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「ゼルダの伝説 時のオカリナ」の情報・産地直送!
宮本茂を核にしてまとまったゼルダチームは、
あきれるようなしつこさで64のゼルダをつくった!
そのしつこさの一端を、
しつこくインタビューしてきました。
そのインタビューを少しずつ編集して
「ほぼ日の近くの大きな樹の上から」
お伝えしましょう。


(第1回の10)
今度のゼルダは
「アニメーションががんばってる」らしい。
その2


bicycleぼくと、もうひとりでデモ演出を担当してたんですけど、
2人とも映画好きなので、素地はあったと思います。
僕は大学の映像学科出身なんですが、会社に入ったころは、
まだスーパーファミコンが立ち上がったばかりで、
いわゆる映像的な仕事はなかったんですね。
今回そういった仕事ができたということで、
その意味じゃ、ちょっとはしゃいじゃったかな。

僕ら2人とも今回が初めてのゼルダだったんで、やりながら
「方法論」を模索していったところがあるんです。
どうしてもポリゴン(元々ゲームデータで使っているものと
同じモデル)ですから、CDロムゲームでレンダリングを
使っているものと比べると、映像的な情報量では
負けてしまうんですね。それをいかにカバーしていくか、
ずっと考えていました。
で、そのカバーする方法のひとつが
「カメラワークにこだわる」事でした。

ひとつは、ポリゴンゲームだからできるカメラワーク
っていう考え方です。仮に実写でやろうとすれば、
セットを組まなきゃいけなかったり、
クレーンを用意しなきゃいけないところを
CGだとかなり自由にできるんで、
じゃあ最大限に活用してやってみようというのがひとつ。

もうひとつは、逆に、むしろフィックスのレイアウトの
きれいさで見せていきたいなあ、ということがありました。
アクションシーンに関しては、カメラの動きの面白さで
見せる事を考えたり、情緒的なところでは、
シンメトリーのきれいさとか、なるだけアニメーションを
動かさないっていうことにしたい、とか。


情報量の少ないポリゴンでは、
キャラクターの表情を見せるアップの画像の
クオリティを上げることはたぶん無理だろう、
という認識がまず最初にありました。
でもそのなかに演出とかアングルとか、
シナリオを入れていく段階で、
いい意味で記号にしていくことで
伝わるものが出てきたと思うんです。
例えば、ゼルダ姫のテクスチャーを、
目線をちょっと横にしてリンクを見ている
なんていう設定にしただけでも、
かなりいけるんじゃないかって思いましたね。


ポリゴンっていうのは、動きが止まると
情報量が極端に減るんですよ。いきなり。
最初はリンクが立っている状態でカメラを
フィックスにしてやり始めたんですけど、
止まっていると情報量が少なすぎるんですね。
で、「ウエイトアニメーション」、
つまり基本のアニメーションですね、完全にリンクが
立ち止まっているときのアニメーションから作っていって、
そこからすべてのアニメーションが
派生していくようにしました。
アニメーションに関しても、ここはプログラムでやろう、
ここはアニメーションでやろう、っていう
「住み分け」があって、それぞれをどちらに当てはめるか、
みたいなことは、ようやく今年になってから方法論として
確立したところがあります。


いちばん最初の場面、
ゲームの冒頭
「リンクの見る夢」
「スペースワールドヴァージョン」では
単なるデモだったんですけど、これじゃ、
夢の感じとか恐怖みたいなもんは出てないな、
と思ったんで、がっとつめてやり直しました。
夢っぽくするというのでカットを短くして、
あいだに「ドーン」というSEを入れたり、
カットとカットのつなぎを、
黒のフェイドアウトでつないでみたりとか、
不安感が出るようにアングルを斜めにしたり、
細かいカットの積み重ねをしたりとか
そういう感じが出ていると、嬉しいんですけど。
 (シネマシーンディレクター・森 直樹さん)


bicycle去年、「スペースワールド」に出すときは大変でした。
最後にきてプレイヤーの演出用の
アニメーションパターンがなくなっちゃったりね。
モニターをとると「動きの反応が遅い」とかあったんで、
ずいぶんアニメーションを削りましたね。
アニメーションはきれいにつくっているのに惜しいなあ、
と思うことがありました。
レスポンス重視、ですからね。
しかたなかったんですけど。


例えば前は、一度剣を抜いて、
またボタンを押してから切ってたんですけど、
それじゃレスポンスが遅いということで、
ボタンを押したら、抜いてすぐ切る、という
一連の動作にしたんですね。
でも、それじゃあまりにも、
抜いていきなり切る、だったんで、
ちょっと絵としてもったいない、
ってこともあって、少しは「剣を抜く」って
いうところを見せたかったんで、抜いてから、
ほんのちょっとだけ見せて
(笑)、切る
というようにしたり。

マリオでは1秒間に30フレームなんですけど、
今回のゼルダは1秒間に20フレームです。
速くしたいなあ、と思っているうちに、
絵が豪華になってきて、ついていかなくなっちゃって、
30コマは無理かなってことになって、
最終的には絵をリアルに見せようということになって 
20コマにしました。
ぼくとしてはもう少し、速くしたかったんですけどね。
      (プログラムディレクター・岩脇敏夫さん)

 

というところで、(第1回の10)
「今度のゼルダは『アニメーションががんばってる』らしい
その2」は終り。
これから、さらに加速度つけて進んでいきますから、
新しい更新をこまめにチェックしてください。

 


1998-12-4-THU


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