。
それで、ちょっとソフトな
『触感』なんですね。

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
────: ゴムっぽい。指にうまくひっかかりますね。
 
芦: 指先の感覚って、
刺激に非常に敏感なんですね。
ゲームプレイに最適な『触感』は、
長時間プレイしても痛くならずに、
指先がスティックからのフィードバックを
しっかり感じられるって事だと思うんですよ。
そのために、
エラストマーのゴムの配合比には
気を配ったんです。
ボタンのクリック感同様
これもチューニングに
時間をかけてるところなんですね。
ソフトにしすぎても頼りないし、
ハードにしすぎても痛いし。
それからまだあるんですが・・・。
スティックのデザインは
その形状が『触感』にとって一番大事なんです。
ロクヨンの3Dスティックでは
そのフィードバックを
ビンビンに感じるようにするため
直径を小さくしちゃったんです。
まあちょっと、痛感刺激ありすぎでしたね。
そういった経験を踏まえて
ゲームキューブはベストなチューニングが
できたと思っているんですけどね(笑)。

 
────: それも反省ですか?
 
芦: 今振り返ってみると、
猿みたいに反省してますね。
でも、それだけロクヨンは
それ以前なかったようなことを
いっぱいやったんですよ。

 
────: ゲームキューブのコントローラは、小さいですね。
女性も持つ男性も持つ子供も持つわけですが、
どの当たりを基準に考えるんですか?
 
芦: 特に基準はもうけていません。
とにかく、小さな手の子供から
大きな手の大人まで
あらゆる手のサイズの人が使える
コントローラを目指しました。
すなわち、いろいろな握り方ができる
コントローラです。
むかしのファミコンや
スーパーファミコンのコントローラは
好き勝手な持ち方ができるので
手のサイズは関係なかったですよね。
そういうフトコロの深い
コントローラをつくろうと考えてたんです。

 
────: なるほど。
 
 
 
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  ほんとに、ゲームキューブのクリック感は凄いです。
「ついつい、長くやってしまう」ときに、
最後に「ああ、くたびれた。指ががちがちだよ」
というふうに、なりにくい。
(力入れ過ぎたら、なりますけど)
楽しく遊べる、ということについて
本当に心を砕いているんだなあということがわかりました。
次回は、実用と遊びのデザインについて、
もうちょっと難しいようなことをお聞きした内容を
お届けしたいと思います。
どうぞお楽しみに!


 
2001-10-11
 
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